育休中の家計を計算していると、「年収がこれくらいだから、育児休業給付金は月にこれくらいかな」と、年収を12で割って考えてしまうことがあります。特に、月給とは別に夏と冬にまとまった賞与が支給される会社に勤めていると、賞与を含めた年収を基準に計算したくなります。ところが、実際に支給される育児休業給付金は、その計算よりも少なくなることが少なくありません。
結論から先にお伝えすると、育児休業給付金は、原則として休業開始前6か月間に支払われた月例賃金をもとに計算し、賞与は計算の基礎に含めません。一方で、育休中に会社から賞与が支給されるかどうかは、育児休業給付金とはまったく別の制度で、勤務先の就業規則や賞与規程によって決まります。さらに、育休中に支給された賞与の社会保険料が免除されるかどうかは、毎月の給与にかかる保険料とは異なる条件で判断されます。この3つは混同されやすいのですが、根拠となるルールがそれぞれ違います。
ただし、賞与が実際にいくら支給されるか、育休期間が査定にどう反映されるかは、勤務先の賞与規程や査定期間の設定によって大きく変わります。育休の開始日と終了日が1日違うだけで、社会保険料の免除結果が変わることもあります。また、公務員は雇用保険ではなく共済組合の制度が適用されるため、民間企業の会社員とは仕組みが異なります。
この記事では、「賞与は育児休業給付金の計算に含まれるのか」「育休中でも会社から賞与をもらえるのか」「育休中の賞与の社会保険料は免除されるのか」という3つの疑問を分けて整理します。読み終えたあとに、月給と賞与を切り分けて育休中の年間収入を見積もり、勤務先の人事・総務担当者に何を確認すればよいかが分かる状態を目指します。この記事の情報は2026年7月23日時点で公開されている公式情報をもとに整理しています。
育児休業給付金と賞与の関係を3つの結論で整理する
賞与に関する疑問は、実は制度の種類が異なる3つの話が混ざっています。最初に、それぞれの結論と根拠となる制度を整理しておきます。
3つの疑問と結論
次の表は、賞与にまつわる代表的な疑問について、結論とその根拠になる制度をまとめたものです。
| 疑問 | 結論 | 根拠になる制度 |
|---|---|---|
| 賞与は育児休業給付金の計算に含まれるか | 原則として含まれない。休業開始前6か月間の月例賃金だけで計算する | 雇用保険の育児休業給付(厚生労働省・ハローワーク) |
| 育休中でも会社から賞与をもらえるか | 会社の就業規則や賞与規程によって決まる。支給される場合もあれば、減額や不支給になる場合もある | 勤務先の就業規則、賃金規程、賞与規程(労働基準法、育児・介護休業法) |
| 賞与を受け取ると育児休業給付金は減るか | 通常の賞与であれば、原則として減額の対象にならない | 雇用保険の育児休業給付 |
| 育休中の賞与の社会保険料は免除されるか | 賞与支給月の末日を含む連続1か月を超える育休を取得している場合に免除される | 健康保険法、厚生年金保険法(日本年金機構) |
ここで押さえておきたいのは、「給付金の計算」「賞与の支給」「社会保険料の免除」は、それぞれ別の窓口が扱う別の制度だという点です。給付金はハローワーク、賞与は勤務先、社会保険料は年金事務所や健康保険組合が関係します。ひとつの答えで全部が決まるわけではありません。
育児休業給付金の基本的な仕組み
賞与の話に入る前に、育児休業給付金そのものの要点を確認しておきます。
- 管轄
厚生労働省、都道府県労働局、ハローワークが所管しています。
- 対象者
雇用保険の被保険者で、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した方が対象です。
- 主な支給要件
休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(または賃金の支払基礎となった時間数が80時間以上の月)が12か月以上あることが必要です。
- 支給額の考え方
休業開始時賃金日額×支給日数×67パーセントで計算します。育児休業開始から181日目以降は50パーセントになります。
- 申請先と申請者
原則として事業主が、事業所を管轄するハローワークへ申請します。
- 支給時期
原則として2か月ごとにまとめて申請し、支給決定後に振り込まれます。
- 公務員の場合
雇用保険の対象外で、共済組合の育児休業手当金が適用されます。
この「休業開始時賃金日額」をどう計算するかが、賞与の話とまっすぐつながります。次の見出しで詳しく確認します。
賞与は育児休業給付金の計算に含まれない
年収に占める賞与の割合が大きい方ほど、この点を知らないまま家計を計算すると、見込み額が実際と大きくずれます。まずは計算の仕組みから確認します。
計算の基礎になるのは休業開始前6か月間の月例賃金
育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額」という金額をもとに計算します。この休業開始時賃金日額は、原則として育児休業開始前6か月間に支払われた賃金の総額を180で割って求めます。産前産後休業を取得している場合は、原則として産前産後休業の開始前6か月間が対象になります。
この「賃金の総額」は、税金や社会保険料が控除される前の総支給額です。基本給だけでなく、残業代、通勤手当、役職手当、家族手当なども含まれます。一方で、厚生労働省の資料では、この賃金から臨時に支払われる賃金と、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は除くと示されています。年1回や年2回支給される賞与は、この「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に当たるため、計算の基礎から外れます。
厚生労働省の「Q&A~育児休業等給付~」でも、休業開始時賃金日額は原則として育児休業開始前6か月間の総支給額を180で割った額であり、賞与は除くと明記されています。つまり、賞与を含めた年収を12で割って給付金を計算する方法は、制度上の計算方法とは異なります。
「働いて得た収入なのに、なぜ賞与だけ外れるのか」と感じる方は少なくないと思います。理由は、育児休業給付金が雇用保険の給付であり、雇用保険の給付全般で「賃金日額」を計算するときのルールに合わせているためです。
雇用保険の賃金日額は、毎月継続的に支払われる賃金を基準にします。賞与のように支給時期や金額が変動しやすく、支払間隔が3か月を超える賃金は、日額を安定して算定する基礎になじまないという整理です。これは失業給付(基本手当)の賃金日額でも同じ考え方が取られています。
言い換えると、育児休業給付金は「年収の何割かを補填する制度」ではなく、「毎月の賃金の何割かを補填する制度」として設計されています。この違いを理解しておくと、次の計算例が読みやすくなります。
計算例1:年収460万円でも賞与は計算に入らない
ここでは、モデルケースとして次の条件で計算してみます。実際の支給額を保証するものではなく、上限額と下限額を考慮しない概算です。
| 項目 | モデルケース |
|---|---|
| 雇用形態 | 民間企業の正社員 |
| 雇用保険 | 加入 |
| 休業開始前6か月の月例賃金 | 毎月30万円 |
| 6か月間の賃金合計 | 180万円 |
| 年間賞与 | 夏50万円、冬50万円(合計100万円) |
| 年間の額面収入 | 460万円 |
| 育児休業開始日 | 2026年11月1日 |
| 育児休業期間 | 原則1年間 |
| 育休中に会社から支払われる月例賃金 | なし |
この条件で休業開始時賃金日額を計算すると、次のようになります。
- 休業開始時賃金日額の概算 180万円÷180日=1万円
- 育休開始から180日目までの1支給単位期間 1万円×30日×67パーセント=20万1,000円
- 181日目以降の1支給単位期間 1万円×30日×50パーセント=15万円
年間の賞与100万円は、この計算のどこにも登場しません。もし年収460万円を12で割った約38万3,000円を基準に67パーセントで計算すると、約25万6,000円という数字になりますが、これは制度上の計算方法ではありません。1か月あたりで5万円以上のずれが生じることになります。
実際の金額は、賃金、休業期間、勤務状況、加入状況などによって異なります。毎月の額面給与から支給額の目安を確認したい方は、なびいくの育児休業給付金計算ツールで、賞与を除いた月例給与を入力して試算してみてください。計算の考え方をもう少し詳しく知りたい方は、育児休業給付金の賃金月額計算方法もあわせてご確認ください。
賞与の割合が大きい会社ほど、年収に対する補填率は下がる
同じ年収でも、月給と賞与の配分によって育児休業給付金の額は変わります。次の表は、年収480万円という同じ条件で、賞与の有無だけを変えて比較したものです。いずれも上限額と下限額を考慮しない概算です。
| 項目 | Aさん(賞与なし) | Bさん(賞与年120万円) |
|---|---|---|
| 月例賃金 | 40万円 | 30万円 |
| 年間賞与 | なし | 120万円 |
| 年間の額面収入 | 480万円 | 480万円 |
| 休業開始時賃金日額の概算 | 約1万3,333円 | 1万円 |
| 給付率67パーセント時の1支給単位期間 | 約26万7,900円 | 20万1,000円 |
| 給付率50パーセント時の1支給単位期間 | 約20万円 | 15万円 |
月例賃金に対する補填率は、どちらも67パーセントで同じです。しかし、年収480万円という同じ土台で見ると、Aさんは年間で約321万円相当、Bさんは年間で約241万円相当となり、年収に対する割合には差が出ます。賞与の割合が大きい給与体系ほど、育休中の収入減少幅が大きくなりやすい、という点は事前に把握しておきたいところです。
この差は、育休を夫婦のどちらがいつから取るかを検討するときの判断材料にもなります。ただし、どちらが有利かは、勤務先の賞与規程、育休中の賞与の扱い、保育園の入園時期など複数の要素で変わるため、金額だけで決めることはおすすめしません。
支給額には上限と下限がある
育児休業給付金には、支給額の上限と下限が設定されています。この金額は毎月勤労統計の平均定期給与額の増減などをもとに、原則として毎年8月1日に見直されます。
2025年8月1日から2026年7月31日までの期間に適用されている金額は、次のとおりです。
| 項目 | 金額(2025年8月1日以降) |
|---|---|
| 休業開始時賃金日額の上限額 | 1万6,110円 |
| 賃金月額の上限額(日額×30日) | 48万3,300円 |
| 賃金月額の下限額 | 9万420円 |
| 給付率67パーセント時の支給上限額(月額) | 32万3,811円 |
| 給付率50パーセント時の支給上限額(月額) | 24万1,650円 |
この上限額があるため、月例賃金が高い方ほど、実際の補填率は67パーセントより下がることになります。なお、この金額は2026年8月1日以降に改定される予定です。育休の開始時期が2026年8月以降になる方は、申請時点の最新の金額を厚生労働省の公式情報またはハローワークで確認してください。年収別の受給額の目安については、育児休業給付金の上限額はいくら?年収別の受給額で整理しています。
育休中でも会社から賞与が支給されることはある
「育休中は給与が出ないのだから、賞与も当然出ないはずだ」と考える方がいる一方で、「在籍しているのだから満額もらえるはずだ」と考える方もいます。どちらも一律には言えません。賞与の支給可否は、法律ではなく会社の規程で決まる部分が大きいためです。
賞与の支給を法律が義務づけているわけではない
労働基準法には、賞与を支給しなければならないという定めはありません。賞与は、支給するかどうか、どのような基準で計算するかを含めて、会社の就業規則や賃金規程、賞与規程で定めるものです。したがって、育休中の賞与の扱いを知りたいときに、まず確認すべきなのは法律ではなく勤務先の規程ということになります。
確認しておきたい主な規定は次のとおりです。
- 賞与の支給根拠
そもそも賞与制度があるか、業績連動型か固定額かを確認します。
- 査定期間(算定対象期間)
どの期間の勤務実績をもとに賞与を計算するかを確認します。夏季賞与は前年10月から3月、冬季賞与は4月から9月といった設定が一般的ですが、会社によって異なります。
- 支給日在籍要件
賞与支給日に在籍していることを支給条件としているかを確認します。育休中は在籍しているため、この要件自体は通常満たします。
- 出勤率や勤務日数の扱い
育休期間を出勤日数にどう反映するか、日割り計算をするかを確認します。
- 減額または不支給の基準
どのような場合に減額や不支給になるかを確認します。
会社によっては、育休期間を査定対象から日割りで除外したうえで、実際に勤務した期間分だけ賞与を支給する仕組みになっています。この場合、査定期間の一部だけ育休を取得したのであれば、減額されたうえで賞与が支給される可能性があります。
育休中に賞与を受け取っても育児休業給付金は減額されない
賞与が支給されると聞いて、「その分だけ育児休業給付金が減らされるのではないか」と心配になる方がいます。ここも制度を分けて考える必要があります。
育児休業給付金には、育休期間中に会社から賃金が支払われた場合の調整ルールがあります。支給単位期間に会社から支払われた賃金が、休業開始時賃金日額×支給日数の80パーセント以上である場合は、その支給単位期間の育児休業給付金は支給されません。80パーセントに満たない場合でも、支払われた賃金の額に応じて支給額が調整される場合があります。
ただし、この判定に用いる「賃金」も、休業開始時賃金日額を計算するときと同様に、臨時に支払われる賃金と3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いて考えるのが原則です。年1回や年2回の通常の賞与は、この除外対象に当たります。そのため、育休中に賞与が支給されても、原則として育児休業給付金が減額されたり支給停止になったりすることはありません。
注意したいのは、名称が「賞与」であっても、実態として毎月または3か月以内の間隔で支払われている手当は、扱いが変わる可能性がある点です。また、会社独自の育児支援金や育休手当など、休業期間を対象として支払われる金銭がある場合は、育児休業給付金上の賃金として扱われることがあります。この点は、勤務先の担当部署または管轄のハローワークへ確認してください。
計算例2:育休中に冬季賞与が支給されるケース
次のモデルケースで、賞与が支給された場合に何がどうなるのかを整理します。
- 月例賃金
30万円
- 冬季賞与
50万円
- 賞与支給日
2026年12月10日
- 育児休業期間
2026年11月1日から2027年10月30日まで
- 会社の賞与規程
査定期間中の勤務実績に応じて支給
- 育休中の月例給与
なし
このケースで確認できることを整理すると、次のようになります。
- 賞与が支給される可能性はある
育休中でも在籍しているため、賞与規程の条件を満たせば支給されることがあります。
- 賞与の支給と給付金の支給は別の制度
賞与が出るかどうかは会社が判断し、給付金が出るかどうかはハローワークが判断します。
- 通常の賞与は給付金の額に加算されない
賞与を受け取っても、原則として育児休業給付金の支給額は変わりません。
- 査定期間に育休が含まれれば減額の可能性がある
この例では査定期間の一部が育休期間に重なるため、会社規程に基づいて減額される可能性があります。
- 社会保険料が免除される可能性がある
2026年12月末日を含んで1か月を超える育休を取得しているため、賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料が免除される要件を満たす可能性があります。
実際の適用は、会社が年金事務所または健康保険組合へ届出を行っているかどうかも含めて確認が必要です。賞与明細が発行されたら、保険料が控除されているかどうかを必ず確認してください。
育休を理由とする賞与の減額はどこまで認められるか
育休を取ることでボーナスが減るのではないか、あるいは全額カットされるのではないかという不安は、育休取得をためらう理由のひとつになりやすい部分です。ここでは、公式情報と裁判例をもとに考え方を整理します。
休業した期間分の日割り控除は不利益取扱いに当たらない
育児・介護休業法は、育児休業の申出や取得を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めています。では、育休期間分だけ賞与が減ることも不利益取扱いに当たるのでしょうか。
この点について、厚生労働省の指針では、退職金や賞与の算定にあたって現に勤務した日数を考慮する場合に、休業した期間を日割りで算定対象期間から控除することは、不利益な取扱いには該当しないと整理されています。働いていない期間について賃金の支払義務が生じないという考え方(ノーワーク・ノーペイの原則)に沿った扱いです。
つまり、査定期間6か月のうち3か月を育休で休んだ場合に、その3か月分に相当する部分を賞与の算定から除くこと自体は、制度上ただちに問題とはされていません。
休業期間を超える減額や全額不支給は問題になり得る
一方で、休業した期間を超えて不利益に取り扱うことは、別の評価になります。参考になる裁判例として、東朋学園事件(最高裁 平成15年12月4日判決)があります。
この事件では、賞与の支給要件として査定期間の出勤率90パーセント以上という条項が定められており、産前産後休業と育児のための短時間勤務によって出勤率が90パーセントを下回った職員が、2回にわたって賞与を全額受け取れませんでした。最高裁は、こうした取扱いが産前産後休業などの権利行使を抑制し、権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとして、公序に反し無効であると判断しています。
その後の差戻控訴審(東京高裁 平成18年4月19日判決)では、実際に休業した日数に相当する期間に応じて賞与を減額することは認められ、その減額後の賞与の支払いが命じられました。
ここから読み取れる整理は、次のとおりです。
| 会社の取扱い | 考え方 |
|---|---|
| 育休期間を日割りで算定対象から控除し、勤務した期間分の賞与を支給する | 指針上、不利益な取扱いには該当しないとされている |
| 出勤率要件などにより、育休を取得したことで賞与を全額不支給とする | 裁判例では、権利行使を抑制するものとして無効と判断された例がある |
| 実際に休業した期間を超えて、重ねて減額する | 不利益な取扱いに当たると判断される可能性がある |
ただし、個別の事案が違法かどうかは、規程の内容、査定基準、減額の程度などを総合して判断されます。この記事は法律の専門家による判断を示すものではありません。判断に迷う場合は、次の見出しで紹介する相談先をご利用ください。
賞与減額の比較例
考え方を具体的にするため、次の条件で整理してみます。
- 賞与の査定対象期間
2026年4月1日から2026年9月30日まで
- 育児休業期間
2026年7月1日から2026年9月30日まで
- 通常の賞与額
60万円
- 会社の規程
査定期間中に実際に勤務した日数に応じて日割り計算する
このケースでは、査定期間6か月のうち3か月が育休期間です。会社の規程に従い、勤務した期間に応じて賞与を計算すること自体は、指針上の考え方に沿った扱いです。一方で、育休を取得したことのみを理由に、査定期間中に勤務した3か月分まで含めて賞与をゼロにする扱いは、休業期間を超えた不利益として問題になる可能性があります。
なお、実際の支給額は、会社ごとの営業日数、査定基準、評価制度によって変わります。査定期間の半分を休んだからといって、必ず賞与が半額になるとは限りません。基本給部分と評価部分に分けて計算する会社もあれば、勤務日数だけで按分する会社もあります。金額の根拠は、勤務先に説明を求めるのが確実です。
説明に納得できないときの相談先
賞与の算定根拠が示されない、あるいは説明を聞いても休業期間を超える減額に見えるという場合は、まず勤務先へ算定根拠の説明を求めてください。それでも解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部または雇用環境・均等室が相談窓口になります。育児・介護休業法に関する相談を受け付けている窓口です。
相談する前に、就業規則や賞与規程の該当箇所、賞与明細、育休の開始日と終了日が分かる書類を手元にそろえておくと、話が進めやすくなります。
育休中の賞与にかかる社会保険料は免除されるのか
3つ目の疑問が、賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料の扱いです。ここは、毎月の給与にかかる保険料の免除条件と混同されやすい部分なので、分けて確認します。
毎月の保険料と賞与の保険料では免除の条件が違う
育児休業等期間中の社会保険料免除は、2022年10月1日から要件が改正されています。改正後のルールを整理すると、次のとおりです。
| 対象 | 免除の要件 |
|---|---|
| 毎月の保険料(標準報酬月額にかかる保険料) | 育児休業等を開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月まで。これに加えて、育児休業等を開始した日の属する月内に14日以上の育児休業等を取得した場合も、その月の月額保険料が免除される |
| 賞与にかかる保険料(標準賞与額にかかる保険料) | 賞与を支払った月の末日を含んだ、連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に免除される |
賞与の保険料については、月末時点で育休中であるだけでは足りず、連続した1か月を超える育休が必要という点が重要です。この1か月を超えるかどうかは暦日で判断し、土日などの休日も期間に含めて数えます。連続する2以上の育児休業等を取得している場合は、ひとつの育児休業等とみなして判定されます。
なお、育休開始前に支給された賞与であっても、その賞与を支払った月の末日を含んで連続1か月を超える育休を取得していれば、免除の対象になります。免除の判定基準は「支給日に育休中かどうか」ではなく「支給月の末日を含む育休期間の長さ」である点を押さえておいてください。
育休中の社会保険料免除の全体像については、育休中の社会保険料免除で詳しく整理しています。免除される保険料の目安を確認したい方は、社会保険料免除額シミュレーターもご利用ください。
計算例3:短期の産後パパ育休では賞与の保険料が免除されないケース
産後パパ育休(出生時育児休業)を取得する場合、期間が短くなりやすいため、賞与の保険料免除の要件を満たさないことがあります。次のモデルケースで確認します。
- 冬季賞与
50万円
- 賞与支給日
2026年12月10日
- 産後パパ育休の期間
2026年12月20日から2027年1月15日まで
- 育休期間の長さ
連続1か月以下
- 賞与支給月
2026年12月
- 月末時点
育休中
このケースでは、2026年12月31日の時点で育休中であるため、12月分の月額保険料は免除の対象になります。しかし、育休期間が連続1か月を超えていないため、12月に支給された賞与にかかる保険料は免除されません。「月末に育休中なら賞与の保険料も免除される」と考えていると、賞与明細を見て想定外の控除に気づくことになります。
また、産後パパ育休を14日以上取得すれば月額保険料の免除要件を満たす場合がありますが、それだけで賞与の保険料まで免除されるわけではありません。日数の数え方や分割取得した場合の通算の扱いは判断が細かいため、勤務先または年金事務所へ確認してください。自分の育休期間が1か月を超えるかどうかを整理したい場合は、育休期間計算ツールで開始日と終了日を確認しておくと分かりやすくなります。
社会保険料が免除されても所得税や雇用保険料はかかる
賞与にかかる社会保険料が免除された場合でも、すべての控除がなくなるわけではありません。免除の対象は健康保険料と厚生年金保険料です。
- 所得税
賞与は課税対象の給与所得です。育休中に支給された賞与についても、通常どおり源泉徴収されます。
- 住民税
前年の所得をもとに課税されるため、育休中も納付が必要です。給与から天引きできない場合の徴収方法は、勤務先によって扱いが異なります。
- 雇用保険料
賞与も雇用保険料の対象になります。社会保険料が免除されても、雇用保険料は控除されます。
手取り額を見積もるときは、この点を織り込んでおくと想定とのずれが小さくなります。育児休業給付金そのものは非課税で、所得税や住民税の対象になりません。この違いも、家計を計算するときに混同しやすい部分です。
月給と賞与を分けて育休中の年間収入を計算する手順
ここまでの内容を、実際の家計の計算に落とし込みます。年収をひとまとめにせず、月給部分と賞与部分を分けて計算するのが基本です。
計算の手順
- 直近6か月分の給与明細を用意し、賞与を除いた総支給額(税金や社会保険料が引かれる前の金額)を合計します。
- 合計額を180で割り、休業開始時賃金日額の目安を出します。
- 育休開始から180日目までは67パーセント、181日目以降は50パーセントを掛けて、1か月あたりの給付金の目安を出します。
- 上限額と下限額に当たっていないかを確認します。
- 育休期間中に何回の賞与支給日があるかを、会社の支給時期に照らして数えます。
- それぞれの賞与について、査定期間のうち何割が育休期間と重なるかを整理し、減額される可能性を織り込みます。
- 賞与支給月の末日を含む連続1か月超の育休になっているかを確認し、社会保険料免除の可能性を判断します。
- 月給部分の給付金と、賞与部分の見込み額を合算して、育休期間中の年間収入を見積もります。
この計算はあくまで概算です。実際の金額は、賃金、休業期間、勤務状況、加入状況、会社の賞与規程などによって異なります。産休から育休までの期間と金額をまとめて確認したい場合は、産休育休自動計算ツールもあわせてご利用ください。
賞与が出ない前提でも家計が回るか確認しておく
賞与は、会社の業績や個人評価によって変動します。育休中に必ず支給されるとは限らず、査定期間の全期間が育休と重なる場合は支給されないこともあります。
そのため、家計の計画を立てるときは、賞与が支給されるケースと支給されないケースの両方を見ておくと安心です。特に、育休を1年間取得する場合は、査定期間の大半が育休と重なる賞与が出てくる可能性があります。賞与を前提に固定費を組んでいる家庭では、育休前に見直しておく余地があるかもしれません。
2人目以降の育休を検討している方は、1人目の育休期間が給付金の計算に影響する場合があります。詳しくは2人目育児休業給付金の計算方法で整理しています。産休・育休の制度全体を確認したい方は、産休・育休の制度まとめもご覧ください。
勤務先へ確認しておきたいことと公式窓口
ここまで整理してきたとおり、賞与に関する結論の多くは、勤務先の規程と育休の日程によって変わります。最後に、確認しておきたい項目と窓口をまとめます。
人事・総務担当者へ確認する項目
賞与と育休の関係について、勤務先へ確認しておきたい内容は次のとおりです。
- 賞与の査定期間
育休期間がどの賞与の査定に影響するかを把握するために確認します。
- 賞与の支給日と支給回数
育休期間中に何回の支給機会があるかを数えるために確認します。
- 支給日在籍要件の有無
支給条件を満たすかどうかを確認します。
- 育休期間の算定方法
日割り計算か、出勤率での判定かを確認します。
- 減額または不支給になる条件
想定される支給額の幅を把握するために確認します。
- 育休中に会社から支払われる金銭の有無
育児休業給付金の調整対象になるかを確認します。
- 社会保険料免除の届出状況
賞与にかかる保険料が免除されるかを確認します。
- 育休の開始日と終了日
連続1か月を超えるかどうかを判定するために確認します。
聞きにくいと感じる場合は、「育休中の家計を計算したいので、賞与規程の該当部分を確認させてください」といった形で、規程の確認としてお願いすると話が切り出しやすくなります。賞与の金額そのものではなく、計算ルールを確認するという聞き方であれば、担当者も回答しやすいはずです。
公務員は制度が異なる
この記事で扱ってきた育児休業給付金は、雇用保険の被保険者を対象とする制度です。国家公務員や地方公務員は原則として雇用保険の適用対象外で、共済組合の育児休業手当金が支給されます。期末手当や勤勉手当の扱い、育休期間の反映方法についても、それぞれの法令や条例、規則で定められています。
公務員の方は、所属する共済組合と人事担当部署へ確認してください。民間企業の会社員向けの解説記事をそのまま当てはめると、条件が異なる場合があります。
申請前に公式窓口でも確認してください
制度の内容や金額は改正されることがあります。特に育児休業給付金の上限額と下限額は原則として毎年8月1日に見直されるため、育休の開始時期によって適用される金額が変わります。
- 勤務先の人事部または総務部
就業規則、賞与規程、査定期間、社会保険料免除の届出状況を確認します。
- 勤務先を管轄するハローワーク
育児休業給付金の支給要件、支給額、育休中に支払われた金銭の取扱いを確認します。
- 日本年金機構または年金事務所
厚生年金保険料の免除要件と、育休期間の数え方を確認します。
- 勤務先が加入する健康保険組合
健康保険料の免除の適用状況を確認します。
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部または雇用環境・均等室
育休取得を理由とする不利益取扱いに関する相談ができます。
公式情報は、次のページで確認できます。
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- 厚生労働省「育児休業制度特設サイト」内の質問と回答
- 厚生労働省「賃金、賞与の支払い」に関する判例解説
- 日本年金機構「育児休業等期間中の社会保険料免除」
- 日本年金機構「育児休業等期間中における社会保険料の免除要件の改正」
- 厚生労働省「産休・育休中の経済的支援 かんたん試算ツール」
なびいくの計算ツールは、産休・育休・子育て計算ツール一覧からまとめて確認できます。計算結果は概算であり、実際の育児休業給付金、賞与、社会保険料免除の適用を保証するものではありません。最終的な金額は、勤務先および公的窓口でご確認ください。
この記事を書いた理由
著者 – かやパパ
この記事は、子育て中の父親として実際に経験したことと、厚生労働省や日本年金機構などの公的機関が公開している情報を確認したうえで執筆しています。私自身は社会保険労務士などの資格を持つ専門家ではないため、制度の解釈を断定するのではなく、公式情報で確認できる内容と、勤務先へ確認が必要な内容を分けて整理することを心がけました。
現在は長女を育てながら、2026年10月に予定している第2子の誕生に向けて準備を進めています。出産後の家計を考えるなかで、育児休業給付金と賞与の関係を調べたのですが、公式情報を読んでも「賞与が計算に含まれるのか」「育休中に賞与が出るのか」「賞与の保険料が免除されるのか」という3つの話が別々のページに分かれていて、全体像がつかみにくいと感じました。なびいくでは、育児休業給付金の計算方法や上限額、社会保険料免除について調べて記事にまとめ、計算ツールも運営してきましたが、賞与に関する疑問は特に整理されにくい部分だと考えています。
同じように育休中の収入を計算しているパパ・ママが、月給と賞与を分けて考えられるようになり、勤務先へ何を確認すればよいか判断できるようにしたいと考えて、この記事を執筆しました。この記事の情報は2026年7月23日時点のものです。制度は改正されることがあるため、実際に手続きを進める際は最新の公式情報をあわせてご確認ください。



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