こんにちは。人事・労務担当の方で「育児休業取得率の計算方法がよく分からない…」「公表義務に対応しなければいけないけど、正確な数値が出せるか不安」という悩みを抱えていませんか?
2025年4月の育児・介護休業法改正で、男性の育児休業取得率の公表義務が「従業員1,000人超」から「300人超」の企業に拡大されました。これまで対象外だった企業も、新たに正確な計算と公表が求められています。でも、実際に計算しようとすると「事業年度をまたぐ場合はどうする?」「分割取得はどうカウントする?」など、疑問だらけですよね。
この記事では、育児休業取得率の計算方法を初心者の方でも理解できるよう、基礎から実務レベルまで徹底解説します。厚生労働省の公式ガイドラインに基づき、2025年改正の最新情報、よくある計算ミスや注意点、Excel活用術まで網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかること
- 男女別の育児休業取得率の計算式(女性の計算も詳しく解説)
- 2025年4月改正で拡大した「300人超企業」の公表義務
- 取得率が100%を超える仕組みと、分母・分子の正しい数え方
- Excelでの集計手順と、具体的な数値を使った計算例
1. 育児休業取得率とは?なぜ計算が必要なのか
1-1. 育児休業取得率の定義
育児休業取得率とは、出産や配偶者の出産があった労働者のうち、実際に育児休業を取得した人の割合を示す指標です。企業の働きやすさや、仕事と育児の両立支援への取り組み姿勢を測る重要な数値として注目されています。
簡単に言えば、「育休を取れる人が10人いたら、そのうち何人が実際に取得したか」を割合で表したものです。この数値が高いほど、従業員が安心して育児休業を取得できる環境が整っていると評価されます。
1-2. 公表義務化の背景と2025年の対象拡大
日本の男性育児休業取得率は、令和6年度(2024年度)で40.5%と初めて4割を超え、過去最高を更新しました(産後パパ育休を含む)。前年の30.1%から10.4ポイントの大幅上昇です。年々改善しているものの、女性の86.6%と比べるとまだ半分程度で、政府が掲げる「2025年までに50%」の目標達成にはさらなる後押しが必要とされています。
こうした状況を受け、政府は「男性の育児参加促進」と「女性のキャリア継続支援」を目的に育児・介護休業法を段階的に改正してきました。
- 2023年4月:常時雇用する労働者が1,000人を超える企業に、男性の育児休業取得率等の公表を義務化
- 2025年4月:公表義務の対象を300人を超える企業まで拡大(下記2章で詳述)
公表しない場合や虚偽公表の場合、労働局からの指導・勧告、企業名の公表につながる可能性もあるため、正確な計算が求められています。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」/令和6年度雇用均等基本調査(2025年7月30日公表)
1-3. 計算を間違えるとどうなる?
育児休業取得率の計算を間違えると、以下のようなリスクがあります。
- 法令違反のリスク:公表義務を果たしていない、または誤った情報を公表したとみなされる可能性
- 企業イメージの低下:後から誤りが判明した場合、「数値を偽装していた」と疑われかねない
- 助成金・認定への影響:くるみん認定や両立支援等助成金の申請に影響が出る
- 従業員の信頼喪失:取得率が実態と異なれば、社内からの信頼も損なわれる
だからこそ、正確な計算方法を理解することが大切なんです。
2. 【2025年4月改正】公表義務が「300人超企業」に拡大
重要ポイント
2025年4月1日の育児・介護休業法改正により、男性の育児休業取得率等の公表義務が「常時雇用する労働者1,000人超」から「300人超」の企業に拡大されました。これまで対象外だった300人超1,000人以下の企業も、新たに公表義務の対象です。
2-1. 何が変わった?
これまで男性の育児休業取得率の公表が義務だったのは、従業員1,000人を超える大企業だけでした。2025年4月からは、その対象が大きく広がり、常時雇用する労働者が300人を超える企業も年1回の公表が必要になります。
公表する内容や計算方法そのものは従来と同じで、下記の2つのうちいずれかの割合を公表します(詳細は4章で解説)。
- ①育児休業等の取得割合
- ②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
2-2. 「300人超」の判定方法
自社が対象かどうかは、「常時雇用する労働者」の数が300人を超えるかで判定します。ここでの「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、具体的には次のような人が含まれます。
- 期間の定めなく雇用されている者(正社員など)
- 過去1年以上引き続き雇用されている者
- 雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
つまり、正社員だけでなく、1年以上継続して働いている(見込まれる)契約社員・パートなども含めてカウントする点に注意しましょう。
2-3. 2025年改正のその他のポイント
2025年の育児・介護休業法改正は、公表義務の拡大以外にも複数の項目が段階的に施行されています。人事担当者は全体像も押さえておきましょう。
| 施行時期 | 主な改正内容 |
|---|---|
| 2025年4月1日 | 育児休業取得状況の公表義務を300人超企業に拡大/子の看護休暇の見直し/残業免除の対象拡大 など |
| 2025年10月1日 | 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化/個別の意向聴取・配慮の義務化 など |
本記事では公表義務に直結する「取得率の計算方法」を中心に解説しますが、その他の改正項目についても厚生労働省の資料で確認しておくことをおすすめします。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法について」(最新の施行内容は必ず公式資料でご確認ください)
3. 【基本編】育児休業取得率の計算式(男女別)
3-1. 男性の育児休業取得率の計算方法
男性の育児休業取得率は、以下の式で計算します。
【男性の育児休業取得率】
育児休業取得率(%)= 育児休業等をした男性労働者の数 ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数 × 100
ポイントは、分母が「配偶者が出産した男性労働者」という点です。つまり、男性本人が出産するわけではないので、「配偶者(妻やパートナー)が出産した」という事実をもとに計算します。
3-2. 女性の育児休業取得率の計算方法
女性の場合は、以下の式になります。
【女性の育児休業取得率】
育児休業取得率(%)= 育児休業等をした女性労働者の数 ÷ 出産した女性労働者の数 × 100
女性の場合は、本人が出産したことが分母の基準となります。産休(産前産後休業)を取得した女性のうち、その後育児休業に移行した人の割合を示すイメージです。
女性の計算で押さえるべきポイント:
- 分母は「出産した女性労働者」(在職中に出産した女性)。退職者や、出産していない女性は分母に入りません。
- 分子は「育児休業等をした女性労働者」。産休のみで育休を取っていない場合は分子に含みません。
- 男性と同様、育児・介護休業法上そもそも育休の対象とならない者(法令上の除外者)は分母・分子から除外します。
女性の計算例:ある事業年度に在職中に出産した女性が20人、そのうち育児休業を取得した女性が18人だった場合。
18人 ÷ 20人 × 100 = 90%
なお、公表義務で必ず公表しなければならないのは男性の取得率です。女性の取得率は法律上の公表義務項目ではありませんが、くるみん認定の基準や、社内外への情報発信のために算出しておくと役立ちます(女性の育休取得率の全国平均は令和6年度で86.6%)。
3-3. 男女で計算方法が異なる理由
「なぜ男女で計算方法が違うの?」と疑問に思われるかもしれません。これは、男女の育児休業取得のタイミングや制度利用の実態が異なるためです。
女性の場合、出産後に産休を取得し、その後育児休業に移行するのが一般的です。一方、男性は配偶者の出産時期に合わせて育児休業を取得します。そのため、男性は「配偶者の出産」を基準に、女性は「本人の出産」を基準にすることで、公平な評価ができるよう設計されています。
4. 公表義務に対応する2つの計算方法
公表義務では、企業は以下の2つの方法のうち、いずれか一方を選択して公表します。
4-1. ①育児休業等の取得割合(基本パターン)
育児休業等をした男性労働者の数 ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
こちらは最もシンプルな計算方法です。「育児休業等」には、通常の育児休業に加えて、2022年10月から新設された産後パパ育休(出生時育児休業)も含まれます。また、育児・介護休業法に基づく所定労働時間の短縮措置等の代替として育児休業に準ずる措置を講じた場合の休業も対象です。
4-2. ②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
(育児休業等をした男性労働者の数 + 小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数)÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
この方法では、育児休業だけでなく、育児目的休暇も分子に加えます。育児目的休暇とは、法律で定められた育児休業や子の看護休暇、年次有給休暇を除き、育児を目的として取得できる休暇制度のことです。
具体例としては、以下のような休暇が該当します。
- 配偶者出産休暇(妻の出産時に取得できる特別休暇)
- 育児参加休暇
- 失効年休の育児目的での積立・使用制度
4-3. どちらを選ぶべき?判断基準を解説
では、どちらの方法を選べばいいのでしょうか?判断基準をまとめました。
| 計算方法 | メリット | こんな企業におすすめ |
|---|---|---|
| ①育児休業等のみ | 計算がシンプル/データ管理が容易/多くの企業が採用 | 育児目的休暇制度がない/まずは基本で対応したい |
| ②育児休業等+育児目的休暇 | 取得率が高く見える/多様な支援をアピールできる/従業員の利用実態を反映 | 配偶者出産休暇など充実した制度がある/積極的に取り組みをPRしたい |
一般的には、育児目的休暇制度が充実している企業は②を選ぶと取得率が高くなるため、企業イメージの向上につながります。ただし、一度選んだ方法は継続して使用することが推奨されるため、慎重に判断しましょう。
5. 【実務編】分母と分子の正しいカウント方法
ここからは実務で最も重要な「誰を数に入れるか」について詳しく解説します。
5-1. 分母:「配偶者が出産した男性労働者」の定義
分母にカウントする対象は、公表前事業年度(直前の事業年度)において配偶者が出産した男性労働者です。
例えば、事業年度が4月1日〜3月31日の企業が2026年6月に公表する場合、2025年4月1日〜2026年3月31日の間に配偶者が出産した男性労働者が対象となります。
注意点:
- 雇用形態は問いません(正社員、契約社員、パート・アルバイトなど全て含む)
- 配偶者には、事実婚のパートナーも含まれます
- 育児・介護休業法上、育児休業の対象とならない者(法令で除外される者)は除外します
- ただし、労使協定で除外している者は分母に含めます
5-2. 分子:「育児休業等をした労働者」の範囲
分子にカウントするのは、公表前事業年度中に育児休業等を開始した男性労働者です。
重要なのは「開始した」という点です。育児休業が事業年度をまたいで継続していても、開始日が属する事業年度の分子としてカウントします(詳細は後述)。
「育児休業等」に含まれるもの:
- 通常の育児休業
- 産後パパ育休(出生時育児休業)
- 育児・介護休業法に基づく育児休業に準ずる措置による休業
5-3. 産後パパ育休(出生時育児休業)の扱い
2022年10月に新設された産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)まで取得できる制度です。通常の育児休業とは別に取得できますが、計算上は通常の育児休業と分けずに合算します。
例えば、同じ男性労働者が産後パパ育休と通常の育児休業の両方を取得した場合でも、分子では「1人」とカウントします。なお、令和6年度調査では育休を取得した男性のうち82.6%が産後パパ育休を利用しており、男性の取得率上昇を牽引する制度になっています。
5-4. 育児目的休暇とは?対象となる休暇の種類
計算方法②を選択する場合に関係する「育児目的休暇」について整理しましょう。
育児目的休暇の条件:
- 小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度であること
- 就業規則等に明記されていること
- 法定の育児休業・子の看護休暇・年次有給休暇ではないこと
対象となる休暇の例:
- 配偶者出産休暇(妻の出産に際して取得できる特別休暇)
- 育児参加休暇
- 失効年休の育児目的での積立・使用制度
- 企業独自の育児支援休暇
対象外の休暇:
- 通常の年次有給休暇
- 子の看護休暇(法定)
- 配偶者の入院・通院に伴う付き添い休暇(育児目的でない)
6. よくあるケース別の計算方法(100%超えの仕組みも)
実務では様々なイレギュラーケースが発生します。ここでは代表的なケースを解説します。
6-1. 事業年度をまたいで取得した場合
これは非常によくある質問です。
【ルール】育児休業の開始日が属する事業年度でカウント
具体例:事業年度が4月1日〜3月31日の企業で、ある男性労働者が2026年3月15日から2026年4月30日まで育児休業を取得した場合。
- 開始日:2026年3月15日 → 2025年度(2025年4月〜2026年3月)に属する
- したがって、2025年度の取得者としてカウント
- 2026年度の取得者にはカウントしない
このルールにより、同じ育児休業が2つの事業年度で重複してカウントされることを防ぎます。
6-2. 分割取得(2回に分けて取得)した場合
2022年10月の法改正により、育児休業は2回まで分割して取得できるようになりました。
【ルール】同じ子についての分割取得は「1人」とカウント
具体例:ある男性労働者が、同じ子について以下のように育児休業を取得した場合。
- 1回目:2025年4月1日〜4月14日(2週間)
- 2回目:2025年7月1日〜7月31日(1か月)
どちらも同じ事業年度内であれば、分子は「1人」としてカウントします。2回取得したからといって「2人」にはなりません。
ただし注意:最初の取得が前年度で、2回目が当年度の場合、最初の取得のみを計算対象とします。
6-3. 育休と育児目的休暇の両方を取得した場合
計算方法②を選択している企業で、同じ労働者が育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合。
【ルール】同じ子についてであれば「1人」とカウント
具体例:
- 産後パパ育休:2週間取得
- 配偶者出産休暇:3日間取得
どちらも同じ子について取得した場合、分子の「育児休業等をした労働者数」にも「育児目的休暇を利用した労働者数」にも該当しますが、合算する際は「1人」として扱います。つまり、ダブルカウントはしません。
6-4. 取得率が100%を超える場合のカラクリ
「育児休業取得率が110%」といった数値を見たことはありませんか?実は、これは計算上あり得る現象です。
【仕組み】前年度に配偶者が出産した人が、当年度に育休を取得した場合
分母は「当年度に配偶者が出産した人」、分子は「当年度に育休を開始した人」で数えます。分子には前年度以前に配偶者が出産した人が当年度に育休を取得したケースも含まれるため、分母より分子が大きくなり、100%を超えることがあります。
具体例で理解しましょう:
2025年度(2025年4月〜2026年3月)
- 配偶者が出産した男性労働者:10人(分母)
- うち2025年度中に育休取得:4人(分子)
- 2025年度の取得率:4人 ÷ 10人 = 40%
2026年度(2026年4月〜2027年3月)
- 配偶者が出産した男性労働者:10人(新規、分母)
- うち2026年度中に育休取得:5人
- 加えて、2025年度に配偶者が出産したが取得しなかった人のうち、2026年度に取得した人:6人
- 2026年度の取得率:(5人 + 6人)÷ 10人 = 110%
つまり、前年度からの繰り越し分が加わることで100%を超えることがあります。これは計算ミスではなく、正しい計算結果です。
7. 計算から除外するケース一覧
正確な計算のためには、「誰を除外するか」も重要です。
7-1. 法律上の除外対象者
育児・介護休業法上、育児休業の対象とならない労働者は、分母・分子の両方から除外します。
法律上の除外対象(労使協定による除外とは別):
- 申出の日から1年以内(1歳6か月・2歳までの育休延長の場合は6か月以内)に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
これらの労働者は、そもそも育児休業を取得する権利がないため、計算から除外します。なお、有期契約労働者についても、一定の要件を満たせば育児休業の対象となる点に注意してください。
7-2. 労使協定による除外者の扱い
企業によっては、労使協定で一定の労働者(入社1年未満の者など)を育児休業の対象から除外している場合があります。
【重要】労使協定で除外している労働者は、分母・分子の両方に含める
これは、公表義務の趣旨が「企業の育児休業取得の実態を正確に示すこと」にあるためです。労使協定による除外は企業の判断であり、法律上の除外ではないため、計算に含めます。
7-3. 子が死亡した場合
配偶者の出産後、残念ながら子が死亡した場合の取り扱いは、状況によって分かれます。育児休業を取得する前に子が死亡した場合は分母から除外し、すでに育児休業を取得(開始)した後であれば、分子のカウントは維持するのが基本的な考え方です。
要確認:子の死亡ケースの詳細な取り扱いは、個別事情によって判断が変わることがあります。実際の集計時は厚生労働省のQ&A・様式の記載例で最終確認してください。
7-4. 計算期間内に退職した場合
公表前事業年度中に退職した労働者の扱いは、状況によって異なります。一般的な考え方は次のとおりです。
- 配偶者が出産した後、育児休業を取得せずに退職した場合 → 分母から除外
- 育児休業を取得した後に退職した場合 → 分母・分子の両方から除外
出典:厚生労働省「育児休業取得率の公表について」(退職者の取り扱いは最新の様式・Q&Aで要確認)
8. 【注意点】計算ミスを防ぐチェックリスト
8-1. よくある計算ミス6選
実務でよく見られる計算ミスをまとめました。
- 自社が対象かどうかの判定ミス
→ 2025年4月から300人超企業も対象。300人ちょうどではなく「超える」で判定 - 産後パパ育休を別途カウントしてしまう
→ 通常の育児休業と合算して「1人」とカウントが正解 - 分割取得を複数人としてカウント
→ 同じ子についての分割取得は「1人」 - 労使協定による除外者を分母から除いてしまう
→ 労使協定除外者は分母・分子に含める - 事業年度をまたぐ場合に両方の年度でカウント
→ 開始日が属する年度のみでカウント - 退職者の扱いを間違える
→ 育休取得後の退職者は分母・分子の両方から除外
8-2. 小数点以下の端数処理
計算結果を公表する際の端数処理(小数点以下を切り捨てるか、四捨五入するかなど)は、厚生労働省が示す公表様式・記載例に沿って行います。
要確認:端数処理の具体的なルール(切り捨て/四捨五入など)は、公表時点の厚生労働省の様式・記載例で必ずご確認ください。本記事では特定の処理方法を断定していません。
8-3. 分母がゼロの場合の表記方法
小規模企業や、たまたま該当者がいなかった場合、分母(配偶者が出産した男性労働者)がゼロになることがあります。この場合、「0%」と表記すると実態を誤って伝えるため、該当者がいない旨がわかるよう表記します。
要確認:分母ゼロの場合の具体的な表記方法(「-」など)は、厚生労働省の様式・記載例に従ってください。
8-4. 再度の育児休業の扱い
同じ子について、一度育児休業を終了した後、あらためて取得することを「再度の育児休業」と言います。実務上は最初の取得のみをカウントすると覚えておくと間違いありません。最初から計画的に分割取得した場合(2回目の取得)は、前述の通り「1人」としてカウントします。違いは、分割取得が最初から予定されていたものか、状況の変化による再取得かという点です。
9. 実際に計算してみよう|Excel活用術
9-1. 基本的な計算フロー
育児休業取得率を算出する基本的な流れは以下の通りです。
- 対象期間を確定:公表前事業年度(例:2025年4月1日〜2026年3月31日)
- 分母を集計:対象期間中に配偶者が出産した男性労働者をリストアップし、除外対象者を確認して除外
- 分子を集計:対象期間中に育児休業等を開始した男性労働者をリストアップし、分割取得や育児目的休暇の重複を確認して調整
- 計算実行:分子 ÷ 分母 × 100で取得率を算出
- 結果の確認:前年度との比較で大きな変動がないか、明らかにおかしい数値がないかダブルチェック
9-2. Excelテンプレートの作り方
Excelで管理すると効率的です。以下のような項目を設けましょう。
【シート1:分母(配偶者出産者リスト)】
| 社員番号 | 氏名 | 配偶者出産日 | 雇用形態 | 法律上の除外対象 | 労使協定除外 | 退職日 | 分母カウント |
|---|
【シート2:分子(育休取得者リスト)】
| 社員番号 | 氏名 | 育休開始日 | 育休終了日 | 取得種類 | 対象の子 | 分割取得 | 分子カウント |
|---|
【シート3:計算・公表用】には、事業年度・分母・分子・取得率・採用した計算方法(①または②)を記載します。
9-3. 計算例:具体的な数値で理解する
それでは、具体的な数値例で計算してみましょう。
【前提条件】事業年度:2025年4月1日〜2026年3月31日/計算方法:①育児休業等の取得割合
【分母データ】
- 配偶者が出産した男性労働者:100人
- うち、法律上の除外対象者:5人
- うち、子の死亡等で除外:1人
- うち、育休取得せず退職:2人
分母:100人 − 5人(法律除外)− 1人(子死亡)− 2人(未取得退職)= 92人
【分子データ】
- 通常の育児休業のみ取得:60人
- 産後パパ育休のみ取得:15人
- 産後パパ育休+通常育休(両方取得):8人
- 分割取得(1人が2回取得):3人
- 育休取得後に退職:2人
分子:60人 + 15人 + 8人(両方取得でも1人)+ 3人(分割でも1人)− 2人(取得後退職は除外)= 84人
最終計算:84人 ÷ 92人 × 100 = 約91.3% → 公表様式に沿って端数処理し、約91%
公表する内容は、事業年度・男性の育児休業等の取得割合・採用した計算方法(育児・介護休業法に基づく育児休業等の取得割合)をセットで記載します。
10. 公表方法と時期
10-1. いつまでに公表すればいい?
公表時期は、公表前事業年度の終了後、おおむね3か月以内とされています。
- 事業年度が4月1日〜3月31日の企業 → 6月末までに公表
- 事業年度が1月1日〜12月31日の企業 → 3月末までに公表
「おおむね」という表現ですが、できる限り3か月以内を守りましょう。
10-2. どこに公表する?
公表は、インターネットの利用その他の適切な方法で、一般の方が閲覧できるようにする必要があります。
- 自社ホームページ(企業情報やサステナビリティのページに掲載)
- 両立支援のひろば(厚生労働省が運営するウェブサイトで公表可能。厚労省も推奨)
- 自社の採用サイト(求職者向けに公表)
多くの企業は、自社ホームページと「両立支援のひろば」の両方で公表しています。求職者が企業を比較検討する際によく利用されるため、「両立支援のひろば」への登録がおすすめです。
10-3. 公表する情報の3要素
- 取得割合(①または②のいずれか)
- 算定期間である公表前事業年度の期間(例:2025年4月1日〜2026年3月31日)
- どちらの計算方法で算出したか(①または②を明記)
【男性の育児休業取得状況(公表例)】
対象期間:2025年4月1日〜2026年3月31日
男性の育児休業等の取得割合:91%
算出方法:育児・介護休業法に基づく育児休業等の取得割合
11. 育児休業取得率に関するQ&A
Q1. 自社が公表義務の対象かどうか、どう判定する?
「常時雇用する労働者」が300人を超えるかで判定します。正社員だけでなく、期間の定めなく雇用されている者、過去1年以上継続雇用されている者、雇入れから1年以上継続雇用が見込まれる者を含めてカウントします。300人「ちょうど」は対象外で、300人を「超える」場合に対象です。
Q2. 女性の取得率はどう計算する?公表は必要?
女性は「育児休業等をした女性労働者 ÷ 出産した女性労働者 × 100」で計算します。法律上、公表が義務づけられているのは男性の取得率で、女性は必須項目ではありません。ただしくるみん認定の基準に女性の取得率も関わるため、算出しておくと有利です。全国平均は令和6年度で86.6%です。
Q3. 取得期間1日でも取得率にカウントされる?
はい、カウントされます。取得期間の長さは問われず、1日でも6か月でも同じ「1人」です。そのため「取得率100%」でも全員が短期間、というケースもあり得ます。企業を評価する際は、取得率だけでなく平均取得期間も併せて確認することが重要です。
Q4. 平均取得期間も公表すべき?
法律上の義務ではありませんが、公表を強くおすすめします。「取得率90%、平均取得期間3か月」といった情報は、求職者や投資家にとって価値が高く、企業の本気度が伝わります。
Q5. 厚生労働省の雇用均等基本調査との違いは?
厚生労働省が毎年実施する「雇用均等基本調査」と、企業が公表義務で算出する取得率では、対象期間や分子の定義が微妙に異なります。そのため、全国平均(男性40.5%など)と自社の公表数値を単純比較することはできません。あくまで参考値として捉えましょう。
Q6. 中小企業(300人以下)も計算しておくべき?
はい、準備しておくことをおすすめします。公表義務は今後さらに対象が拡大される可能性があり、くるみん認定・両立支援等助成金の申請、採用力強化にも役立ちます。まずは自社の現状把握から始めてみましょう。
12. 取得率向上のメリットと企業の取り組み
12-1. くるみん認定との関係(2025年4月に基準引き上げ)
くるみん認定とは、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受ける制度です。認定を受けるとくるみんマークを商品・広告・求人票などに使用でき、企業イメージの向上につながります。
2025年4月からの新基準(男性の育休取得率)
くるみん認定における男性の育児休業取得率の要件は、従来の10%以上から30%以上に引き上げられました。または、男性の育児休業等取得率+育児目的休暇取得率が合わせて50%以上であることが基準です(いずれも「両立支援のひろば」での公表が必要)。なお、施行にあたっては一定期間の経過措置が設けられています。
取得率を正確に計算し、向上させることは、くるみん認定の取得にも直結します。
詳細:厚生労働省「くるみん認定・プラチナくるみん認定について」(最新の基準・経過措置は必ず公式資料で要確認)
12-2. 両立支援等助成金
育児休業の取得促進に取り組む企業は、両立支援等助成金を受給できる可能性があります。代表的なコースとして、男性の育児休業取得を促進する取り組みに対する支援や、育児休業の円滑な取得・職場復帰を支援する取り組みへの支援などがあります。申請には正確な取得率の算出が必須なので、日頃からデータを整備しておきましょう。
要確認:助成金のコース名・支給要件・金額は年度ごとに見直されます。申請前に必ず最新の募集要項をご確認ください。
12-3. 採用・定着率への影響
育児休業取得率が高い企業は、採用市場でも有利です。
- 求職者へのアピール:特に若い世代はワークライフバランスを重視する傾向が強い
- 女性活躍の推進:男性の育児参加が進むことで、女性のキャリア継続もしやすくなる
- 従業員満足度の向上:安心して育休を取得できる環境は定着率向上につながる
- 企業ブランドの向上:社会的評価が高まり、優秀な人材が集まりやすくなる
13. まとめ|正確な計算で企業価値を高めよう
ここまで、育児休業取得率の計算方法について、基礎から実務レベルまで詳しく解説してきました。最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
- 2025年4月改正で対象が拡大
公表義務は「1,000人超」から「300人超」の企業へ。まず自社が対象か確認 - 基本の計算式を理解する
男性:育休等をした労働者数 ÷ 配偶者が出産した労働者数/女性:育休等をした労働者数 ÷ 出産した労働者数 - 2つの公表方法から選択
①育児休業等のみ、または②育児休業等+育児目的休暇 - 分母・分子のカウントを正確に
除外対象者、分割取得、事業年度またぎなど、ケースごとのルールを把握 - 公表は義務だがチャンスでもある
正確なデータ公表により、企業の信頼性と採用力が向上
育児休業取得率の計算は、最初は複雑に感じるかもしれません。でも、一度仕組みを理解してしまえば、そこまで難しくありません。大切なのは、正確に計算すること、そしてその数値を企業価値向上に活かすことです。取得率を高めるだけでなく、平均取得期間の延長や、取得しやすい職場環境の整備など、実質的な改善にもつなげていきましょう。
従業員とその家族が安心して働き、育児に向き合える環境を作ることは、結果的に企業の持続的な成長にもつながります。この記事が、皆さんの取り組みの一助となれば幸いです。
※本記事の内容は2026年時点で把握できる法令・ガイドラインに基づいて作成しています。制度改正・金額・様式は変更される場合があるため、最新の情報は厚生労働省ホームページで必ずご確認ください。
【参考資料】
・厚生労働省「育児・介護休業法について」
・厚生労働省「男性労働者の育児休業取得率等の公表について」
・厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」(2025年7月30日公表)
・厚生労働省「くるみん認定・プラチナくるみん認定について」



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