「子どもが小学3年生になっても、時短勤務って使えるのかな?」
育児をしながら働くママ・パパにとって、これはとても切実な疑問ですよね。小学校に入学すると、下校時間が早かったり、学童保育の送り迎えがあったりで、まだまだ親のサポートが必要な時期。できれば時短勤務を続けたい、と思うのは当然のことです。
結論を先にお伝えすると、法律で企業に義務づけられている育児短時間勤務は「3歳未満」までです。ただし、企業が独自に期間を延長しているケースは多く、2025年に施行された法改正で3歳以降の選択肢も広がりました。つまり「小3で使えるかどうかは、会社の制度しだい」というのが実態です。
この記事では、法律の建前と企業の実態の両面から「小3で時短が使えるのか」に答えたうえで、自分の会社で使えるかを確認する方法、申請手順、給与や社会保険の扱いまで整理します。育児と仕事の両立に悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んで、自分に合った働き方を見つけてくださいね。
1. 育児短時間勤務制度の基本を理解しよう
1-1. 育児短時間勤務制度とは?
育児短時間勤務制度とは、小さな子どもを育てながら働く人が、1日の労働時間を短縮できる制度のことです。「育児・介護休業法」に基づいて、すべての企業に導入が義務づけられています。
具体的には、通常8時間勤務のところを、原則6時間勤務に短縮できます。たとえば9時〜18時勤務だった人が、9時〜16時勤務に変更できるイメージです。
この制度のポイントは、労働者が申し出れば、企業は原則として断ることができないという点。条件を満たしていれば、あなたには時短勤務を選ぶ権利があります。
1-2. 法律で定められた対象期間は「3歳未満」
ここが重要なポイントです。育児・介護休業法で企業に義務づけられているのは、「3歳に満たない子を養育する労働者」に対する短時間勤務制度です。
つまり、法律上、企業が必ず時短勤務を認めなければならないのは、子どもが3歳になるまで。「えっ、3歳まで?小学3年生は全然違うじゃないか」と思われた方、ここからが大事なところです。
1-3. なぜ小学校3年生まで気になるの?
法律上は3歳未満なのに、なぜ「小学校3年生」という年齢が話題になるのでしょうか。
理由は主に2つあります。1つは、多くの企業が法律を上回る独自制度として、時短勤務の期間を延長しているから。その中でも「小学校3年生修了まで」という設定が増えています。もう1つは、2025年4月の法改正で「子の看護等休暇」の対象が小学校3年生まで拡大されたことで、国としても小学校低学年の子育て支援を強めているからです。
背景には、こんな実情があります。
- 小学校低学年の下校時間は14〜15時台と早い
- 学童保育の定員に限りがある、または質に不安がある
- 子どもが一人で留守番するには、まだ不安な年齢
- 宿題のサポートや生活習慣の定着に、親の関わりが必要
こうした流れを受けて、「時短勤務も小学校3年生まで使えるようになるのでは?」という期待が高まっているわけです。
2. 【2025年施行】法改正で変わったこと
2025年は、育児と仕事の両立支援において大きな転換点になりました。育児・介護休業法が改正され、より柔軟な働き方が可能になっています。ここでは、特に押さえておきたい4つのポイントを解説します。
※以下はいずれも2025年4月・10月に順次施行済みの内容です(2026年時点)。取得日数や上限額など数値は改定される場合があるため、実際の利用時は勤務先や公的機関で最新の内容をご確認ください。
2-1. 子の看護等休暇が「小学校3年生修了まで」に延長
まず1つ目が、「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」への拡充です(2025年4月施行)。
【改正前】
- 名称:子の看護休暇
- 対象:小学校就学前まで
- 取得事由:病気・けが、予防接種・健康診断
【改正後】
- 名称:子の看護等休暇(「等」が追加)
- 対象:小学校3年生修了まで(法律上は9歳に達する日以後の最初の3月31日まで)
- 取得事由:上記に加えて
- 感染症に伴う学級閉鎖・学年閉鎖など
- 入園(入学)式・卒園式への参加
この改正により、小学校3年生までの子がインフルエンザ等で学級閉鎖になったとき、入学式に付き添いたいときなどにも、休暇が取りやすくなりました。取得日数は年間で子ども1人につき5日、2人以上で10日まで(時間単位での取得も可能)で、日数自体は改正前後で変わりません。あわせて、これまで労使協定で対象外にできた「勤続6か月未満」の除外要件も廃止されています。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正内容(リーフレット)」
2-2. 残業免除(所定外労働の制限)が「小学校就学前」まで拡大
2つ目は、残業免除の対象拡大です(2025年4月施行)。
これまで「所定外労働の制限」(残業の免除)を申し出られるのは、3歳未満の子を養育する労働者だけでした。改正後は、この対象が小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大されています。
これにより、保育園や幼稚園に通う子を持つ親は、お迎えに間に合うよう、残業を断る法的な根拠を持つことになりました。申し出をすれば、会社は所定労働時間を超える残業を命じることができません。
2-3. 短時間勤務の代替措置に「テレワーク」が追加
3つ目は、短時間勤務制度の代替措置の拡充です(2025年4月施行)。
3歳未満の子を養育する労働者には短時間勤務制度の導入が義務づけられていますが、業務の性質上どうしても短時間勤務が難しい職場もあります。そうした場合、企業はフレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、保育施設の設置運営、育児休業に準ずる措置などの代替措置を講じることが認められています。
改正後は、この代替措置に「テレワーク(在宅勤務等)」が追加されました。さらに、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるようにすることが、企業の努力義務として加わっています。
2-4. 【2025年10月施行】3歳〜就学前の柔軟な働き方が義務化
4つ目は、2025年10月に施行された重要な改正です。
3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に対して、企業は次の5つの措置のうち2つ以上を用意することが義務になりました。労働者は、会社が用意した措置の中から1つを選んで利用できます。
| 措置の種類 | 内容 |
|---|---|
| 始業時刻等の変更 | フレックスタイム制、時差出勤など |
| テレワーク等 | 月10労働日以上の在宅勤務など(原則、時間単位の利用も可) |
| 保育施設の設置運営等 | 企業内保育所、ベビーシッターの手配・費用負担など |
| 養育両立支援休暇 | 年10日以上の新たな休暇(原則、時間単位の取得も可) |
| 短時間勤務制度 | 1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの |
つまり、法律上の時短勤務「義務」は3歳未満のままですが、3歳から小学校入学前までは、時短勤務を含む複数の選択肢から選べるようになりました。あわせて、子が3歳になるまでの適切な時期に、両立に関する労働者の意向を個別に聴取し配慮することも企業に義務づけられています。
「3歳を過ぎたらフルタイムに戻すしかない」という状況は、この改正で変わりつつあります。会社によっては時短勤務を3歳以降も選択肢として残すかもしれませんし、テレワークと組み合わせて柔軟に働ける可能性もあります。
出典:BUSINESS LAWYERS「2025年4月・10月施行 育児・介護休業法改正のポイント解説」
3. 小学校3年生でも育児短時間勤務は使える?
さて、本題です。結局のところ、小学校3年生でも育児短時間勤務は使えるのでしょうか。
3-1. 法律上は「3歳未満」が原則
まず法律の建前をおさらいします。育児・介護休業法第23条では、「3歳に満たない子を養育する労働者」に対して、1日の所定労働時間を原則6時間とする短時間勤務制度を設けることが、企業に義務づけられています。
ですから、法律上の義務として企業が時短勤務を認めなければならないのは、子どもが3歳になるまでです。3歳以降については、小学校就学前までの子を養育する労働者に対し、短時間勤務やフレックスタイム制など両立を支援する措置を講じることが企業の努力義務とされてきました。努力義務は「できるだけそうするよう努めてください」という意味で、義務ほどの強制力はありません。
ただし前章のとおり、2025年10月からは3歳〜就学前について「2つ以上の措置を用意する義務」に格上げされています。努力義務から一歩進んだ、と理解しておくとよいでしょう。
3-2. 多くの企業が独自に延長している実態
法律の建前とは別に、実態は少し違います。多くの企業では、法律で定められた3歳未満を超えて、独自に時短勤務の対象期間を延長しています。理由はいくつかあります。
- 人材確保・定着のため:優秀な社員が育児を理由に退職するのを防ぐ
- 企業イメージの向上:「働きやすい会社」として求職者にアピールできる
- 社会的責任:少子化対策や女性活躍推進への貢献
- 実務上の必要性:小学校低学年でも親のサポートが必要な実情への配慮
厚生労働省の雇用均等基本調査でも、短時間勤務制度を導入している事業所のうち、一定割合が3歳を超えても利用可能としています。全体としては、3歳以降も時短勤務を利用できる企業がおよそ4割前後にのぼるとされ、大企業・従業員数が多い企業ほど期間を延長している傾向があります。
※小学校就学まで/小学校3年生まで/小学校卒業以降まで、といった内訳の具体的な割合は、参照する調査年度によって変わります。記事公開時点の最新データ(直近の雇用均等基本調査)に基づいて数値を更新してください。【要確認:最新年度の雇用均等基本調査の数値に差し替え】
3-3. 小学校3年生まで延長している企業は?
「小学校3年生まで」時短勤務を認めている企業も、着実に増えています。IT企業や金融機関、大手メーカーなどでは、「小学校3年生修了まで」や「小学校卒業まで」と設定している例が見られます。もともと小学校就学前までだった制度を、小学校3年生修了まで、さらに小学校卒業まで、と段階的に延長してきた企業もあります。
これは、働く親のニーズと企業の人材戦略が合致した結果と言えるでしょう。とはいえ「小3で必ず使える」わけではないので、大切なのは自分の会社の制度を確認することです(次章で方法を説明します)。
3-4. 【表で比較】企業規模別の時短期間(一般的な傾向)
企業規模ごとの、時短勤務の対象期間の一般的な傾向を表にまとめました。あくまで傾向であり、実際は会社ごとに大きく異なります。
| 企業規模 | よくある対象期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大企業(1,000人以上) | 小学校3年生〜小学校卒業まで | 福利厚生が充実し、独自に期間を大幅延長しているケースが多い |
| 中堅企業(300〜999人) | 小学校就学前〜小学校3年生まで | 業界・業種でばらつき。人材確保のため延長する企業も増加中 |
| 中小企業(100〜299人) | 3歳まで〜小学校就学前 | 法定どおり3歳までが多いが、柔軟に対応する企業もある |
| 小規模企業(100人未満) | 3歳まで(法定どおり) | 法定義務の範囲が中心。個別相談で柔軟に対応する企業も |
中小企業でも「社員を大切にする」方針で手厚い制度を設けている会社はあります。まずは自分の会社の就業規則を確認してみましょう。
4. 自分の会社で小学3年生まで使えるか確認する方法
「うちの会社では、小学3年生まで時短勤務が使えるのかな?」——これを確認する方法を具体的に見ていきます。
4-1. まずは就業規則をチェック
最初にやるべきは、就業規則の確認です。就業規則は会社のルールブックのようなもので、労働条件や福利厚生が書かれています。常時10人以上を雇用する企業には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています。
就業規則は社内イントラで閲覧できることが多く、なければ総務部や人事部に依頼すれば見せてもらえます。従業員には閲覧する権利がありますので、遠慮は不要です。特に次の項目をチェックしましょう。
- 「育児短時間勤務制度」または「短時間勤務制度」の項目
- 対象となる子の年齢(「3歳に満たない子」「小学校就学前まで」「小学校3年生修了まで」など)
- 短縮できる労働時間(原則6時間、など)
- 申請の方法と時期
- 労使協定による適用除外の条件
厚生労働省が示す規定例では、次のような記載になっています。
第○条(育児短時間勤務)
3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第○条の所定労働時間について、午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする。)の6時間とすることができる。
この例では「3歳に満たない子」ですが、企業によっては「小学校就学の始期に達するまで」や「小学校3年生修了まで」となっている場合があります。「3歳に満たない子」としか書かれていなくても、次に説明する方法があります。
4-2. 人事部・総務部への確認ポイント
就業規則には「3歳まで」とあっても、実際には個別の事情に応じて延長を認める企業もあります。人事部・総務部に直接相談してみましょう。次のポイントを押さえると、話がスムーズです。
- 法定を超える独自制度の有無
「就業規則には3歳までとありますが、実際には3歳以降も時短勤務を利用できる制度はありますか?」 - 過去の利用実績
「小学校入学後も時短勤務を続けた社員の例はありますか?」 - 個別対応の可能性
「小学校3年生まで時短勤務を希望する場合、個別に相談できますか?」 - 代替措置の選択肢
「時短勤務以外に、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方の制度はありますか?」 - 2025年10月施行の法改正への対応
「3歳から小学校入学前について、柔軟な働き方の選択肢を2つ以上用意する義務が2025年10月から施行されましたが、当社ではどの措置を用意していますか?」
こうした質問で、就業規則だけでは見えない実際の運用状況が分かります。人事としても、優秀な人材に長く働いてほしいという思いがありますから、前向きに検討してくれる可能性は十分あります。
4-3. 労使協定で除外される場合もある
注意点が1つ。育児短時間勤務制度には、労使協定により対象外にできる労働者の規定があります。次に該当する労働者は、会社と労働者代表が労使協定を結んでいる場合、時短勤務の対象から除外されることがあります。
- 入社後1年未満の従業員
- 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
- 業務の性質上、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する従業員
3つ目の「業務の性質上困難」は、たとえば長時間乗務が必須の客室乗務員、時間帯で人員配置が決まる流れ作業のライン業務、交替制勤務などが想定されます。ただし「困難」かどうかは企業の都合だけで決められるものではなく、丁寧な検討が必要です。
もし除外対象に該当しても、企業には代替措置(フレックスタイム制、テレワーク、保育施設の設置など)を講じる義務があります。「業務上難しい」と言われても、すぐ諦めず「では代わりにどんな支援が受けられますか?」と確認してみましょう。
5. 育児短時間勤務の申請方法と必要書類
「時短勤務を使いたい」と思ったら、どう申請すればよいのでしょうか。具体的な手順と書類を説明します。
【混同注意】2つの「申出書」は別物です
この章で扱うのは、時短勤務を会社に願い出るための「育児短時間勤務申出書」(社内書類)です。育休中の社会保険料を免除してもらうために会社が年金事務所へ提出する「育児休業等取得者申出書」とは別の書類なので混同しないようにしましょう。育児休業等取得者申出書の提出期限や「出し忘れ」への対処法は、こちらの記事(育児休業等取得者申出書はいつまでに提出?完全ガイド)で詳しく解説しています。
5-1. 申請のタイミングはいつ?
育児短時間勤務の申請は、開始予定日の1か月前までに行うのが一般的です。具体的な期限は企業の就業規則で定められますが、多くの企業で次のようなタイミングが求められます。
- 育児休業から復帰する1〜2か月前
- 時短勤務を開始したい日の1か月前
- 子の年齢による制度終了が近づいた場合の、延長希望の申請
申請が遅れると、会社側の業務調整が間に合わず、希望どおりの開始日から使えないこともあります。早めに相談・申請しましょう。なお、時短勤務は一度申請したら固定ではなく、期間を区切って申請し、状況に応じて延長・終了を選べます。1年ごとの更新としている企業が多いです。
5-2. 必要な書類一覧
| 書類名 | 内容 | 入手先 |
|---|---|---|
| 育児短時間勤務申出書 | 時短勤務を希望する旨を会社に申し出る書類 | 会社の人事部・総務部 |
| 子の出生を証明する書類 | 母子健康手帳(出生届出済証明のページ)、戸籍謄本、住民票など | 市区町村役場 |
| その他 | 会社によっては、保育園の入園証明書や配偶者の就労証明書などを求められる場合も | 保育園、配偶者の勤務先など |
特に重要なのが「育児短時間勤務申出書」です。氏名・所属・社員番号、養育する子の氏名・生年月日、時短勤務の開始希望日と終了予定日、希望する勤務時間(例:9時〜16時)などを記入します。様式は会社によって異なりますが、様式がない場合は厚生労働省の標準的なフォーマットを参考にできます。
5-3. 申請書の書き方(記入例)
育児短時間勤務申出書
令和○年○月○日
○○株式会社
代表取締役社長 ○○ ○○ 殿所属:営業部
氏名:山田 花子私は、育児・介護休業法第23条第1項の規定に基づき、下記のとおり育児短時間勤務の申出をいたします。
記
1. 養育する子の氏名・生年月日:山田 太郎 令和○年○月○日生
2. 申出に係る子との続柄:実子
3. 短時間勤務の期間:開始日 令和○年○月○日/終了日 令和○年○月○日
4. 希望する勤務時間:午前9時から午後4時まで(休憩時間 12時〜13時)
5. その他:(特記事項があれば記入)
以上
記入のポイントは次のとおりです。
- 希望勤務時間は具体的に:「6時間勤務」だけでなく「9時〜16時」など始業・終業の時刻を明記する
- 期間は現実的に:初回はまず1年程度で申請し、必要に応じて更新する
- 上司への事前相談を反映:特定の時間帯の出勤が必要な場合は、上司と相談のうえ記入する
5-4. 申請後の流れと注意点
申請書を提出したあとの流れは、一般的に次のとおりです。
- 書類審査:人事部が申請内容を確認
- 承認:会社から「育児短時間勤務取扱通知書」が交付される
- 業務調整:上司・同僚と業務分担を話し合う
- 勤務開始:指定日から時短勤務スタート
注意点をいくつか挙げます。申請は必ず書面で行い、記録を残しましょう。時短勤務になると担当業務の一部を引き継ぐ必要が出ることもあるので、業務引き継ぎの準備を早めに。法律上の要件を満たしているのに申請を拒否された場合は、人事部に理由を確認し、正当な理由がなければ都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。子の成長や家庭の事情で早めに終了・延長したくなった場合は、改めて人事部に相談しましょう。
6. 気になる給与と社会保険の扱い
「時短勤務にすると給料はどうなるの?」「社会保険料や年金は?」——こうした不安を持つ方も多いですよね。ここでは給与と社会保険について解説します。
6-1. 給与はどう変わる?主な3パターン
時短勤務になると、労働時間が短くなる分、給与も変わります。計算方法は会社によって異なり、主に3つのパターンがあります。
【パターン1】時間比例で減額(最も一般的)
フルタイムの労働時間を基準に、時短分を比例計算で減額します。
例:フルタイム8時間・基本給24万円 → 6時間勤務なら 24万円 × 6時間 ÷ 8時間 = 18万円
【パターン2】不足時間を控除
基本給は変えず、短縮した時間分を「時短控除」として差し引きます。
例:基本給24万円 − 控除(24万円 × 2時間 ÷ 8時間 = 6万円)= 18万円。見た目は違いますが結果は同じです。
【パターン3】基本給自体を改定
時短期間中の基本給を最初から低い額に設定し直します。賞与の計算基準も変わることがあり、年収への影響が大きくなる場合があります。
手当:通勤手当・家族手当・住宅手当などは多くの企業で満額支給ですが、会社によっては一部減額されることもあるので就業規則を確認しましょう。賞与:計算方法は企業により、時短期間中の基本給を基準に減額される場合、評価で決まる場合、時短を理由に減額しない場合などがあります。時短を理由に一律で大幅に賞与を減らすことは、不利益取扱いとして問題になる可能性があります。
6-2. 社会保険料と「養育期間標準報酬月額特例」
給与が変われば、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)も変わります。ここで重要なのが「養育期間標準報酬月額特例」です。
通常、給与が下がると社会保険料も下がり、将来の年金額も減ります。しかしこの特例を申請すると、時短勤務前の高い給与を基準に年金記録を残せるため、保険料は下がった給与に応じて安くなるのに、将来の年金額は減りません。
申請できる条件:3歳未満の子を養育している/育児休業等の終了後、時短勤務などで給与が下がった/本人が申請する(会社経由で手続き)。手続き:会社を通じて「育児休業等終了時報酬月額変更届」と「養育期間標準報酬月額特例申出書」を年金事務所または事務センターに提出します。育休から復帰して時短を開始したタイミングで提出しましょう。
この特例は知らないと損をする制度です。将来の年金額に影響しますので、自分からも「養育期間特例の申請をお願いします」と会社に伝えてください。
6-3. 【2025年4月開始】育児時短就業給付金(小3は対象外)
2025年4月から、時短勤務による収入減を補う「育児時短就業給付金」という雇用保険の給付が始まっています。
ポイントを押さえておきましょう。
- 対象:2歳未満の子を養育するために、1週間の所定労働時間を短縮して働く雇用保険の被保険者
- 支給額の原則:時短勤務中に支払われた賃金額の10%相当(賃金が時短開始時の90%以下の場合。90%超〜100%未満は支給率が段階的に調整され、賃金が減っていなければ支給なし)
- 申請:原則として会社を経由してハローワークへ。2か月ごとに申請します
注意したいのは、この給付金は「2歳未満の子」が対象という点。小学校3年生は対象外です。とはいえ、育休から復帰して時短で働き始めたばかりの家庭には心強い制度なので、下の子がいる場合などは確認しておくとよいでしょう。
支給率の詳しい計算例、上限額・下限額(毎年8月に改定)、申請期限、必要書類などは、専用記事で詳しく解説しています。あわせてどうぞ。
→ 【2025年改正】育児時短就業給付を完全解説|条件・金額・申請方法まで
※上限額・下限額などの金額は毎年8月1日に改定されます。利用時は最新額を厚生労働省・ハローワークでご確認ください。【要確認:記事公開時点の最新の支給限度額・最低限度額】
7. 時短勤務以外の選択肢も知っておこう
時短勤務は便利ですが、すべての人に合うわけではありません。給与が減ることやキャリアへの影響を考えると、別の選択肢を探したい方もいるでしょう。ここでは時短以外の働き方を紹介します。
7-1. フレックスタイム制
フレックスタイム制は、1日の労働時間は変えずに出勤・退勤時間を柔軟に調整できる制度です。「10時出勤・19時退勤」「8時出勤・17時退勤」など、送迎に合わせて調整できます。最大のメリットは、労働時間を減らさないため給与が減らないこと。フルタイムなのでキャリアへの影響も少なめです。ただし、コアタイム(必ず勤務する時間帯)が設定されている企業も多く、完全に自由なわけではありません。
7-2. 始業・終業時刻の変更
フレックスほど柔軟ではありませんが、始業・終業時刻を固定的に変更する制度もあります。9時〜18時を8時〜17時に、あるいは10時〜19時に、といった形です。1日8時間は変わらないので給与への影響はなく、保育園や学童の送迎時間に合わせたい場合に便利です。
7-3. テレワーク・在宅勤務
2025年4月の法改正で、テレワークが育児短時間勤務の代替措置として追加されました。最大のメリットは通勤時間がゼロになること。片道1時間なら1日2時間を育児・家事に充てられ、時短で2時間短縮するのと近い効果があります。しかも労働時間は減らないため給与はそのまま。子の体調不良時も、自宅で様子を見ながら働ける安心感があります。
ただし、自宅に仕事ができる環境があるか、職種的に可能か、自己管理ができるか、といった向き不向きがあります。完全在宅でなく「週に数日だけ」という形も含め、会社と相談しながら自分に合った形を探しましょう。
7-4. 【表で比較】働き方の選択肢
| 働き方 | 労働時間 | 給与への影響 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 育児短時間勤務 | 短縮(6時間程度) | 減少 | 育児に充てる時間が確実に増える。法的に認められた権利 | 収入減。キャリアへの影響が心配になることも |
| フレックスタイム制 | 変わらず | なし | 給与は変わらない。送迎時間に合わせ柔軟に調整可能 | コアタイムの制約。総労働時間は減らない |
| 始業・終業時刻変更 | 変わらず | なし | 給与は変わらない。生活リズムを整えやすい | 毎日固定なので柔軟性に欠ける |
| テレワーク・在宅勤務 | 変わらず | なし | 通勤時間ゼロ。子の体調不良時も対応しやすい | 自宅環境の整備が必要。職種によっては不可 |
最適な働き方は状況しだいです。子どもとの時間を最優先したいなら時短勤務、給与を維持しつつ柔軟に働きたいならフレックス、生活リズムを整えたいなら始業・終業時刻変更、通勤時間を削りたいならテレワーク、といった具合です。これらは組み合わせも可能で、「週3日テレワーク+週2日は時短で出社」なども会社しだいで実現できるかもしれません。2025年10月からは3歳〜就学前の子を持つ労働者に複数の選択肢を用意することが義務化されているので、これを機に自分に合った働き方を会社に提案してみてはいかがでしょうか。
8. ケース別・時短終了後によくある悩みと乗り切り方
時短勤務が終わったあと、実際にどんなことで困りやすいのか。よくあるケースと、その乗り切り方の考え方を整理します。
※本セクションは、育児と仕事の両立で一般的に起きやすい状況を、公的な制度・調査や一般的な傾向をもとに整理したものです。特定の個人の体験談ではありません。
8-1. 学童のお迎えが間に合わない
フルタイムに戻すと、18時前後の学童お迎えに間に合わなくなるのは、よくある悩みです。対処の方向性としては、始業時刻の繰上げ(例:8時30分出勤・17時30分退勤)で退勤を早める、残業免除や柔軟な働き方の措置を活用する、延長保育や地域のファミリー・サポート・センターを併用する、といった選択肢があります。前章の「働き方の選択肢」と組み合わせて考えるのがおすすめです。
8-2. 宿題や生活のサポートに手が回らない
帰宅が遅くなると、夕食・入浴・寝かしつけに追われ、宿題を見る余裕がなくなりがちです。週に1〜2日のテレワークを取り入れて在宅日に生活リズムを整える、家事の一部を家族で分担する、宿題の時間を朝にずらすなど、無理のない範囲で「詰まりやすい時間帯」をずらす工夫が有効です。
8-3. 子どもが不安定になりやすい
低学年から中学年にかけては、生活の変化に子どもが敏感に反応することがあります。低学年のうちは親の関わりが必要な場面がまだ多い、という前提で考えるとよいでしょう。関われる時間の「量」を一気に増やすのが難しくても、朝の見送りや寝る前の会話など「決まった接点」を確保するだけでも、子どもの安心感につながります。
8-4. 自分の時間がなくなる
両立に追われて自分の時間がゼロになると、長続きしません。配偶者との家事・育児の分担、地域や民間サービスの活用、会社の柔軟な制度の利用を組み合わせ、「全部を自分で完璧にやらない」前提で仕組みをつくることが、結果的に両立を続けるコツです。
これらのケースに共通するのは、小学校3年生・4年生でも、まだまだ親のサポートが必要だということ。時短終了後をどう乗り切るかは、家族全体で考えていきましょう。
9. 時短終了後のキャリアと働き方
「時短が終わったらどうしよう」「フルタイムに戻れる自信がない」——期限が近づくと不安がよぎりますよね。ここでは時短終了後のキャリアと働き方を考えます。
9-1. フルタイムに戻すタイミング
戻すタイミングは人それぞれです。次のような状況を考慮して、自分に合ったタイミングを判断しましょう。
- 子の成長段階:一人で留守番できる/学童を卒業した/身の回りのことを自分でできる
- 家庭の経済状況:教育費の負担増/住宅ローン/収入を増やす必要
- キャリアの希望:責任ある仕事に挑戦したい/昇進を目指したい/スキルアップの時間を確保したい
- サポート体制:配偶者・祖父母の協力/学童や民間サービス/会社のテレワーク・フレックス
焦って戻す必要はありませんし、逆に「もう大丈夫」と思えば早めに戻すのも選択肢です。大切なのは自分と家族にとって何が最善かを考えること。周りと比べる必要はありません。
9-2. 転職も視野に入れる選択肢
「今の会社では時短が3歳までしか使えない」「もっと柔軟に働ける環境が欲しい」と感じたら、転職も選択肢です。子の小学校入学や時短の期限が切れるタイミングで転職を決断する人は少なくありません。
転職を考えるとよいのは、会社の時短制度が3歳までで延長の見込みがない、テレワークやフレックスなど他の柔軟な制度もない、上司・同僚の理解が得られない、残業が多く両立が難しい、キャリアアップの機会が限られている、といったケースです。転職先を選ぶ際は、育児支援制度の充実度、実際の利用実績(面接で「時短勤務を利用している社員はいますか?」と確認)、職場の雰囲気、通勤時間、キャリアの可能性を重視しましょう。
9-3. 時短正社員求人の探し方
最近は「時短正社員」として働ける求人も増えています。正社員でありながら短時間勤務が可能で、賞与・昇給・社会保険などの待遇は正社員と同等の働き方です。探し方としては、ママ向け転職サイトの活用、一般の転職サイトで「時短勤務可」などの条件検索、育児中の転職に理解のあるエージェントへの相談、志望企業の採用ページの直接確認などがあります。IT・Web、人材・教育、金融・保険、医療・福祉などは時短正社員の需要が比較的高い業界です。
転職活動では、育児中であることを隠さず正直に伝えることが大切です。それを理解したうえで「ぜひ来てほしい」と言ってくれる企業こそ、あなたにとって働きやすい職場です。
10. よくある質問Q&A
10-1. 小学3年生の途中から申請できる?
A. はい、できます。子が会社の制度の対象年齢の範囲内であれば、いつでも申請できます。ただし申請から開始まで1か月程度かかることが多いので、早めに相談しましょう。
10-2. 夫婦同時に時短勤務できる?
A. はい、できます。育児短時間勤務は父親・母親どちらも利用でき、両親が同時に申請することも法律上は問題ありません。ただし会社の方針で運用が異なる場合があるので、人事部に確認しましょう。法律上認められているので、企業が一方的に拒否することはできません。
10-3. パート・契約社員でも使える?
A. 条件を満たせば使えます。正社員だけでなく、パートタイム労働者や契約社員も対象です。「日々雇用される者でないこと」「1日の所定労働時間が6時間以下でないこと」が基本条件で、労使協定により「入社後1年未満」「週の所定労働日数が2日以下」の労働者が除外される場合があります。1日7時間・週5日勤務などであれば申請できる可能性が高いので、人事部に確認してみましょう。
10-4. 時短中に残業を命じられたらどうする?
A. 子の年齢によって対応が異なります。まず、所定労働時間内であれば残業にはなりません。時短勤務時間(6時間)を超えて働くよう命じられた場合は、次のように考えます。
- 小学校就学前の子を養育している場合:「所定外労働の制限」を申し出ていれば、残業を拒否できます(2025年4月の改正で3歳未満から小学校就学前まで対象が拡大)。
- 小学校1年生以降の場合:法律上の残業免除の対象外です。ただし、会社と相談してできるだけ残業を減らしてもらう交渉はできます。
頻繁に残業を命じられて困る場合は、人事部や労働組合に相談を。改善されなければ、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にも相談できます。
11. まとめ:育児と仕事の両立に向けて
育児短時間勤務と小学校3年生というテーマを、法律・企業の実態・申請方法・給与・選択肢まで整理してきました。要点はこちらです。
- 法律上の義務は「3歳未満」まで。企業に義務づけられているのは3歳未満の子を養育する労働者への時短勤務制度です。
- 多くの企業が独自に延長。3歳以降も時短勤務を認める企業はおよそ4割前後にのぼり、小学校3年生まで対象とする企業も増えています。
- 2025年の法改正で選択肢が拡大。子の看護等休暇が小学校3年生まで延長、残業免除が小学校就学前まで拡大、短時間勤務の代替措置にテレワークが追加。さらに2025年10月からは、3歳〜就学前の子を持つ労働者に「2つ以上の柔軟な措置」を用意することが義務化されています。
- まずは自分の会社の制度を確認。就業規則をチェックし、人事部に相談すれば、実際に使える制度が分かります。
- 給与は減るが、社会保険の特例や給付金がある。養育期間標準報酬月額特例で将来の年金額を守れます。育児時短就業給付金は2歳未満が対象(小3は対象外)です。
- 時短以外の選択肢や転職も検討を。フレックス・テレワーク・始業時刻変更など、自分に合った働き方を選びましょう。
育児と仕事の両立は簡単ではありません。「もう無理かも」と思う日もあるでしょう。でも、完璧を目指す必要はありません。60点の育児と60点の仕事で、合計120点。そんな考え方でいいんです。
大切なのは、自分と家族にとって何が最善かを考え、使える制度を最大限に活用すること。会社の制度、法律の改正、地域のサポート、家族の協力、そして「できる範囲で頑張る」というあなた自身の姿勢。これらを組み合わせれば、自分らしい働き方が見つかります。
小学校3年生まで時短勤務が使えるかは、あなたの会社しだい。でも、たとえ使えなくても、他の方法はあります。この記事が、あなたの働き方を考えるきっかけになればうれしいです。
【関連記事】
【参考資料・出典】
- 厚生労働省「育児・介護休業法 改正内容(リーフレット)」
- 厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」
- 厚生労働省「雇用均等基本調査」
- 厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」



コメント