なぜ日本の男性は家事育児時間が少ないのか?5つの理由とデータで見る真実
1. はじめに:気になるけど聞きにくい、家事育児の「格差」
「夫が家事も育児もほとんどしてくれない」
「仕事で疲れているのはわかるけど、私だって働いている…」
「これって、うちだけなのかな?」
こんな風に感じたことはありませんか?
共働き世帯が専業主婦世帯を大きく上回る現代。男女ともに外で働くのが当たり前になったにもかかわらず、家庭内での家事育児の分担は、まだまだ大きな偏りがあるのが現実です。
実は、日本の男性の家事育児時間は、先進国の中でも最低レベルなんです。これは個人の問題というよりも、日本社会全体が抱える構造的な課題と言えます。
この記事では、なぜ日本の男性の家事育児時間が少ないのか、その理由を統計データや国際比較をもとに徹底的に解説していきます。
「自分の家庭は普通なのか知りたい」
「パートナーとの分担をどうすればいいか悩んでいる」
「社会全体の問題として理解したい」
そんなあなたに、きっと役立つ情報をお届けします。最後まで読んでいただければ、今日からできる具体的な改善策も見つかるはずです。
2. データで見る衝撃の実態|日本の男性は本当に家事育児をしていない?
まずは、客観的なデータから日本の現状を見ていきましょう。
2-1. 日本男性の1日の家事育児時間は約1時間54分
総務省が実施した「社会生活基本調査(2021年)」によると、6歳未満の子どもがいる世帯における男性の家事関連時間は、1日あたり1時間54分です。
家事関連時間には、以下のような活動が含まれます:
- 家事(料理、掃除、洗濯など)
- 育児(子どもの世話、遊び相手など)
- 介護・看護
- 買い物
1時間54分と聞くと、「意外と多いかも?」と思う方もいるかもしれません。でも、実際の内訳を見てみると:
- 家事時間:30分
- 育児時間:1時間5分
料理、掃除、洗濯といった毎日必要な家事に費やす時間は、わずか30分。これは、朝食の片付けや洗濯物を干すだけでも使い切ってしまう時間です。
ちなみに、5年前(2016年)の調査と比較すると31分増加しており、少しずつではありますが改善傾向にあります。しかし、次に紹介する女性の時間と比べると、まだまだ大きな差があるのです。
2-2. 国際比較:日本は先進国で最低レベル
では、日本の状況を世界と比べるとどうでしょうか?
OECD(経済協力開発機構)が2020年にまとめた生活時間の国際比較データを見ると、日本男性の無償労働時間(家事・育児・介護など)は1日あたり41分で、調査対象国の中で最下位という結果が出ています。
| 国名 | 男性の家事育児時間 | 女性の家事育児時間 | 男女比 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 41分 | 224分 | 女性が5.5倍 |
| 韓国 | 49分 | 215分 | 女性が4.4倍 |
| イタリア | 131分 | 306分 | 女性が2.3倍 |
| アメリカ | 147分 | 243分 | 女性が1.7倍 |
| スウェーデン | 161分 | 203分 | 女性が1.3倍 |
| OECD平均 | 136分 | 262分 | 女性が1.9倍 |
この表を見ると、日本の特異性がよくわかります。日本男性の家事育児時間は、OECD平均の3分の1以下なのです。
さらに注目すべきは、男女の時間差です。どの国でも女性の方が家事育児時間は長いものの、スウェーデンやアメリカでは1.3〜1.7倍程度。一方、日本では女性が男性の5.5倍も家事育児をしているという、極端な偏りが見られます。
2-3. 男女の時間差は約5倍という現実
同じ調査で、6歳未満の子どもがいる世帯における女性の家事関連時間は7時間28分でした。
つまり、こういうことです:
- 男性:1時間54分
- 女性:7時間28分
- 差:5時間34分
- 比率:女性が男性の約3.9倍
女性は男性の約4倍の時間を家事育児に費やしているのです。
これは、フルタイムで働く仕事時間(8時間)に匹敵する長さです。つまり、多くの女性は「外での仕事」と「家庭内の仕事」という、実質的にダブルワークをこなしているような状態と言えます。
内閣府の調査によれば、妻が60歳未満の夫婦の平日1日の平均家事時間は、妻が247分、夫は47分で、女性が約8割を負担しているというデータもあります。
「うちも同じような感じ…」と思った方も多いのではないでしょうか。実は、これは個別の家庭の問題ではなく、日本社会全体に共通する課題なのです。
3. なぜ日本の男性は家事育児時間が少ないのか?5つの理由
では、なぜこのような状況になっているのでしょうか?主な理由を5つ、詳しく見ていきましょう。
3-1. 理由①:世界一長い有償労働時間(長時間労働)
最も大きな理由の一つが、日本男性の有償労働時間の長さです。
OECDの国際比較データによると、日本男性の有償労働時間は1日452分(約7時間32分)で、比較対象国の中でダントツの1位です。これは、アメリカ(317分)やスウェーデン(263分)と比べると、1.5〜2倍近い長さです。
有償労働時間には、仕事だけでなく通勤時間も含まれます。東京圏では片道1時間以上かけて通勤している人も珍しくありません。往復2時間の通勤時間を加えると、朝7時に家を出て、帰宅は夜9時過ぎ…というケースも多いでしょう。
こうした長時間労働の背景には:
- 残業が当たり前の企業文化:「定時で帰る=やる気がない」と見なされる風土
- 人手不足:一人あたりの業務負担が大きい
- 「みんなが残っているから」という同調圧力:先に帰りづらい雰囲気
- 評価制度の問題:労働時間の長さが評価につながる仕組み
これでは、家事や育児をしたくても、物理的に時間が取れないのも無理はありません。
ちなみに、日本女性の有償労働時間も272分(約4時間32分)と、OECD平均(218分)を大きく上回っています。つまり、日本は男女ともに「働きすぎ」の国なのです。
3-2. 理由②:「労働時間が長いから家事ができない」は本当?
ここで、興味深いデータをご紹介します。
連合総研が2024年に実施した調査によると、男性の家事育児時間と労働時間には、実はほとんど相関がないという結果が出ているのです。
具体例を見てみましょう:
- 「食事の用意」について、週30時間未満しか働いていない男性でも、41.4%が「ほとんど行わない」と回答
- 一方、週60時間以上働いている女性の75%が「週に6〜7日」食事の用意を行っている
つまり、「時間があっても家事をしない男性」と「激務でも家事をする女性」が存在するということです。
このデータが示すのは、単に労働時間の問題だけではなく、「家事は女性がするもの」という固定観念や習慣が大きく影響しているということ。時間的余裕があっても、家事育児を「自分の役割」と認識していなければ、行動には移らないのです。
もちろん、長時間労働が家事育児の時間を削っているのは事実です。しかし、それだけが原因ではないという点を、まず理解しておく必要があります。
3-3. 理由③:根強く残る性別役割分担意識
日本では、高度経済成長期に確立した「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分担意識が、今なお根強く残っています。
1986年に男女雇用機会均等法が施行された頃、「腰掛け3年」という言葉がありました。女性は会社に3年程度勤めて職場で良い相手を見つけ、結婚退職して家事・子育てに専念するのが幸せ、という価値観です。
また、「3歳児神話」(3歳までは母親の手で育てるべき)も広く信じられていました。こうした考え方は、子どもを保育園に預けて働き続けようとする女性たちに大きな逆風となっていたのです。
現在、共働き世帯は全体の約7割を占め、こうした古い価値観は薄れつつあります。しかし、無意識のうちに刷り込まれた固定観念は、簡単には消えません。
例えば:
- 「家事は女性の方が得意だから」という思い込み
- 「夫が家事をするのは妻を”手伝う”こと」という認識(本来は共同責任なのに)
- 「男性が育児休業を取るのは特別なこと」という感覚
- 「夫は外で稼いでいるから、家では休ませてあげるべき」という考え
こうした意識は、男性側だけでなく女性側にも存在することがあります。「夫に家事を頼むより、自分でやった方が早い」「夫のやり方が気に入らない」と感じて、結果的に女性が全てを引き受けてしまうケースも少なくありません。
性別役割分担意識は、個人の価値観だけでなく、社会全体の「当たり前」として機能しているのが問題です。周囲の親世代や職場の先輩たちの言動、メディアの描写などから、無意識のうちに「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」というメッセージを受け取り続けているのです。
3-4. 理由④:企業文化と職場の雰囲気
たとえ本人が「家事や育児に参加したい」と思っていても、職場の雰囲気や企業文化がそれを許さないケースが多くあります。
具体的には:
◆ 育児休業の取得に対する理解不足
2012年の調査では、男性の育休について「職場で受け入れられないだろう」と回答した人が過半数を超えていました。2019〜2020年の調査では「取得すべきだ」が8割超となり、意識は変化していますが、実際の取得率との間にはまだギャップがあります。
◆ 「パタニティハラスメント(パタハラ)」の存在
- 「男のくせに育休を取るのか」という嫌味
- 育休から復帰後の配置転換や降格
- 「子どもの病気で休む」と言いづらい雰囲気
- 保育園のお迎えで定時退社することへの無言の圧力
◆ 「みんながやらないから、自分もやらない」という横並び意識
日本特有の同調圧力により、「周囲の男性が育休を取っていないから、自分も取りづらい」という悪循環が生まれています。誰かが先陣を切って変えようとしても、孤立してしまうリスクがあるため、現状維持を選んでしまうのです。
◆ 人事評価制度の問題
「家庭を優先する=キャリアをあきらめる」という図式が、暗黙の了解として存在する企業も少なくありません。育休を取得したり、時短勤務を選んだりすることが、昇進・昇格の遅れにつながる可能性があると、多くの男性が感じているのです。
こうした職場環境では、個人がいくら意識を変えても、行動に移すことは困難です。社会全体の構造的な問題として捉える必要があるのです。
3-5. 理由⑤:育児休業制度の取得率の低さ
最後に、育児休業制度の利用状況について見てみましょう。
厚生労働省の「雇用均等基本調査(2023年度)」によると、育児休業を取得した男性の割合は30.1%でした。これは、10年前(2013年)の2.03%と比べると大きな進歩ですが、女性の取得率85%超と比べると、まだ大きな差があります。
さらに、取得期間を見ると:
- 最多は「1カ月〜3カ月未満」(28%)
- 「2週間未満」も相当数存在
海外と比較すると、日本の男性の育休取得率や取得期間は依然として短いのが現状です。
| 国名 | 男性の育休取得率 | 一般的な取得期間 |
|---|---|---|
| 日本 | 約30%(2023年) | 1〜3カ月未満が最多 |
| スウェーデン | 約80%以上 | 数カ月〜1年 |
| ノルウェー | 約90% | 数カ月 |
| ドイツ | 約40% | 1〜2カ月 |
育休を取得しない理由として、男性からは以下のような声が聞かれます:
- 「収入が減るのが不安」
- 「職場に迷惑をかけたくない」
- 「復帰後のキャリアへの影響が心配」
- 「取得する雰囲気がない」
- 「短期間では意味がないと思う」
特に収入面の不安は大きく、育休中は給与の一部しか支給されないため、家計への影響を懸念する声が多いのです。
一方で、育休を取得した男性からは「人生が変わるくらいのインパクトがあった」という声も。カナダのケベック州の研究では、平均5週間の育休を取った男性は、3年後の家事・育児時間が20%伸びていたというデータもあります。短期間でも育休を取ることで、その後のライフスタイルが変わるきっかけになるのです。
4. 家事育児の偏りがもたらす深刻な影響
家事育児の男女差は、単に「不公平」というだけではありません。さまざまな問題を引き起こしているのです。
4-1. 女性のキャリアと経済的自立への影響
日本の女性就業率は50%以上と、諸外国と比べても高い水準にあります。しかし、フルタイムで働く女性や役職者として活躍している女性の割合は、諸外国に比べて少ないのが現状です。
その背景の一つが、家事育児の負担の大きさです。
- 出産を機に退職を余儀なくされる
- 復職してもパートタイムや非正規雇用を選ばざるを得ない
- 昇進の機会を逃す
- キャリアの中断により、スキルアップの機会を失う
結果として、男女の賃金格差が生まれ、経済的に男性に依存せざるを得ない状況が続きます。これがさらに「男性が稼ぎ、女性が家事育児」という構図を固定化させる悪循環につながっているのです。
また、長時間労働と家事育児の両立により、女性の睡眠時間は極端に短くなっています。OECDの調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で33カ国中最短。さらに厚生労働省の調査では、1日の睡眠時間が6時間未満の割合は男性37.5%に対し、女性は40.6%と、女性の方が睡眠不足に陥りやすいことがわかっています。
慢性的な睡眠不足は、心身の健康を損ない、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
4-2. 少子化問題との深い関係
家事育児の偏りは、少子化問題とも密接に関係しています。
ヨーロッパの研究では、ジェンダーニュートラル(男女の性差に捉われない考え方)が進んだ国ほど、出生率が高いことがわかっています。
その理由は明快です。男性の子育て負担割合が高いと、女性は「もう一人子どもを産み育てたい」と自然に思えるようになるからです。
逆に、出生率が低いヨーロッパの国では、夫は子どもを持ちたいと思っているけれど妻の方は「子どもはもういらない」と言っている人が多いことがわかっています。その理由を掘り下げると、妻に家事や子育ての負担がかかっており、もう一人子どもを持ったら更に自分にばかり負担が増えると妻が感じているという状況がありました。
日本でも、「子どもは欲しいけれど、一人で十分」と考える夫婦が増えています。その背景には、女性一人に過度な負担がかかっている現実があるのです。
2023年の日本の出生数は統計開始以来初めて80万人を割り込み、77万人前後まで落ち込む見通しです。少子化対策として、経済的支援や保育の充実も重要ですが、家事育児の男女格差を解消することも、同じくらい重要な課題なのです。
4-3. 夫婦関係の悪化リスク
家事育児の偏りは、夫婦関係にも大きな影響を及ぼします。
「なぜ私ばかりが…」という不満や疲労が蓄積すると:
- パートナーへの不信感や怒り
- コミュニケーションの減少
- 愛情の冷却
- 最悪の場合、離婚につながることも
特に、産後の女性は身体的にも精神的にも負担が大きい時期です。この時期に十分なサポートが得られないと、産後うつのリスクも高まります。
一方で、男性が育児に参加することで、夫婦間の絆が強まるという研究結果もあります。たいへんな時期を一緒に乗り越えた経験は、夫婦関係を深める貴重な機会となるのです。
4-4. 子どもの価値観形成への影響
親の姿は、子どもの価値観形成に大きな影響を与えます。
「父親は仕事ばかりで家にいない」「母親だけが家事育児をしている」という環境で育った子どもは、無意識のうちに性別役割分担を「当たり前のこと」として受け入れてしまいます。
逆に、子育てをする父親と、外で働く母親の姿を目の当たりにして育った子どもは、ジェンダーニュートラルな価値観を身につけることができるという研究結果があります。
また、北欧の研究では、父親の家事育児参画によって子どもの学力が少し上がったという報告もあります。父親が積極的に関わることで、子どもの情緒的安定や認知発達にプラスの効果があると考えられています。
さらに、父親が育児に参加することは、父子関係の構築にも重要です。乳幼児期から関わることで、親子の愛着形成がスムーズになり、思春期以降の親子関係にも良い影響を与えます。
次世代により良い社会を残すためにも、今の親世代が意識を変えていくことが大切なのです。
5. 「変わり始めている」日本の現状|希望の兆し
ここまで厳しい現実をお伝えしてきましたが、実は日本も少しずつ変わり始めています。
5-1. 男性の育休取得率は10年で15倍に
先ほども触れましたが、男性の育児休業取得率は着実に上昇しています。
- 2013年:2.03%
- 2023年:30.1%
- 10年間で約15倍に増加
この背景には、以下のような制度改正があります:
- 子どもができた労働者に対して育児休業の取得意向の確認を個別に行うことを事業者に義務づけ
- 大企業に育児休業の取得状況の公表を義務づけ
- 2022年10月からの「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設
「産後パパ育休」は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間取得できる制度で、通常の育児休業とは別に取得可能です。分割して取得することもでき、より柔軟に育休が取れるようになりました。
また、東京の街中でも、平日の昼間に一人でベビーカーを押して歩いている男性の姿が、以前よりも増えています。保育園の送迎も、父親が担当する家庭が珍しくなくなってきました。
5-2. 意識調査に見る価値観の変化
NHKが2018年に行った「日本人の意識」調査によると、「夫婦はお互いに助け合うべきものだから、夫が台所の手伝いや子どものおもりをするのは当然だ」という記述に「賛成」と答えた国民の割合は、約9割に達しました。
これは、1973年の調査開始以来、増加の一途をたどっています。「男性は仕事、女性は家庭」という古い価値観は、確実に変わり始めているのです。
また、若い世代ほど「夫婦で家事育児を分担すべき」という意識が強く、20代〜30代の男性の多くが「育児に参加したい」と考えています。
問題は、意識と行動のギャップです。「やりたい」と思っていても、職場環境や社会の仕組みがそれを許さない、というジレンマがあるのです。
5-3. 先進企業の取り組み事例
一方で、積極的に男性の育児参加を推進する企業も増えています。
◆ サイボウズ株式会社
- 男性社員の育休取得率100%を達成
- 在宅勤務やフレックスタイム制度の充実
- 「働き方宣言制度」で個々のライフスタイルに合わせた働き方を実現
◆ 積水ハウス株式会社
- 男性社員の育休取得率80%以上
- 「イクメン休業」として1カ月以上の育休取得を推奨
- 育休取得者の上司にも評価制度でインセンティブを設定
◆ ユニリーバ・ジャパン
- 全社員を対象に場所や時間にとらわれない働き方「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入
- 男女問わず育児との両立がしやすい環境づくり
これらの企業に共通しているのは、トップの強いリーダーシップと、制度だけでなく企業文化そのものを変える取り組みを行っている点です。
デンマークの研究では、25人未満の会社を対象に調査したところ、育児休業で誰かが抜けても基本的に業務や業績に支障はなく、他の人がカバーしたり、一時的に人を雇い入れたりすることでうまく乗り切れることがわかりました。
つまり、人員配置や仕事の割り振りを工夫すれば、中小企業でも育児休業の取得を推進することは十分に可能なのです。
6. 今日からできる|家事育児の分担を改善する具体的な方法
「社会の仕組みが変わらないと…」と思うかもしれませんが、個人や家庭レベルでできることもたくさんあります。
6-1. 夫婦で話し合う:可視化から始めよう
まず最初にやるべきことは、家事育児の「可視化」です。
日々行っている家事育児を、すべて書き出してみましょう:
- 料理(献立を考える、買い物、調理、片付け)
- 洗濯(洗う、干す、たたむ、しまう)
- 掃除(部屋、トイレ、お風呂、窓など)
- ゴミ出し
- 子どもの保育園・学校の準備
- 子どもの送り迎え
- 子どもの習い事の送迎
- 子どもの宿題のサポート
- PTAや学校行事への参加
- 病院への付き添い
- 家計管理
- 各種手続き
これらを表にして、「誰が」「どれくらいの頻度で」「どれくらいの時間」行っているかを記録します。
可視化することで、「自分は十分やっている」と思っていた側が、実際にはほとんど負担していないことに気づくケースもあります。逆に、「何もしてくれない」と思っていても、意外と相手も一部を担っていることがわかることもあります。
ポイントは、責めるためではなく、現状を客観的に把握するために行うということ。冷静に、データとして見ることが大切です。
6-2. 小さなことから担当を決める
いきなり「半々に分担しよう」というのは現実的ではありません。まずは、小さなことから始めるのがコツです。
例えば:
- 朝のゴミ出しは夫が担当
- 週末の朝食は夫が作る
- お風呂掃除は夫の担当
- 保育園の送りは夫、迎えは妻
- トイレットペーパーの補充は気づいた方がやる
重要なのは、「担当」として明確に決めることです。「手伝う」という意識ではなく、「自分の責任」として認識してもらうことで、継続性が生まれます。
また、パートナーが苦手でないもの、やりやすいものから選んでもらうのも良いでしょう。料理が得意なら料理を、掃除が好きなら掃除を担当してもらう、といった具合です。
6-3. 「完璧」を求めない勇気
パートナーが家事育児をしてくれるようになったとき、気をつけたいのが「やり方へのダメ出し」です。
「掃除機でリビングの掃除を頼んだけど、すみっこにゴミがたまっている」
「食器の片付けを頼んだけど、食器を置く位置が間違っている」
こういう時、つい手を出したり注意したくなりますが、それはNG。やる気を失わせてしまいます。
関わってもらうからには全面的に任せ、細かい点は目をつぶりましょう。必要に応じて、「私がちゃんと伝えなかったのがいけないんだけど、このお皿はこっちの棚なんだ」など、対等な目線で穏やかに伝えることが大切です。
また、やってくれたことには「ありがとう」「助かる」と感謝の気持ちを伝えましょう。ポジティブなフィードバックは、継続のモチベーションになります。
6-4. 専門家が教える、パートナーへの上手な声のかけ方
家事育児の分担について話し合う際、伝え方次第で相手の反応は大きく変わります。
◆ NG例
- 「あなたは何もしてくれない!」(責める)
- 「もっと家事をやってよ」(曖昧で漠然としている)
- 「○○さんの旦那さんは育休取ったのに」(他人と比較する)
◆ OK例
- 「最近、私が疲れているのに気づいてくれてる? 少し助けてほしいな」(自分の気持ちを伝える)
- 「朝のゴミ出し、あなたに担当してもらえると本当に助かるんだけど、お願いできる?」(具体的に依頼する)
- 「二人で協力して乗り越えたいから、一緒に考えてもらえる?」(協力を求める)
ポイントは:
- 「Iメッセージ」を使う:「あなたが〜」ではなく「私は〜と感じている」と伝える
- 具体的に伝える:「もっと手伝って」ではなく「○○をお願いできる?」
- 感謝も忘れずに:相手がやってくれたことには、必ず感謝を伝える
また、忙しい時や疲れている時ではなく、落ち着いて話せるタイミングを選ぶことも大切です。
7. 社会全体で変えていくために必要なこと
個人や家庭の努力だけでは限界があります。社会全体の仕組みを変えていくことも重要です。
7-1. 働き方改革の推進
最も根本的な解決策は、長時間労働の是正です。
具体的には:
- 残業時間の上限規制の厳格化
- テレワーク・リモートワークの推進:通勤時間を削減し、家族と過ごす時間を増やす
- フレックスタイム制度の拡充:柔軟な働き方を可能にする
- 「定時退社」を当たり前にする文化づくり
- 業務の効率化・DX化:同じ成果を短時間で出せる仕組み
政府も働き方改革を推進していますが、まだ十分とは言えません。企業側の積極的な取り組みと、労働者側の意識改革の両方が必要です。
7-2. 男性の育休取得を「当たり前」にする文化
制度があっても、利用しづらい雰囲気では意味がありません。男性が育休を取ることを「当たり前」にする文化を醸成することが重要です。
そのために必要なこと:
- 育休取得を人事評価でマイナスにしない
- 上司や経営層が率先して育休を取る:ロールモデルを作る
- 育休取得者をサポートする体制づくり:業務の引き継ぎや代替要員の確保
- 育休中の同僚にも配慮:育休取得者のカバーで仕事量が増える同僚にも、手当やインセンティブを提供
- 社内での情報共有:「うちの会社では育休を取って大丈夫」というメッセージを発信
ハーバード大学のメアリー・ブリントン教授は、「男性の育児参加に対する社会の理解が醸成されるのを待っている時間はない。政府は男性の育休取得の義務化など、強制力を伴う措置を検討すべきだ」と指摘しています。
実際、北欧諸国では男性にも一定期間の育休取得を義務づける「パパ・クオータ制度」を導入し、高い取得率を実現しています。日本でも、より強力な政策が求められています。
7-3. 企業が取り組むべき施策
企業にとって、社員の家事育児参加を支援することは、実は経営上のメリットもあります。
◆ 社員の定着率向上
ワークライフバランスが取れる企業は、優秀な人材を引きつけ、離職率を下げることができます。
◆ 生産性の向上
心身ともに健康な社員は、高いパフォーマンスを発揮します。長時間労働で疲弊した社員よりも、効率的に働けます。
◆ 企業イメージの向上
多様性を尊重し、社員の幸福を重視する企業は、社会的評価が高まり、ブランド価値も向上します。
具体的な施策としては:
- 男性育休取得率の目標設定と公表
- 育休取得者の体験談の社内共有
- 管理職研修でのアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)教育
- 在宅勤務制度の整備
- 時短勤務の選択肢を男性にも提供
- 保育施設の社内設置や提携
中小企業では難しい面もあるかもしれませんが、できることから少しずつ始めることが大切です。
8. まとめ|一歩ずつ、確実に変えていこう
ここまで、日本の男性の家事育児時間が少ない理由を、データとともに詳しく見てきました。
【この記事のポイント】
◆ 日本の現状
- 日本男性の家事育児時間は1日約1時間54分で、先進国で最低レベル
- 女性との時間差は約5倍で、国際的に見ても極端な偏りがある
◆ 少ない5つの理由
- 世界一長い有償労働時間(長時間労働)
- 労働時間と家事時間に相関がない(意識の問題)
- 根強く残る性別役割分担意識
- 企業文化と職場の雰囲気
- 育児休業制度の取得率の低さ
◆ 影響
- 女性のキャリアと経済的自立を阻害
- 少子化問題の一因
- 夫婦関係の悪化
- 子どもの価値観形成への影響
◆ 変化の兆し
- 男性の育休取得率は10年で15倍に増加
- 約9割が「夫婦で家事育児を分担すべき」と考えている
- 先進企業では様々な取り組みが始まっている
◆ 今日からできること
- 家事育児を可視化し、夫婦で現状を共有する
- 小さなことから担当を決めて始める
- 完璧を求めず、感謝の気持ちを忘れない
- 対等な立場で、具体的にコミュニケーションを取る
家事育児の男女格差は、個人の問題ではなく、社会全体の構造的な問題です。
長時間労働が当たり前の企業文化、根強い性別役割分担意識、育休を取りづらい職場の雰囲気…これらは、一人の力だけでは変えられません。
でも、だからといって諦める必要はありません。
社会は、一人ひとりの小さな行動の積み重ねで変わっていきます。あなたの家庭で、今日から少しずつ変えていくこと。それが、やがて社会全体の変化につながっていくのです。
「自分一人が変わっても意味がない」と思わないでください。
あなたが育休を取ることで、職場の同僚も「自分も取っていいんだ」と思えるかもしれません。
あなたが家事育児を積極的に行う姿を見て、子どもたちは新しい価値観を学ぶでしょう。
あなたの行動が、次世代により良い社会を残す第一歩になるのです。
もちろん、すぐに理想的な状態になるわけではありません。試行錯誤しながら、時にはうまくいかないこともあるでしょう。
でも、大切なのは「完璧」ではなく「前進」です。
昨日よりも今日、今日よりも明日、少しずつ改善していく。その積み重ねが、やがて大きな変化を生み出します。
一歩ずつ、確実に変えていきましょう。
あなたとあなたの家族、そして日本社会全体が、もっと幸せで持続可能な未来に向かうために。
この記事が、そのきっかけになれば幸いです。
【参考資料】
- 総務省「社会生活基本調査」(2021年)
- OECD「生活時間の国際比較データ」(2020年)
- 内閣府「男女共同参画白書」
- 厚生労働省「雇用均等基本調査」(2023年度)
- 連合総研「第48回勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査」(2024年)
- 国立社会保障・人口問題研究所「第7回全国家庭動向調査」
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あなたの一歩が、社会を変える力になります。

