「言うことを聞かないから、つい手が出てしまった」「お尻を軽くペンッとしただけなのに、子どもがびっくりした顔で泣いて、こっちまで泣きそう」——そんな気持ちで、いまこのページにたどり着いた方が多いんじゃないかと思います。
先に、いちばん知りたいであろう結論からお伝えします。「おしりペンペン」は、しつけが目的であっても、今の日本では「やってはいけない」とされています。2020年の法改正で、親が子どもにする体罰がはっきり禁止されたからです。
…と、ここまで読んで「やっぱりダメなのか」とズーンと落ち込んだ方。大丈夫です。この記事は、あなたを責めるために書いていません。叩きたくなる気持ちがどこから来るのか、なぜ今はやめたほうがいいのか、そして「叩く」の代わりに明日から使える具体的な一手まで、現役で2人の子を育てているパパ目線で、正直に書いていきます。すでにやってしまった人へのフォローの話も、後半でちゃんとします。最後まで読んでもらえれば、「叩かなくても、ちゃんと子育てできそうだ」と、少し前向きになれるはずです。
この記事は2026年5月時点の情報をもとにしています。法律や制度の最新情報は、厚生労働省や法務省の公式サイトをご確認ください。なお、本記事は法的助言ではなく、一般的な子育て情報としてまとめたものです。
まず結論|今、おしりペンペンは「しつけでもNG」とされています
「昔は普通に叩かれてたけどなあ」「お尻くらいいいでしょ」——その感覚、決して珍しくありません。実際、ひと昔前まではそれが当たり前の家庭も多かったですよね。でも、ここ数年で日本のルールは大きく変わりました。
2020年と2022年で、何がどう変わったのか
ポイントは2段階あります。まず2020年4月に、改正された「児童虐待防止法」と「児童福祉法」が施行され、親がしつけと称して子どもに体罰を加えることが、法律ではっきり禁止されました。これは「叩いた親を逮捕するための法律」ではなく、「体罰に頼らない子育てを、社会みんなで広げていこう」という目的のものです。ここ、すごく大事なので後で詳しく触れますね。
そしてもう一段階。2022年12月には民法が改正され、それまで「親は子どもをしつけのために懲らしめることができる」とする根拠になっていた「懲戒権(ちょうかいけん)」という規定そのものが削除されました。代わりに、「親は子どもの人格を尊重し、年齢や発達に配慮しなければならず、体罰など子どもの心身の健全な発達に有害な影響を与える言動をしてはならない」という内容が、新しく民法に書き込まれたんです。
つまり、かつては「しつけのためなら、ある程度はOK」と解釈される余地があったものが、「叩くのはしつけの手段として認めない」という方向に、法律が完全に舵を切ったということ。おしりペンペンも、当然この「体罰」に含まれます。
「懲戒権」というのは、もともと「親はしつけのために子どもを懲らしめることができる」という意味の規定でした。ところが、この規定が「しつけだから」という言い訳で虐待を正当化する口実に使われてきた、という長年の批判があったんです。だから国は、規定そのものをなくして、代わりに「子どもの人格を尊重する」という真逆のメッセージを民法に書き込んだ。これは単なる文言の修正ではなく、「子どもは親の所有物ではなく、一人の人格を持った存在だ」という、子育ての大前提そのものの転換だと言えます。
ざっくり整理すると
・2020年4月:親による体罰を法律で禁止(児童虐待防止法・児童福祉法)
・2022年12月:民法から「懲戒権」を削除し、人格の尊重と体罰禁止を明記
→ しつけ目的でも、お尻を叩く=やってはいけない、が今のルール
でも「叩いてしまう自分=ダメ親」ではありません
法律の話をすると、「じゃあ私は法律違反のひどい親なんだ」と一気に自分を追い込んでしまう方がいます。でも、ちょっと待ってください。
この一連の法改正は、繰り返しになりますが「親を罰するため」のものではありません。叩いてしまった親をしょっぴくのが目的なら、もっと罰則の話が前面に出るはずです。実際にはそうなっていなくて、国がいちばん力を入れているのは「叩かない子育てのやり方を、親に届けること」のほうなんですね。
子どもが言うことを聞かなくて、カッとなって手が出かける。これは、あなたの人間性に問題があるからではありません。睡眠不足、ワンオペ、仕事のストレス、そして「ちゃんとしつけなきゃ」という責任感——いろんなものが重なった結果、誰にでも起こりうる反応です。大事なのは「叩いた自分を責め続けること」ではなく、「叩かなくて済む方法を1つでも増やすこと」。この記事は、そのためのものだと思ってください。
「自分も叩かれて育ったけど、ちゃんとした大人になった」という人へ
この話をすると、必ず出てくるのが「自分はお尻を叩かれて育ったけど、グレずにちゃんとした大人になった。だから多少の体罰は必要では?」という声です。これ、すごくよくわかります。僕の親世代では、げんこつもお尻ペンペンも当たり前でしたから。
でも、ここで一つだけ知っておいてほしいことがあります。「叩かれても問題なく育った人」がいるのは事実。でもそれは「叩かれたおかげ」ではなく、「叩かれたのに、それ以上に愛情を注がれたから」であることが多いんです。叩く以外の関わり——抱きしめてもらった、話を聞いてもらった、見守ってもらった——その積み重ねが、子どもをまっすぐ育てた。叩いたことは、むしろ「あってもなくても結果は同じ、ならない方がよかった」要素だった可能性が高い。
研究でも「体罰には、しつけ効果よりマイナスの影響のほうが大きい」という方向で一致してきています。つまり「叩かれて育った自分が無事だった」のは、叩かれたからではなく、それ以外の部分でしっかり育ててもらえたから。だとしたら、わざわざマイナスの要素を子どもに渡す必要はないですよね。あなたが受け取った「愛情」の部分だけ、子どもに引き継げばいい。そう考えると、少し肩の力が抜けませんか。
世界的にも「叩かない」が当たり前に
子どもへの体罰を法律で全面的に禁止している国は、2026年時点で世界60か国以上にのぼります。スウェーデンが1979年に世界で初めて禁止して以降、「叩かない子育て」は国際的なスタンダードになりつつあります。日本の法改正も、この大きな流れの中にあるものなんですね。
そもそも「おしりペンペン」は体罰に入るの?グレーゾーンを整理
「いやいや、虐待とお尻ペンペンは違うでしょ。あんなのは軽いスキンシップの延長で…」と思う方も多いはず。ここが、いちばんモヤモヤするポイントですよね。線引きをはっきりさせておきましょう。
厚労省が示す「体罰」の定義
厚生労働省は、体罰を「身体に、何らかの苦痛を引き起こし、または不快感を意図的にもたらす罰」と定義しています。そして強調されているのが、「それがどんなに軽いものであっても体罰に当たる」という点。
具体例として挙げられているのは、頬をたたく、お尻をたたく、長時間にわたって正座させる、ご飯を与えない、といった行為です。「お尻を軽くペンッと一回だけ」も、子どもの身体に不快感を与える意図がある以上、ここでいう体罰に含まれる、という整理になります。「軽いから」「一回だけだから」はセーフの理由にならない、というのが現在の考え方なんですね。
体罰になる行為・ならない行為〔一覧表〕
とはいえ、子育てしていると「これは止めただけなのに体罰なの?」という場面もありますよね。線引きを表にしてみました。
| 体罰にあたるとされる例 | 体罰にあたらないとされる例 |
|---|---|
| お尻や頬を叩く(軽くてもNG) | 道路に飛び出そうとした子の手をつかんで止める |
| 手の甲を叩く・デコピンをする | 友だちを叩こうとした腕をつかんで制止する |
| 長時間の正座や、戸外に締め出す | 危ない物に近づく子を、抱きかかえて遠ざける |
| 罰としてご飯を抜く | いけないことを真剣な表情・言葉で叱る |
ポイントは、「子どもや他人を危険から守るために、とっさに体を止める・押さえる」のは体罰ではないということ。包丁に手を伸ばした子の手を払う、車道に走り出した子の腕をつかむ——これは止めて当然の行動です。罰として痛みや不快感を与えるかどうか、がカギなんですね。
見落としがち|「叩かないけど脅す・けなす」も実はNG
ここで一つ、見落とされがちな落とし穴の話を。「叩くのはやめた。代わりに言葉でビシッと言ってる」という方、要注意です。実は体罰だけでなく、子どもの心を傷つける暴言や脅しも、避けるべき言動とされています。
たとえば「そんな子はうちの子じゃない」「もう置いて行くからね」「お化けが来るよ」といった脅し文句。手は出していないけれど、子どもに強い恐怖や不安を与える点では、叩くのと同じ「恐怖でのコントロール」です。とくに人格を否定する言葉(「だからお前はダメなんだ」「何度言ったらわかるの、バカじゃないの」など)は、身体の傷以上に、子どもの自己肯定感を深く削ってしまうことがあります。
「叩く」を卒業したら、次は「脅す・けなす」も少しずつ手放していけるといいですね。難しく考えなくて大丈夫。「行動は叱っても、人格は否定しない」——この一点を意識するだけで、ずいぶん変わります。
「軽く叩くだけ」でもダメなの?という疑問
正直に言うと、ここがいちばん納得しにくいところだと思います。「殴るわけじゃない、お尻を一回ペンッとするだけ。それでメリハリがつくこともあるじゃないか」と。
その気持ちはわかります。ただ、後の章で詳しく書きますが、研究的にも「軽い体罰でも、繰り返されると子どもにマイナスの影響が出やすい」ことがわかってきています。そして何より、「軽いつもり」の線引きは、親の機嫌や疲れ具合でどんどん動いてしまう。今日は軽くペンッだったのが、余裕のない日には強くなる。この「エスカレートのしやすさ」こそが、軽い体罰でもおすすめできない大きな理由です。
【本音】正直、ペンペンしたくなる瞬間ってあるよね
ここまで「ダメです」という話が続いたので、いったん本音の話をさせてください。きれいごとだけ並べても、追い詰められている人の役には立たないと思うので。
我が家で手が出かけた3つの場面
正直に告白すると、僕自身、上の子が2〜3歳のころに「手が出かけた」場面は何度もあります。具体的にはこんな感じでした。
①何度言ってもやめないとき。テレビに近づきすぎないでと10回言って、11回目にまた近づく。「いい加減にしろよ…」とこめかみがピクッとなる、あの瞬間。
②急いでいるのにグズられたとき。保育園に遅れそうな朝、靴を履かない、抱っこと言って暴れる。時間に追われている自分の余裕のなさが、そのまま手に乗りそうになる。
③人前で言うことを聞かないとき。スーパーやレストランで床に寝そべって大泣き。周りの視線が痛くて、「恥ずかしいからやめて!」という気持ちが、つい体に出そうになる。
どれも、覚えがあるんじゃないでしょうか。これって全部、「子どもが悪い」というより「親に余裕がない」状態なんですよね。子どもはいつも通りなのに、こっちのコップが満杯で、あふれた一滴が手になって出る。そういう構造です。
大事なのは、この構造に気づくこと。「子どもがこうしたから叩いた」と思っているうちは、子どもを変えようとして堂々巡りになります。でも「自分のコップが満杯だったから、いつもなら流せたことに耐えられなかった」と気づけると、対策が「子どもを変える」から「自分の余裕を増やす」に変わる。これだけで、ずいぶん楽になります。叩いてしまう人を責めるのではなく、その人のコップを軽くしてあげること——国が「親への支援」に力を入れているのも、まさにこの考え方からなんですね。
「叩く」の引き金になりやすい親側のコンディション
自分を振り返ってみると、手が出やすいのは決まって「自分のコンディションが悪い日」でした。引き金になりやすい状態を挙げてみます。当てはまるものがあれば、それは“あなたが悪い”のではなく“余裕がない”サインです。
□ 睡眠不足が続いている
□ 自分だけが育児を抱えている(ワンオペ)
□ 仕事や家事に追われて、自分の時間がゼロ
□ 「ちゃんとしつけなきゃ」と一人で気負っている
□ パートナーに頼れない・相談できていない
□ 空腹・生理前など、身体的にしんどい
3つ以上当てはまったら、対策の第一歩は「叱り方を変える」よりも前に、「親の余裕を取り戻す」こと。これは後半のクールダウンの章でしっかり扱います。イヤイヤ期そのものへの向き合い方は、イヤイヤ期の乗り越え方の記事でも詳しくまとめているので、あわせて読んでみてください。
なぜやめたほうがいいのか|その場の効果と、見えない副作用
「禁止だから」だけだと、心の底では納得できないですよね。なぜ叩くのがおすすめできないのか、効果と副作用の両面から見ていきましょう。
「止まる」のに「伝わらない」理由
叩くと、その場では子どもの問題行動はピタッと止まります。これは事実。だからこそ「効いた」と感じて、つい繰り返してしまう。ここが落とし穴なんです。
でも、よく考えてみてください。子どもが止まったのは「なぜダメなのかを理解したから」でしょうか。多くの場合、違います。「叩かれて怖かったから止まった」だけなんですね。つまり伝わっているのは「これをやると痛い目にあう」という恐怖であって、「なぜこれをしてはいけないのか」という理由ではありません。
だから、親が見ていないところでは同じことを繰り返したり、「叩かれない相手(祖父母など)の前ではやりたい放題」になったりする。その場の即効性はあるけれど、根っこの学習にはつながりにくい。これが、叩くしつけの最大の弱点です。
具体的にイメージしてみましょう。スーパーでお菓子をねだって泣く子を、お尻をペンッと叩いて黙らせたとします。その場は静かになる。でも子どもが学ぶのは「お菓子をねだってはいけない理由」ではなく、「ここでゴネると叩かれる」という恐怖だけ。だから次にママと二人のとき、あるいはおじいちゃんと一緒のときには、また同じようにねだります。一方、「今日は買わないよ。でも欲しかった気持ちはわかるよ」と毎回ぶれずに伝え続けた子は、時間はかかっても「ここでは買ってもらえないんだ」というルールそのものを覚えていきます。遠回りに見えて、こっちのほうが確実なんですね。
体罰がもたらしやすい影響〔一覧表〕
国内外の研究では、体罰(軽いものを含む)が積み重なると、子どもの発達にさまざまなマイナスの影響が出やすいことが報告されています。代表的なものを整理しました。
| 起こりやすいとされる影響 | 背景にあるメカニズム |
|---|---|
| 攻撃的な行動が増える | 「困ったら叩いて解決」を親から学んでしまう |
| 親の顔色をうかがうようになる | 「怒られないこと」が行動の基準になる |
| 自己肯定感が下がりやすい | 「自分はダメな子」という感覚が刷り込まれる |
| 親子の信頼関係が揺らぐ | 安心の拠り所であるはずの親が、怖い存在になる |
もちろん「一度ペンッとしただけで人生が決まる」なんて極端な話ではありません。大事なのは「日常的に・くり返し」になると影響が出やすいということ。だからこそ、習慣になる前に手放しておきたいんです。
「恐怖でコントロール」が積み重なると起きること
もう一つ、現実的な話を。叩くしつけは「効く」ぶん、だんだん効きが悪くなります。同じ強さでは止まらなくなり、つい強くなる。先ほどの「エスカレート」です。そして子どもが大きくなって体格が追いついてくると、力で押さえる方法はそもそも通用しなくなる。
つまり恐怖でのコントロールは「賞味期限つき」なんですね。長い目で見ると、「言葉で気持ちを伝え合える関係」をコツコツ育てておいたほうが、思春期以降ずっとラクになります。今の数年の手間が、10年後の安心に変わる、というイメージです。
もう一つ、知っておいてほしい現実があります。それが「体罰の連鎖」です。叩かれて育った子は、大人になって自分が親になったとき、わが子に手を上げてしまいやすい——という傾向が、さまざまな調査で指摘されています。「自分がされたこと」が、その人の中の「普通のしつけ」として刷り込まれてしまうからです。
これは裏を返せば、あなたが今ここで連鎖を止めれば、お子さんが親になったとき、その子もまた叩かない親になれるということ。「叩かない子育て」は、目の前の子どものためだけでなく、まだ見ぬ孫の世代まで守る選択でもあるんです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、あなたが今日踏みとどまることには、それくらいの意味があります。
叩かずに伝える|年齢別・場面別「代わりの一手」
ここからが本題です。「叩かないで、じゃあどうするの?」への具体的な答え。年齢と場面に分けて、明日から使えるものだけを集めました。
前提:「叱る」と「怒る」は、まったくの別もの
具体策に入る前に、土台になる話を一つだけ。多くの人が混同していますが、「叱る」と「怒る」は別ものです。ここがわかると、ずいぶんラクになります。
「怒る」は、自分の感情をぶつけること。「なんで言うこと聞かないの!」とイライラを発散している状態です。主語は「自分」。一方「叱る」は、子どものために「これは危ないよ」「こうしようね」と冷静に伝えること。主語は「子ども」です。叩くしつけは、たいてい「叱る」のつもりで「怒る」になってしまっている状態なんですね。
目指したいのは、感情をぶつける「怒る」を減らして、落ち着いて伝える「叱る」に寄せていくこと。とはいえ、人間ですから100%は無理。「あ、今のは怒っちゃったな」と気づけるだけでも大きな一歩です。完璧を目指さず、「叱る」の割合をちょっとずつ増やす——そんなイメージでいきましょう。
0〜1歳:叱るより「環境を変える」
そもそも0〜1歳の子に「ダメでしょ」と叱っても、まだ言葉の意味も善悪も理解できません。この時期に叩くのは、効果がないどころか、ただ怖がらせるだけになってしまいます。
この年齢の鉄則は「叱る前に、危ないもの・触ってほしくないものを物理的に遠ざける」こと。コンセントにはカバー、危険物は手の届かない場所へ、触られたくないものはそもそも見えない所へ。「叱らなくて済む環境」を先に作ってしまうのが、いちばんラクで確実です。叱る回数が減れば、親のイライラも自然と減ります。
たとえば、リモコンを口に入れてしまう、ティッシュを延々と引き出す、観葉植物の土をいじる——これらは「ダメ」と何度言っても通じません。なぜなら、子どもにとっては「ダメな行為」ではなく「楽しい探索」だから。叱るより、リモコンを別の場所に置き、ティッシュは届かない高さへ、植物は手の届かない棚へ。この時期の「しつけ」は、叱ることではなく、安全な環境を整えることだと割り切ってしまうと、心がずっと軽くなりますよ。
2〜3歳(イヤイヤ期):気持ちを言葉にして返す
いちばん手が出やすいのが、このイヤイヤ期。でも、ここで効くのは「叩く」でも「怒鳴る」でもなく、「子どもの気持ちを、いったん言葉にして受け止める」ことです。
たとえば、お菓子を買ってほしくて床で大泣きしている場面。やりがちなのは「ダメって言ったでしょ!」と頭ごなしに否定すること。でも、まずやってほしいのは——
気持ちの代弁 → 理由 → 代わりの提案、の順で。
「お菓子、ほしかったね(代弁)。でも今日はもう買わないって約束したよね(理由)。おうちに帰ったら、いっしょにバナナ食べようか(提案)」
子どもは「わかってもらえた」と感じると、不思議とトーンダウンしやすい。完全には止まらなくても、叩くより何倍も効きます。コツは「やりたい気持ち自体は否定しない」こと。否定するのは「行動」だけ、気持ちは受け止める。これだけで関わり方がガラッと変わります。
危ないことをしたとき:短く・一度だけ・真剣に
とはいえ、命に関わる危ないこと(道路への飛び出し、火、高い所など)は、悠長に気持ちを聞いている場合ではありません。こういうときは、「短く・一度だけ・真剣な顔で」伝えます。
「ダメ!危ない!」と、いつもより低い声で、目を見て、一回だけ。長々と説教したり、何度も繰り返したりすると、かえって響きません。叱る回数を「ここぞ」に絞るからこそ、子どもも「あ、これは本気だ」と伝わるんですね。普段から些細なことで怒鳴っていると、いざという時の「本気の叱り」が埋もれてしまう。これは意外と見落とされがちなポイントです。
そして、危険を止めたあとが大事。落ち着いたら、子どもの目線までしゃがんで「さっきは道路に出ようとしたね。車が来たら、すごく危ないんだよ。○○がケガしたら、お父さん悲しいから」と、理由とこちらの気持ちをセットで伝えます。「叱る」だけで終わらず「なぜダメか」まで届けることで、次につながる。叩いて止めるのと、止めてから理由を伝えるのとでは、子どもに残るものがまるで違います。前者は恐怖だけ、後者は「危ないんだ」という理解と「大事にされている」という安心、その両方が残るんです。
4歳以降:理由を説明し、ルールを「一緒に」決める
4歳を過ぎてくると、だんだん「理屈」が通じるようになってきます。この時期は、頭ごなしの命令より「なぜそうするのか」を説明し、ルールを子どもと一緒に決めるのが効果的です。
たとえば「ゲームは1日30分」というルール。「ダメ、もうおしまい!」と一方的に取り上げると反発しますよね。でも、「目が疲れちゃうから、時間を決めようか。何分にする?」と本人に決めさせると、「自分で決めたルール」として守りやすくなります。多少こちらの希望とズレても、最終的に折り合える範囲なら任せてみる。「守れたらすごいね」と達成を一緒に喜ぶと、さらに定着します。
この年齢で叩くと、子どもは「言葉で説明されても、最後は力で押さえつけられる」と学んでしまい、友だち関係でも力で解決しようとしがちになります。逆に「話し合いで決める」経験を積ませると、それがそのまま社会性につながっていくんですね。
きょうだいゲンカ:ジャッジ役にならない
きょうだいゲンカは、親がいちばん消耗する場面の一つ。「どっちが先に手を出した!」と犯人探しをしているうちに、親の堪忍袋が切れて手が出る…というのは、本当によくあるパターンです。
コツは、親が「裁判官」にならないこと。どちらが悪いかを決めようとすると、必ずもう一方が不満を抱えます。代わりに、まず「叩く・物を投げる」など危険な行為だけを止め、「二人とも、何がイヤだったの?」と両方の気持ちを順番に聞く。そのうえで「じゃあ、どうしたら二人とも気持ちよく遊べるかな?」と、解決を本人たちに考えさせます。親がジャッジしないことで、きょうだい同士の「折り合いをつける力」が育ちます。すぐにはうまくいきませんが、根気よく続ける価値があります。
場面別の言い換え〔一覧表〕
「つい言ってしまう一言」を、「叩かずに伝わる一言」に置き換える早見表です。冷蔵庫に貼っておくくらいの気持ちで、ぜひ。
| 場面 | つい出る対応 | 叩かずに伝わる一手 |
|---|---|---|
| 片付けない | 「早く片付けなさい!」 | 「どっちのおもちゃから箱に入れる?」と選ばせる |
| 食べ物で遊ぶ | お尻をペンッ | 「ごはんは食べる物だよ。遊ぶならごちそうさまにしようね」と一度伝え、続くなら下げる |
| きょうだいを叩く | 「叩いちゃダメ!」と叩いて止める | 叩く手をつかんで止め、「叩かれると痛いよ。イヤって言葉で言おう」 |
| 出かける前にグズる | 「もう知らない!置いていくよ」 | 「あと10数えたら靴履こうね。1、2、3…」と予告して見通しを作る |
共通しているのは「命令」より「選択肢」「予告」「気持ちの代弁」。子どもは「自分で決めた」と感じると、ぐっと動きやすくなります。全部を完璧にやろうとしなくて大丈夫。1つでも試してみて、効いたものを増やしていく感覚で十分です。
つい手が出る前に|親が自分を守るクールダウン術
正直なところ、どんなに「言い換え」を覚えても、親に余裕がなければ実践できません。カッとなった瞬間に冷静なフレーズなんて出てこない。だからこそ大事なのが、「手が出る前に、自分を一回止める仕組み」です。
「その場を5秒離れる」が一番効く
怒りの感情は、ピークが過ぎるまで数秒〜十数秒と言われます。逆に言えば、その数秒さえやり過ごせば、手は出にくくなる。具体的には——
・子どもの安全だけ確保して、トイレや別室に5秒だけ離れる
・深呼吸を1回、ゆっくり吐く
・「今、自分は疲れてるな」と心の中で言葉にする
・冷たい水を一口飲む
「離れるなんて無責任じゃ?」と思うかもしれませんが、逆です。叩いてしまう前にその場を離れるのは、いちばん責任ある行動。子どもが安全な状態であることだけ確認したら、一度クールダウンしてOK。戻ったときには、たいてい少し冷静になれています。
カッとなったとき、頭の中でやる3ステップ
「離れる余裕もないくらい、瞬間的にカッとなる」という方には、頭の中でできる簡単なステップがあります。怒りの専門家が使う方法を、育児向けに噛み砕いたものです。
① 数える:心の中で「1、2、3…6」とゆっくり数える。これだけで怒りのピークがやり過ごせます。
② 言葉にする:「あ、今イライラしてる」と自分の状態に気づく。気づいた瞬間、不思議と少し冷静になります。
③ 視点を変える:「この子、わざとやってるんじゃなくて、まだできないだけだよな」と一度だけ思い直す。
全部やる必要はありません。①の「数える」だけでも、かなり違います。最初はうまくいかなくて当たり前。「今日は2回しか数えられなかったけど、昨日より1回多い」——その程度で十分、前進です。
叩いていた我が家が、変われた一例
参考までに、我が家の小さな変化を一つ。上の子のイヤイヤ期、夕方の「お風呂イヤ!」が毎日の戦いでした。以前は「いいから入るの!」と無理やり連れて行き、暴れる→こちらもブチ切れる→お尻ペンッ、という最悪のループ。お互いヘトヘトでした。
| ビフォー(叩いていた頃) | アフター(変えてみたこと) |
|---|---|
| 「いいから入るの!」と命令 | 「お風呂の前に、5分だけ電車で遊ぼう」と予告 |
| 無理やり連れて行く | 「歩いて行く?抱っこで行く?」と選ばせる |
| 入れたら終わり | 「自分で入れてえらかったね」と毎回ほめる |
劇的にスムーズになったわけではありません。それでも、「予告」と「選ばせる」を足しただけで、戦いの頻度は確実に減りました。何より、こちらが手を出さなくなったぶん、自分のことも嫌いにならずに済んだのが大きかった。完璧じゃなくていい。1つ変えるだけで、空気は変わります。
限界を防ぐ“仕組み”のつくり方
そして根本的には、「親一人で抱え込まない仕組み」が必要です。手が出るのは、たいてい余裕が尽きたとき。だったら、余裕が尽きないように先に手を打つ。
たとえば、パートナーと「週に一度は、お互い一人の時間を作る」と決める。実家や一時保育、ファミリーサポートを「使っていいもの」として最初から計画に入れておく。完璧な親を目指すより、「頼れる先を増やしておく」ほうが、結果的に子どもにやさしい親でいられます。
特にワンオペになりがちな家庭は、夫婦の役割分担を一度ちゃんと話し合っておくのがおすすめです。具体的な分担のコツは夫婦で育児を乗り切るコツでまとめているので、パートナーと一緒に読んでみてください。
「頼れる先なんてない」と感じている方も、実は使える手はけっこうあります。代表的なものを挙げておきます。
| 頼れる先 | どんなとき使える? |
|---|---|
| 一時保育・一時預かり | 数時間〜1日、子どもを預けて一人の時間を作りたいとき |
| ファミリー・サポート・センター | 送迎や短時間の預かりを、地域の会員に頼みたいとき |
| 子育て世代包括支援センター | 育児の悩みを、専門の相談員に話したいとき |
| 地域の子育て支援拠点(児童館など) | 親子で行ける場所が欲しい・他の親と話したいとき |
「こんなことで頼っていいのかな」とためらう必要はありません。これらは「困っている親が使うためにある仕組み」です。むしろ、限界が来る前に使っておくのが正解。「親が元気でいること」が、子どもにとって何よりの環境ですから。
もう叩いてしまった…そんなときにしてほしいこと
ここまで読んで、「いや、もう何回もやっちゃってる…」と苦しくなっている方。ここがいちばん伝えたいパートです。やってしまった「後」にできることは、ちゃんとあります。
子どもへのフォロー(謝っていい)
叩いてしまったあとは、落ち着いてからでいいので、子どもにきちんと向き合って、謝って大丈夫です。「親が子どもに謝るなんて、なめられる」と心配する人もいますが、逆。「叩いてごめんね。お父さん(お母さん)、イライラしちゃった。叩くのはいけなかったね」と伝えることは、子どもにとって何よりの安心になります。
同時に、「叩く=悪い解決方法だ」というお手本を見せることにもなります。間違えたら謝る、その姿を見せられるのは、親の特権です。叩いてしまった事実は消えませんが、その後の関わりで、ちゃんと取り返せます。
フォローの声かけ例
「さっきはお尻を叩いてごめんね。痛かったよね。お父さん、イライラして、やってはいけないことをしちゃった。〇〇のことは大好きだよ。次からは、言葉で言うようにするね」
ポイントは、「叩いた事実」を認め、「叩くのはいけなかった」と言い切ること。「あなたが言うこと聞かないから」と条件をつけると、子どもは「自分が悪いから叩かれた」と学んでしまいます。理由はどうあれ、叩いたこと自体を謝る。そして最後に「大好き」をセットで伝える。これだけで、子どもの中の「怖かった」は、ずいぶん和らぎます。
自分を責めすぎないための考え方
「最低な親だ」「子どもの心に傷を残してしまった」——そんなふうに自分を責め続けてしまう方へ。その罪悪感は、あなたが子どもを大切に思っている証拠です。本当にどうでもいい親なら、検索すらしません。
大事なのは、「今日叩いた」ことより「明日どうするか」。完璧にゼロにしなくていいんです。「昨日より一回減らせた」で十分前進です。自分を責めるエネルギーがあるなら、その分を「次の一手」を覚えることに回しましょう。そのほうが、ずっと子どものためになります。
それでも罪悪感がぐるぐる回って苦しいときは、「子どもは、思っているより親を許してくれる存在だ」ということを思い出してください。子どもにとって、あなたは世界で一番大好きな人。多少の失敗で嫌いになったりしません。あなたが「ごめんね」と向き合えば、子どもはちゃんと笑顔を返してくれます。完璧な親より、間違えたら謝れる親のほうが、子どもにとってはずっと安心できる存在なんです。だから、どうか自分にも「ごめんね」と「大丈夫」を言ってあげてください。
繰り返してしまうなら、相談していい
「頭ではわかっているのに、どうしても手が出てしまう」「自分でも止められない気がして怖い」——もしそう感じているなら、それは「相談していいサイン」です。これは弱さではありません。むしろ、子どもを守るための強さです。
困ったときの相談先(無料・匿名OK)
・児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(いちはやく・おなやみを)
・児童相談所虐待対応ダイヤル:189(いちはやく)
・お住まいの自治体の「子育て世代包括支援センター」「家庭児童相談室」
「189」と聞くと「通報の番号でしょ?」と身構えるかもしれませんが、追い詰められた親自身が「助けて」と相談していい窓口でもあります。叩く前に電話していいんです。地域の子育て支援や相談制度については、相談・虐待防止・家庭支援の制度まとめでも紹介しているので、頼れる先を知っておくと心の保険になります。
よくある質問(Q&A)
Q. おしりペンペンをしたら、逮捕されるんですか?
A. 体罰を禁止する法律に「叩いた親を罰する」という罰則は設けられていません。この法律の目的は処罰ではなく、体罰によらない子育てを社会全体で広げることです。ただし、ケガをさせるなど程度が重い場合は、傷害罪などの別の法律が問題になることはあります。「軽く一回」で即逮捕、ということはありませんが、「だからOK」ではない、という点はおさえておきましょう。
Q. 祖父母が「お尻くらい叩いていい」と言って聞きません。どうすれば?
A. 世代によって「当たり前」が違うので、真っ向から否定すると角が立ちますよね。「最近は法律でも体罰がダメになって、保育園でもそう言われてるんだ」と“外のルール”を理由にすると、角が立ちにくいです。「孫がかわいいからこそ、最新のやり方でいきたい」という伝え方も有効。それでも難しければ、預ける時間を調整するなど、距離の取り方で対応するのも一つの手です。
Q. 言葉で叱るのと体罰の境界はどこですか?
A. 「身体に苦痛や不快感を与えるか」が一つの線引きです。真剣な表情と言葉で「危ないよ」と伝えるのは叱り(しつけ)の範囲。一方で、人格を否定する暴言(「だからお前はダメなんだ」など)は、身体は傷つけなくても心に有害な影響を与えるため、避けたい言動とされています。「行動を叱る」のはOK、「人格を否定する」のはNG、と覚えておくと整理しやすいです。
Q. 何歳から「言い聞かせ」が通じるんですか?
A. 個人差は大きいですが、簡単な言葉の意味がわかり始める2歳ごろから、少しずつ「気持ちの代弁+理由」が効き始めます。とはいえ、感情のコントロール機能(脳の前頭前野)は5〜6歳でもまだ発達途中。「言ってすぐ完璧にできる」ことを期待しすぎないのがコツです。「100回言って、やっと10回できれば上出来」くらいの気持ちでいると、親もラクになります。
Q. 叩かれたことを、子どもはずっと覚えていますか?
A. 一度や二度のことを細かく覚えているとは限りませんが、子どもが覚えているのは「出来事」より「そのときの感情」だと言われます。怖かった、悲しかったという感覚が、漠然と残ることはあります。だからこそ、叩いてしまったあとの「ごめんね」や、日々の「大好きだよ」という関わりが大切。マイナスを、それを上回るプラスで塗り替えていくイメージで大丈夫です。過去より、これから積み重ねる時間のほうがずっと長いですから。
Q. パートナーが子どもを叩きます。どう言えばやめてもらえますか?
A. 子どもの前で頭ごなしに止めると、相手のメンツがつぶれて逆効果になりがちです。まずは二人だけのときに、「責める」のではなく「一緒に考えたい」スタンスで話すのがおすすめ。「叩きたくなるくらい、あなたも余裕がないんだよね」と相手の状況に寄り添いつつ、「最近は法律でも体罰がNGになったらしいよ」と外の情報を一緒に共有する。そのうえで「叩く以外の方法を二人で試してみない?」と提案すると、対立せずに動けます。それでも改善せず、子どもへの影響が心配なときは、自治体の相談窓口に二人で相談してみてください。
まとめ|「叩かない」は、甘やかしでも厳しさを捨てることでもない
最後に、いちばん伝えたいことを。「叩かない子育て」と聞くと、「子どもを甘やかすこと」「叱らないこと」だと誤解されがちですが、まったく違います。
叩かないことと、ダメなことをきちんと伝えることは、両立します。むしろ、恐怖ではなく言葉で伝えるからこそ、子どもの心に「なぜダメか」が残る。それは、叩くよりずっと手間がかかるけれど、ずっと長く効く方法です。「叩かない=何でも許す」ではありません。ダメなものはダメと、これまで以上にはっきり伝えていい。ただその手段が「痛み」ではなく「言葉」と「態度」になる、というだけのことなんです。
今日のポイントをおさらいします。
・おしりペンペンは、2020年・2022年の法改正で「しつけでもNG」が今のルール
・でも叩きたくなる気持ちは自然なこと。責めるべきは行動であって、あなた自身ではない
・代わりの一手は「気持ちの代弁」「選択肢」「予告」、そして危険時は「短く一度だけ真剣に」
・手が出る前に5秒離れる。一人で抱え込まず、頼れる先を増やす
・もうやってしまっても大丈夫。謝っていいし、相談していい
完璧な親なんて、どこにもいません。今日この記事を読んでいる時点で、あなたは十分、子どものことを考えている良い親です。明日、いつもより一回でも手が出る前に踏みとどまれたら、それで大成功。少しずつで大丈夫なので、一緒にやっていきましょう。
※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法律・制度の最新情報は厚生労働省・法務省の公式サイトをご確認ください。本記事は一般的な子育て情報であり、法的助言ではありません。お子さんの心身に気がかりがある場合は、かかりつけの小児科や自治体の相談窓口にご相談ください。



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