育児休暇は勤続年数に含まれる?有給・退職金・賞与への影響を徹底解説
育児休業(育休)を取得するとき、多くの方が気になるのが「勤続年数の扱い」ですよね。有給休暇は減らないの?退職金は大丈夫?賞与は?こういった不安、よくわかります。
実は、育休期間が勤続年数に含まれるかどうかは、「何のための勤続年数か」によって扱いが異なるんです。この記事では、法律上の扱いから会社規定の確認方法まで、育休と勤続年数に関するすべての疑問にお答えします。
1. まず知っておきたい!育休と勤続年数の基本
1-1. 育児休業(育休)とは?基本をおさらい
育児休業(育休)とは、1歳未満の子どもを養育するために取得できる休業制度のことです。育児・介護休業法に基づいて定められており、男女を問わず、すべての労働者に取得する権利があります。
保育所に入れないなどの事情がある場合は、最長で子どもが2歳になるまで延長することも可能です。また、2022年の法改正により、男性は「産後パパ育休」として、産後8週間以内に最大4週間の育休を取得できるようになりました。
育休中は原則として給与の支払いはありませんが、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます(休業開始から180日目までは休業前賃金の67%、それ以降は50%相当額)。
1-2. 勤続年数が影響する主な項目一覧
勤続年数は、働く上でさまざまな労働条件に影響を与えます。育休を取得する前に、どんな項目が勤続年数と関係しているのか確認しておきましょう。
- 年次有給休暇の付与日数 – 勤続年数に応じて付与日数が増える
- 退職金の計算 – 多くの企業で勤続年数が計算基礎となる
- 退職所得控除 – 税金計算で重要な非課税枠に影響
- 賞与(ボーナス)の算定 – 出勤日数や勤務実績として考慮される場合がある
- 昇進・昇格の基準 – 一定の勤続年数が条件となることも
- 永年勤続表彰 – 勤続10年、20年などの節目で表彰される制度
- 社内制度の利用条件 – 住宅手当や家族手当などの要件
これだけ多くの項目に影響するからこそ、育休期間がどう扱われるかは重要なんです。
1-3. 結論:育休は勤続年数に含まれる?含まれない?
ここが一番知りたいポイントですよね。結論から言うと、「目的によって異なる」というのが答えです。
混乱させてしまったかもしれませんが、これにはちゃんと理由があります。日本の法律では、勤続年数の考え方が一律ではなく、「何のための勤続年数なのか」によって法律や規定が異なるんです。
【簡単まとめ】
- ✅ 有給休暇の付与 → 法律で「出勤扱い」が確定。必ず含まれる
- ⚖️ 退職金の計算 → 会社の規定次第。含む会社と含まない会社がある
- ✅ 退職所得控除 → 税法上は必ず含まれる
- ⚖️ 賞与・昇進 → 会社の規定次第だが、不利益取扱いは禁止
次の章では、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
2. 【項目別】育休期間の勤続年数への影響
2-1. 有給休暇の付与:法律で「出勤扱い」が確定
まず最初に押さえておきたいのが、有給休暇(年次有給休暇)に関しては、育休期間は必ず勤続年数に含まれるということです。これは労働基準法で明確に定められているため、会社の規定に関係なく適用されます。
【労働基準法の規定】
労働基準法第39条では、年次有給休暇の付与要件として「8割以上の出勤率」を求めています。そして、育児休業期間については、「出勤したものとみなす」と定められています。
つまり、1年間育休を取得した場合でも、その期間は「欠勤」ではなく「出勤」として扱われるため、有給休暇の付与日数に影響しません。
【具体例】
入社3年目の社員が1年間育休を取得した場合:
- 育休取得前:勤続3年で有給休暇14日付与
- 育休取得後:勤続4年として有給休暇16日付与(減らない!)
これは法律で守られているので、会社がこれを無視することはできません。もし育休期間を理由に有給休暇が減らされた場合は、明確な労働基準法違反となります。
2-2. 退職金の計算:会社の規定次第で変わる
退職金については、少し複雑です。なぜなら、退職金制度そのものが法律で義務付けられていないため、その計算方法も会社が自由に決められるからです。
【2つのパターンがある】
パターン1:育休期間を勤続年数に含める会社
育休を取得しても、その期間を勤続年数に算入して退職金を計算する会社です。従業員にとっては有利な扱いですね。
- 例:勤続10年で1年間育休取得 → 退職金計算上も勤続10年として計算
パターン2:育休期間を勤続年数から除外する会社
育休期間は「働いていない期間」として、退職金計算の勤続年数から除外する会社もあります。これは法律違反ではありません。
- 例:勤続10年で1年間育休取得 → 退職金計算上は勤続9年として計算
【半分だけ算入するケースも】
就業規則で「育休期間の2分の1を勤続年数に算入する」と定めている会社もあります。これも有効な規定です。
- 例:勤続10年で1年間育休取得 → 退職金計算上は勤続9.5年として計算
【重要な注意点】
ただし、育休期間を除外する場合でも、「育休期間を超えて働かなかったものとして扱う」ことは不利益取扱いとして違法になります。例えば、1年間の育休なのに2年分を勤続年数から引くようなケースです。
また、他の休職事由(病気休職など)と比較して、合理的な理由なく不公平な扱いをすることも問題となる可能性があります。
2-3. 退職所得控除:税法上は必ず含まれる
退職金を受け取るときの税金計算で重要になるのが「退職所得控除」です。こちらは、所得税法により育休期間も必ず勤続年数に含まれます。
【退職所得控除とは?】
退職金には一定の非課税枠があり、それを計算するのが退職所得控除です。計算式は以下の通り:
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
※1年未満の端数は切り上げ
【育休期間を含めることの意味】
所得税法では、「使用人としての身分が継続している限り、休職や長期欠勤であってもその期間は勤続年数に含まれる」とされています(所得税法基本通達30-7)。育休も当然これに該当します。
つまり、会社の退職金規程で育休期間を除外していても、税金計算上の退職所得控除では育休期間を含めて計算するということです。これにより、非課税枠が大きくなり、税金が安くなります。
【具体例】
勤続22年10か月で、第1子で1年3か月、第2子で1年の育休を取得した場合:
- 会社の退職金計算:勤続年数から2年3か月を除外 → 20年7か月(会社規定による)
- 退職所得控除の計算:育休期間を含めて23年 → 800万円 + 70万円 × 3年 = 1,010万円が非課税
この違いを理解しておくと、退職金を受け取るときに役立ちます。
2-4. 賞与(ボーナス):日割り計算が一般的
賞与(ボーナス)については、実際に働いた日数で日割り計算することは適法とされています。
【認められる取扱い】
- 「賞与算定期間中に育休を取得した期間は、日割りで控除する」
- 「賞与支給日に育休中の場合は支給しない」
これらは「ノーワーク・ノーペイの原則」(働かなければ賃金が発生しない)に基づくもので、不利益取扱いには該当しません。
【違法となる取扱い】
一方で、育休期間を超えて働かなかったものとして取り扱うことは不利益取扱いとして違法です。
- 例:3か月の育休なのに、6か月分賞与を減額する → 違法
- 例:育休を理由に、賞与を全額不支給とする(日割り計算なし) → 違法の可能性が高い
【会社の規定を確認しよう】
賞与の算定方法は会社によって異なります。
- 出勤率で計算する会社
- 個人の業績評価で決まる会社
- 基本給の何か月分と決まっている会社
育休取得前に、人事部に賞与の扱いを確認しておくと安心ですね。
2-5. 昇進・昇格:不利益取扱いに注意
昇進や昇格についても、基本的には会社の人事制度・就業規則の定めによります。ただし、育休を取得したことを理由に不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。
【違法となるケース】
- 育休を取得したことを理由に降格させる
- 育休期間を超える一定期間、昇進・昇格の選考対象から外す
- 育休取得者だけ昇格試験の受験を認めない
【適法となるケース】
- 勤務実績や業績評価に基づいて判断する(育休中は勤務していないため、その期間の評価がないのは当然)
- 昇格要件として「直近3年間の勤務実績」などを設けている場合、育休期間は実績がないため、結果的に評価に影響する
微妙なラインですが、重要なのは「育休を取得したこと自体」を理由にしているか、それとも「勤務実績の有無」で判断しているかという点です。
【裁判例】
過去の裁判では、「3か月以上の育休を取得した場合、翌年度の昇給を行わない」という制度が違法と判断されたケースがあります(医療法人稲門会事件・大阪高裁平成26年7月18日)。
育休取得を理由とした不利益取扱いかどうか、個別のケースで慎重に判断する必要があります。
2-6. 【比較表】項目別の勤続年数の扱いまとめ
ここまでの内容を、わかりやすく表にまとめました。
| 項目 | 育休期間の扱い | 根拠 | 会社の裁量 |
|---|---|---|---|
| 有給休暇の付与 | 必ず含まれる(出勤扱い) | 労働基準法第39条 | なし(法律で決定) |
| 退職金の計算 | 会社の規定による | 就業規則・退職金規程 | あり(含む/含まない/半分算入など) |
| 退職所得控除 | 必ず含まれる | 所得税法・通達30-7 | なし(法律で決定) |
| 賞与の算定 | 日割り計算は適法 | 就業規則・賞与規程 | あり(ただし不利益取扱いは禁止) |
| 昇進・昇格 | 会社の人事制度による | 就業規則・人事規程 | あり(ただし不利益取扱いは禁止) |
| 永年勤続表彰 | 会社の規定による | 就業規則・福利厚生規程 | あり |
このように、法律で決まっているものと会社の裁量に委ねられているものがあることを理解しておきましょう。
3. 産休・介護休業との違いは?他の休業制度との比較
3-1. 産前産後休業(産休)の場合
産休は育休とよく混同されますが、制度としては別物です。勤続年数の扱いも、基本的には育休と同じです。
【産休の基本】
- 産前休業:出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から取得可能
- 産後休業:出産の翌日から8週間(本人が希望し医師が認めれば6週間後から就業可能)
- 労働基準法で定められており、すべての女性労働者が取得できる
【勤続年数の扱い】
- 有給休暇:育休と同じく出勤扱い(労働基準法)
- 退職金:会社の規定による(育休と同じ扱いが多い)
- 退職所得控除:必ず含まれる
【育休との関係】
女性の場合、実子を育てる際は産後休業(8週間)と育休は重複しないため、産後休業終了後から育休が始まります。一方、男性や養子の場合は、産後8週間の期間も育休として取得できます。
3-2. 介護休業の場合
家族の介護のための休業制度もあります。こちらも基本的な考え方は育休と同じです。
【介護休業の基本】
- 要介護状態の家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割取得可能
- 育児・介護休業法に基づく制度
【勤続年数の扱い】
- 有給休暇:出勤扱い
- 退職金:会社の規定による
- 賞与・昇進:会社の規定によるが、不利益取扱いは禁止
多くの会社では、育休と介護休業を同じ規定で扱っています。
3-3. 病気休職・私傷病休職の場合
病気やケガによる休職の場合は、扱いが異なることがあります。
【基本的な考え方】
- 休職は「雇用関係を維持したまま、一時的に労務提供義務を免除する制度」
- 法律上の義務ではなく、会社が任意で設ける制度
【勤続年数の扱い】
会社の就業規則によって扱いが大きく異なります。
- 休職期間を勤続年数に含める会社
- 休職期間を勤続年数から除外する会社
- 休職期間の一部(例:半分)を算入する会社
【育休との違い】
育休は法律で定められた労働者の権利であり、取得したことを理由とする不利益取扱いは禁止されています。一方、病気休職は会社の任意の制度であるため、勤続年数の扱いについても会社の裁量がより大きくなります。
4. 具体例で理解!勤続年数の計算方法
ここからは、具体的な数字を使って計算方法を見ていきましょう。より理解が深まりますよ。
4-1. 【ケース1】1年間育休を取得した場合の有給休暇
【前提条件】
- 入社日:2020年4月1日
- 育休期間:2022年10月1日~2023年9月30日(1年間)
- 有給休暇の基準日:毎年4月1日
【計算】
2021年4月1日(入社1年後)
- 継続勤務1年、出勤率8割以上 → 有給休暇10日付与
2022年4月1日(入社2年後)
- 継続勤務2年、出勤率8割以上 → 有給休暇11日付与(累計21日)
2023年4月1日(入社3年後)
- この時点で育休中(2022年10月~2023年9月)
- 育休期間は「出勤扱い」となるため、継続勤務3年、出勤率8割以上
- → 有給休暇12日付与(累計33日)
2024年4月1日(入社4年後)
- 育休から復帰済み
- 継続勤務4年、出勤率8割以上 → 有給休暇14日付与(累計47日)
このように、育休期間があっても有給休暇の付与には全く影響しません。これは法律で保障されています。
4-2. 【ケース2】育休期間を含む退職金の計算例
退職金は会社の規定によって扱いが異なりますが、両方のパターンを見てみましょう。
【前提条件】
- 入社日:2005年4月1日
- 退職日:2025年3月31日(勤続20年)
- 育休取得歴:第1子で1年(2010年)、第2子で1年(2013年)、合計2年
- 退職金制度:基本給 × 勤続年数 × 支給率
- 最終基本給:30万円、支給率:1.5
【パターンA:育休期間を勤続年数に含める会社】
- 勤続年数:20年(育休期間も含む)
- 退職金:30万円 × 20年 × 1.5 = 900万円
【パターンB:育休期間を勤続年数から除外する会社】
- 勤続年数:20年 – 2年 = 18年
- 退職金:30万円 × 18年 × 1.5 = 810万円
【パターンC:育休期間の半分を算入する会社】
- 勤続年数:20年 – 1年 = 19年
- 退職金:30万円 × 19年 × 1.5 = 855万円
このように、会社の規定によって最大90万円もの差が出ることがあります。就業規則を事前に確認しておくことが大切ですね。
4-3. 【ケース3】退職所得控除の計算例
上記のケースで、退職所得控除を計算してみましょう。これは会社の規定に関係なく、税法で決まります。
【前提条件】
- 入社日:2005年4月1日
- 退職日:2025年3月31日
- 実勤続期間:20年(育休2年を含む)
【退職所得控除の計算】
勤続20年の場合:
- 退職所得控除 = 40万円 × 20年 = 800万円
※育休期間を含めて20年で計算します(所得税法)
【会社規定で育休期間を除外していた場合との比較】
もし退職所得控除でも育休期間を除外できたとしたら(実際は除外できませんが仮定として):
- 退職所得控除 = 40万円 × 18年 = 720万円
この場合、非課税枠が80万円少なくなり、その半分の40万円が課税対象となります。税率が20%だとすると、約8万円の税金増となります。
【重要なポイント】
つまり、会社の退職金規程で育休期間を除外していても、税金計算上の退職所得控除では育休期間を含めて計算できるため、結果的に税金が安くなるというメリットがあるんです。
5. 知らないと損する!不利益取扱いの禁止とは
5-1. 育休を理由とした不利益取扱いは違法
育児・介護休業法では、育休の申出や取得を理由として、労働者に不利益な取扱いをすることを禁止しています(第10条)。
【法律の条文】
「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」
これは、育休を取得しやすい職場環境を作り、仕事と子育ての両立を支援するための重要な規定です。
【対象となる制度】
不利益取扱いの禁止は、育休だけでなく以下の制度にも適用されます:
- 育児休業
- 産後パパ育休(出生時育児休業)
- 介護休業
- 子の看護休暇
- 介護休暇
- 所定外労働の制限(残業免除)
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 所定労働時間の短縮措置
5-2. 禁止されている具体的な行為
厚生労働省の指針では、以下のような行為が不利益取扱いの例として挙げられています。
【明らかに違法な行為】
- ✗ 解雇する
- ✗ 雇止めをする(有期契約労働者の契約を更新しない)
- ✗ 契約内容を不利益に変更する(正社員からパートへの変更強要など)
- ✗ 降格する
- ✗ 減給する・賞与等で不利益な算定を行う(実際の休業期間を超える控除)
- ✗ 不利益な配置変更を行う(業務上の必要性がないのに、閑職に異動させるなど)
- ✗ 就業環境を害する(嫌がらせ、ハラスメント)
【微妙なケースも違法になり得る】
- ✗ 育休取得を理由に人事考課で不利益な評価をする
- ✗ 育休期間を超える一定期間、昇進・昇格の選考対象としない
- ✗ 育休取得を理由に、不利益な自宅待機を命じる
- ✗ 育休の申出・取得を阻害する(「育休を取るなら辞めてもらう」などの発言)
【不利益取扱いに該当しないもの】
一方で、以下は不利益取扱いには該当しません:
- ✓ 育休期間中に賃金を支払わないこと(ノーワーク・ノーペイの原則)
- ✓ 賞与や退職金の算定で、実際に働いた日数を考慮し、休業期間分を日割りで控除すること
- ✓ 人事考課で、育休期間中の勤務実績がないことを事実として評価すること
5-3. 「契機として」の考え方
不利益取扱いかどうかを判断する上で重要なのが、「契機として」という考え方です。
【原則】
育休などの事由を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則として「理由として」行ったもの(つまり違法)と解されます。
【「契機として」の判断基準】
厚生労働省の通達では、原則として「育休などの事由の終了から1年以内」に不利益取扱いがなされた場合は、「契機として」いると判断されます。
ただし、1年を超えている場合でも、実施時期が事前に決まっている措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については、事由の終了後の最初の当該措置の実施までの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断されます。
【具体例】
- 育休から復帰して3か月後に降格 → 「契機として」いると判断される可能性が高い
- 育休取得の1か月後に解雇 → 明らかに「契機として」いる
- 育休復帰後の最初の人事考課で不利益な評価 → 「契機として」いると判断される
5-4. 例外的に認められるケース
「契機として」いても、例外的に違法とならない場合があります。ただし、これは非常に限定的です。
【例外1:業務上の必要性が上回る場合】
以下の条件をすべて満たす場合:
- 業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ない状況である
- 業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回る
判断要素:
- 債務超過や赤字の累積など、やむを得ない事情があるか
- 不利益取扱いを回避するための真摯かつ合理的な努力(他部門への配置転換等)がなされたか
- 対象者の選定が妥当か(客観的・合理的基準による公正な選定か)
【例外2:労働者が同意している場合】
以下の条件をすべて満たす場合:
- 労働者が同意している
- 有利な影響が不利な影響の内容・程度を上回る
- 事業主から適切に説明がなされている
- 一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在する
例:業務量の軽減とともに管理職手当が減るが、総労働時間も大幅に減り、実質的な時給は上がるケース
ただし、これらの例外はかなり厳格に判断されるため、安易に「例外に該当する」とは言えません。専門家への相談が必要です。
6. あなたの会社はどう?規定の確認方法
6-1. 就業規則・退職金規程をチェック
育休期間の勤続年数の扱いを知るには、まず会社の就業規則や各種規程を確認するのが基本です。
【確認すべき書類】
- 就業規則 – 勤続年数の基本的な考え方
- 育児・介護休業規程 – 育休に関する具体的な規定
- 退職金規程 – 退職金計算における勤続年数の扱い
- 賃金規程 – 賞与の算定方法
- 人事規程 – 昇進・昇格の基準
【就業規則の閲覧方法】
労働基準法により、会社は就業規則を労働者に周知する義務があります。以下の方法で閲覧できるはずです:
- 社内イントラネットで公開されている
- 各事業場の見やすい場所に掲示または備え付けられている
- 書面で交付されている
- 人事部・総務部で閲覧できる
もし閲覧できない場合は、会社が周知義務を果たしていない可能性があります。
【チェックポイント】
規程を見る際は、以下のような記載を探しましょう:
- 「育児休業期間は、勤続年数に算入する/算入しない」
- 「育児休業期間は、退職金の計算基礎となる勤続年数から除く」
- 「育児休業期間の2分の1を勤続年数に算入する」
- 「育児休業前と後の勤続期間は通算する」
6-2. 人事部・総務部への確認ポイント
規程を読んでもよくわからない場合や、具体的なケースについて知りたい場合は、人事部や総務部に直接聞くのが確実です。
【質問例】
以下のように具体的に聞くと、的確な回答が得られます:
- 「育休を1年取得した場合、有給休暇の付与日数に影響はありますか?」
- 「退職金の計算では、育休期間は勤続年数に含まれますか?」
- 「賞与の算定では、育休期間はどのように扱われますか?」
- 「育休から復帰後の昇進・昇格の扱いはどうなりますか?」
- 「第1子で1年、第2子でも1年育休を取った場合、合計2年分が除外されますか?」
【できれば書面で】
口頭での説明だけでなく、可能であればメールなど書面で回答をもらうと、後々のトラブル防止になります。
【育休取得前の面談】
多くの会社では、育休取得前に人事部との面談があります。そのタイミングで、勤続年数の扱いや復帰後の処遇について確認しておくと安心ですね。
6-3. 規定がない場合の扱い
会社によっては、育休期間の勤続年数の扱いについて、就業規則に明確な記載がない場合があります。
【規定がない場合の原則】
- 法律で定められている事項(有給休暇の付与など)は、法律に従う
- 法律で定められていない事項(退職金など)は、これまでの慣例や他の休職との比較で判断される
【慣例の重要性】
就業規則に明記されていない場合、これまでの取り扱いが「慣例」として認められることがあります。
例えば、過去に退職した育休取得者の退職金計算で育休期間を含めていた場合、その後も同様に扱うべきとされる可能性が高いです。
【規定の整備を求める】
規定が不明確な場合は、会社に対して規定の明確化を求めることができます。不明確なままだと、後々トラブルになる可能性があるからです。
労働組合がある会社では、労働組合を通じて交渉することも有効です。
7. こんなときどうする?トラブル対処法
7-1. 不利益な扱いを受けたと感じたら
もし育休を理由に不利益な扱いを受けたと感じた場合、以下のステップで対応しましょう。
【ステップ1:事実関係の整理】
まず、以下の点を整理します:
- いつ、誰から、どのような扱いを受けたか
- その扱いが育休取得と時期的に近いか
- 同様の状況にある他の労働者と比べて不利な扱いか
- 会社の就業規則や過去の慣例と比べてどうか
【ステップ2:証拠の保全】
以下のような証拠を集めておきます:
- 不利益な取扱いに関する書面(通知書、人事辞令など)
- 上司や人事担当者との会話の記録(日時・内容をメモ)
- メールやチャットの履歴
- 就業規則や社内規程のコピー
- 賃金明細や人事考課の資料
【ステップ3:社内での相談】
まずは社内で解決を図ります:
- 直属の上司に相談(上司が原因の場合は飛ばす)
- 人事部・総務部に相談
- 社内のハラスメント相談窓口を利用
- 労働組合に相談(ある場合)
【ステップ4:外部機関への相談】
社内で解決しない場合は、外部機関を利用します。
7-2. 相談できる窓口一覧
育休に関するトラブルについて、相談できる公的機関は複数あります。すべて無料で利用できますよ。
【1. 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)】
- 相談内容:育児・介護休業法に関すること全般
- 対応:相談、助言・指導、紛争解決の援助、調停
- 費用:無料
- 探し方:「都道府県名 労働局 雇用環境均等部」で検索
【2. 総合労働相談コーナー】
- 相談内容:労働問題全般(育休の不利益取扱いも含む)
- 設置場所:各都道府県労働局、労働基準監督署内
- 対応:情報提供、相談、他機関の紹介
- 費用:無料
【3. 労働基準監督署】
- 相談内容:労働基準法違反(有給休暇の付与など)
- 対応:相談、調査、是正勧告
- 費用:無料
【4. 法テラス(日本司法支援センター)】
- 相談内容:法的トラブル全般
- 対応:情報提供、弁護士・司法書士の紹介
- 条件:収入・資産が一定以下の場合、無料法律相談や費用立替制度を利用可能
- 電話:0570-078374(サポートダイヤル)
【5. 弁護士会の法律相談】
- 相談内容:法的トラブル全般
- 対応:有料の法律相談(30分5,000円程度が一般的)
- 初回無料:自治体によっては初回無料相談を実施
【6. 労働組合】
- 自社に労働組合がある場合は、組合に相談する
- 個人でも加入できる労働組合(ユニオン)もある
7-3. 労働局への相談方法
特に重要なのが、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。具体的な相談方法を見ていきましょう。
【相談の流れ】
- 電話または窓口で相談予約
– 予約なしでも相談可能な場合もありますが、予約がスムーズ - 相談当日
– 事実関係の説明
– 証拠資料の提示
– 担当者からのアドバイス - 必要に応じて会社への助言・指導
– 労働局から会社に対して助言・指導が行われる場合がある
– 匿名での相談も可能(ただし会社への指導は難しくなる) - 紛争解決援助・調停
– 話し合いによる解決を希望する場合
– 労働局の紛争調整委員会による調停(無料)
【相談時の持ち物】
- 就業規則、育児・介護休業規程のコピー
- 不利益取扱いに関する書面(辞令、通知書など)
- メール・チャットの記録
- 給与明細、人事考課書類
- 時系列のメモ
【匿名相談も可能】
最初は「こんなケースは問題になるのか」を確認したいだけ、という場合もありますよね。そんなときは、匿名での相談も可能です。
ただし、匿名の場合は会社に対する具体的な働きかけは難しくなります。
【行政指導の効果】
労働局から会社に対して助言・指導が行われると、多くの会社は対応を改善します。悪質な場合は企業名が公表されることもあるため、会社にとっても重大な問題です。
8. よくある質問Q&A
Q1. 育休中に退職した場合、勤続年数はどうなる?
A. 退職日までが勤続年数となります。
育休中であっても、雇用関係は継続しているため、退職日までの期間が勤続年数としてカウントされます。
例えば:
- 入社日:2015年4月1日
- 育休期間:2023年4月1日~2024年3月31日
- 退職日:2023年12月31日(育休中)
この場合、勤続年数は2015年4月1日~2023年12月31日の8年9か月となります。
退職金や退職所得控除の計算については、会社の規定や税法に従って計算されます。育休期間を含むかどうかは、前述の通り目的によって異なります。
Q2. 2回目の育休も勤続年数に含まれる?
A. はい、含まれます。回数による違いはありません。
育休は法律で認められた権利であり、何回取得しても同じ扱いです。第1子、第2子、第3子と複数回育休を取得した場合でも、それぞれの期間が勤続年数としてどう扱われるかは、前述のルールが適用されます。
- 有給休暇:すべての育休期間が出勤扱い
- 退職金:会社の規定による(すべて含む、すべて除外、半分算入など)
- 退職所得控除:すべての育休期間を含む
ただし、育休期間が長くなるほど、退職金などで会社の規定による差が大きくなる可能性はあります。
Q3. 転職時、前職の育休期間は通算される?
A. 基本的には通算されません。
勤続年数は「同一企業での継続勤務年数」を意味するため、転職すると原則としてリセットされます。前職での育休期間も含めて、前職の勤続年数は新しい会社では引き継がれません。
【例外的に通算されるケース】
- 会社分割・合併:労働契約が承継される場合
- 出向・転籍:元の会社の勤続年数を通算する取り決めがある場合
- グループ企業間の異動:グループ全体で勤続年数を通算する制度がある場合
ただし、転職先の会社が独自の制度として前職の勤続年数を考慮することはあります(例:中途採用者の初任給決定時)。これは会社の裁量によります。
Q4. 男性の育休も同じ扱い?
A. はい、男性も女性も全く同じ扱いです。
育児・介護休業法は男女を問わず適用されるため、勤続年数の扱いについても性別による違いはありません。
- 有給休暇の付与:男性の育休期間も出勤扱い
- 退職金:会社の規定が男女で異なることは違法(男女雇用機会均等法違反)
- 不利益取扱いの禁止:男性の育休取得を理由とする不利益取扱いも違法
近年、男性の育休取得率は上昇していますが、職場によってはまだ「男性が育休を取るのは珍しい」という雰囲気があるかもしれません。しかし、法律上は完全に平等です。
もし「男性だから」という理由で不利益な扱いを受けた場合は、性別による差別として特に悪質と判断される可能性があります。
Q5. 短時間勤務制度の期間は勤続年数に含まれる?
A. はい、含まれます。
育児・介護休業法に基づく短時間勤務制度(3歳未満の子を養育する労働者が、所定労働時間を短縮できる制度)を利用している期間も、勤続年数としてカウントされます。
短時間勤務は「休業」ではなく「勤務」しているため、当然と言えば当然ですね。
- 有給休暇:通常通り出勤扱い(短時間でも出勤は出勤)
- 退職金:通常通り勤続年数に含まれる(会社の規定で短時間勤務期間を減額することは可能だが、一般的ではない)
- 賞与:労働時間に応じた按分計算をすることは適法
ただし、短時間勤務を利用したことを理由とする不利益取扱いは、育休と同様に禁止されています。
9. まとめ:育休取得前にチェックすべきポイント
ここまで、育休と勤続年数について詳しく見てきました。最後に、育休取得前に必ずチェックしておきたいポイントをまとめます。
【チェックリスト】
✅ 有給休暇は確実に守られる
育休期間は法律で「出勤扱い」なので、有給休暇が減ることはありません。これは絶対です。
✅ 会社の就業規則を確認する
特に退職金、賞与、昇進・昇格に関する規定を確認しましょう。育休期間の扱いが明記されているはずです。
✅ 人事部に具体的に質問する
「1年間育休を取った場合、退職金はどう計算されますか?」など、具体的に聞きましょう。可能であれば書面で回答をもらうと安心です。
✅ 退職所得控除は味方
会社の退職金規程で育休期間を除外していても、税金計算上の退職所得控除では育休期間を含めて計算できます。結果的に税金が安くなるメリットがあります。
✅ 不利益取扱いは違法
育休を取得したことを理由に、降格、減給、不利益な配置転換などをすることは法律で禁止されています。おかしいと思ったら、すぐに相談しましょう。
✅ 男性も女性も同じ
育休に関するすべてのルールは、性別に関係なく適用されます。男性だからといって不利益を受ける理由はありません。
【育休は権利です】
最後にお伝えしたいのは、育休は法律で認められたあなたの権利だということです。
勤続年数や処遇への影響が気になる気持ち、とてもよくわかります。でも、法律は育休を取得する労働者を守るためにさまざまな規定を設けています。不利益取扱いの禁止もその一つです。
もちろん、会社の規定によって退職金の計算で育休期間が除外されるなど、一部で差が出ることはあります。でも、それも法律の範囲内で認められていることです。
大切なのは、事前に情報を知り、納得した上で育休を取得すること。そして、もし不当な扱いを受けたら、一人で悩まず、労働局などの専門機関に相談することです。
あなたとあなたのお子さんのために、安心して育休を取得してくださいね。この記事が、その一助となれば幸いです。
【参考情報】
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
- 厚生労働省「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
※本記事の情報は2025年11月時点のものです。法改正により内容が変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省のウェブサイトなどでご確認ください。

