【結論】自営業者は育児休業給付金をもらえない
結論からお伝えすると、自営業・フリーランス・個人事業主の方は、育児休業給付金を受け取ることができません。
「え、会社員の友人は何十万円ももらっているのに…」と、不公平に感じる気持ちはよく分かります。でも、残念ながらこれは制度の仕組み上、どうしようもない部分なんです。
ただし、ここで諦める必要はありません。この記事では、なぜ自営業者が対象外なのかを説明した上で、自営業者でも使える5つの代替支援制度と、育休中の収入を守る具体的な方法をお伝えします。
育児休業給付金は「雇用保険」の制度
育児休業給付金は、厚生労働省が管轄する「雇用保険」から支給される給付金です。
雇用保険とは、会社に雇われている労働者(被雇用者)が失業したときや、育児・介護で休業するときに生活を支えるための保険制度。つまり、「雇われている人」を対象とした制度なんですね。
【育児休業給付金の受給条件(2026年2月時点)】
- 雇用保険に加入していること
- 育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
- 育児休業期間中の就業日数が月10日以下であること
- 育児休業期間中に支払われる賃金が、休業開始前の80%未満であること
この「雇用保険に加入していること」という条件が、自営業者にとっての壁になります。
自営業・フリーランスが対象外になる理由
自営業者やフリーランスは、誰かに雇われているわけではありません。自分で事業を営んでいるため、雇用保険に加入する資格がそもそもないのです。
「国民健康保険」や「国民年金」に加入している方は、基本的に雇用保険には入れません。たとえ法人化していても、代表取締役は「労働者」ではないため、同様に雇用保険の対象外となります。
【ここがポイント】
育児休業給付金がもらえないのは、「自営業者だから」というより、「雇用保険に入れないから」です。逆に言えば、何らかの形で雇用保険に加入できていれば、自営業者でも受給できる可能性があります(詳しくは次の章で解説します)。
会社員の方が育児休業給付金について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
あわせて読みたい:〖2026年最新版〗育児休業給付金の受給条件を完全解説|雇用保険・勤務期間・パートの条件チェックリスト付き
「自営業」と思っていても受給できるケース
「私は自営業だから無理…」と思っている方、ちょっと待ってください。
実は、自分では「自営業」だと思っていても、法律上は「労働者」として扱われるケースがあります。そういった場合は、雇用保険に加入できる=育児休業給付金を受け取れる可能性があるんです。
業務委託でも「雇用保険加入」なら対象になる
「業務委託契約」で働いている方の中には、実態として雇用関係に近い働き方をしている人がいます。
例えば、以下のようなケースです。
- 特定の会社からの仕事が収入の大部分を占めている
- 勤務時間や場所が指定されている
- 仕事の進め方について細かい指示を受けている
- 報酬が「時給」や「月給」のように計算されている
このような場合、契約書上は「業務委託」でも、労働基準法上は「労働者」と判断される可能性があります。これを「偽装請負」と呼びます。
もし心当たりがある方は、一度ハローワークや労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。「実は雇用保険に加入できた」というケースは、意外と少なくありません。
副業で雇用保険に入っている場合
自営業がメインでも、副業でパートやアルバイトをしていて雇用保険に加入している場合は、その雇用先で育児休業を取得すれば給付金を受け取れる可能性があります。
ただし、いくつか条件があります。
【副業先で育児休業給付金を受け取る条件】
- 副業先で雇用保険に加入していること(週20時間以上勤務が目安)
- 育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が12ヶ月以上あること
- 育児休業後も副業先に復帰する予定があること
注意点として、給付金の金額は「副業先の給与」をベースに計算されます。本業の自営業収入は計算に含まれません。そのため、副業の給与が低い場合は、給付金も少額になります。
また、育児休業中も自営業の仕事を続けることは可能ですが、副業先での就業は制限されます。この点は事前にハローワークに確認しておきましょう。
配偶者が会社員なら世帯全体で対策可能
自分自身が自営業でも、配偶者が会社員として雇用保険に加入している場合は、世帯全体で見れば育児休業給付金を受け取ることができます。
「自分がもらえないなら、パートナーに育休を取ってもらう」という選択肢です。
2022年10月に始まった「出生時育児休業(産後パパ育休)」制度により、男性も育休を取りやすくなりました。特に、2025年4月からは育児休業給付金が手取り10割相当に引き上げられ、経済的な不安が軽減されています。
この「世帯最適化」戦略については、後ほど詳しく解説します。
あわせて読みたい:男性の育児休業給付金完全ガイド|受給条件・手取り10割の新制度・計算方法を徹底解説〖2026年最新版〗
自営業者が使える5つの代替支援制度
育児休業給付金がもらえなくても、自営業者が使える支援制度は意外とあります。「知らなかった」で損をしないよう、ここで5つの制度を紹介します。
①国民年金保険料の産前産後免除
これは自営業者にとって最も確実に使える制度です。
2019年4月から始まった制度で、出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヶ月間、国民年金保険料が免除されます。
【国民年金保険料の産前産後免除】
- 免除期間:出産予定月の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合は3ヶ月前から6ヶ月間)
- 免除金額:月額16,980円×4ヶ月=約6万8,000円(2026年度の保険料で計算)
- 申請先:お住まいの市区町村の国民年金窓口
- 申請時期:出産予定日の6ヶ月前から届出可能
重要なポイントは、免除されても年金の受給額は減らないということ。保険料を納めた期間として扱われるため、将来の年金額に影響しません。
この制度は所得制限がなく、届出するだけで誰でも利用できます。自営業者なら必ず申請しておきましょう。
②国民健康保険料の減額・免除
国民健康保険料についても、出産や育児で収入が減った場合に減額・免除を受けられる可能性があります。
ただし、国民健康保険は市区町村ごとに運営されているため、減額・免除の条件は自治体によって異なります。
一般的には、以下のようなケースで減額や免除が認められることが多いです。
- 前年より所得が大幅に減少した場合
- 災害や病気などで収入が途絶えた場合
- 失業や廃業した場合
出産・育児による収入減少が認められるかどうかは、お住まいの市区町村に直接確認してください。「ダメ元で聞いてみたら減額してもらえた」という声もあります。
③出産育児一時金(50万円)
出産育児一時金は、自営業者でも会社員でも関係なく、全員がもらえる制度です。
健康保険(国民健康保険を含む)に加入していれば、出産時に一児につき50万円が支給されます。双子なら100万円です。
【出産育児一時金のポイント】
- 金額:50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は48.8万円)
- 直接支払制度:多くの医療機関で、病院への直接支払いが可能。窓口での支払いを大幅に抑えられる
- 差額の受け取り:出産費用が50万円未満だった場合、差額を受け取れる
出産育児一時金は育児休業給付金とは別の制度なので、自営業者でも確実に受け取れます。これだけでも大きな支援になりますよね。
④自治体独自の出産・育児支援金
国の制度とは別に、多くの自治体が独自の出産・育児支援制度を設けています。
例えば、以下のような支援があります。
- 出産祝い金:出産時に数万円〜数十万円を支給(自治体によって金額は大きく異なる)
- チャイルドシート購入補助:購入費用の一部を補助
- おむつ・ミルクの現物支給:赤ちゃん用品を無料で配布
- 産後ケア事業:助産師によるサポートを低価格で受けられる
- ファミリーサポート利用補助:一時預かりなどの利用料を補助
これらは「申請しないともらえない」ものがほとんどです。お住まいの自治体のホームページで「出産 支援」「子育て 助成」などで検索するか、市区町村の子育て支援課に問い合わせてみてください。
⑤小規模企業共済の貸付制度
自営業者やフリーランスで小規模企業共済に加入している方は、共済の貸付制度を利用できます。
小規模企業共済は、自営業者の「退職金代わり」として積み立てる制度。掛金の範囲内で低金利の貸付を受けられるため、育休中の資金繰りに活用できます。
【小規模企業共済の貸付制度】
- 貸付限度額:掛金の納付月数に応じて、掛金の7〜9割程度
- 金利:年0.9%〜1.5%程度(貸付の種類による)
- 返済期間:借入金額に応じて6ヶ月〜60ヶ月
すでに小規模企業共済に加入している方は、出産前に貸付の条件を確認しておくと安心です。まだ加入していない方も、今後の備えとして検討してみてください。
育休中の収入ゼロを回避する現実的なマネープラン
育児休業給付金がもらえない自営業者にとって、最大の不安は「収入がゼロになること」ですよね。
ここでは、育休前にできる備えと、育休中でも続けられる働き方について解説します。
事前にできる3つの備え
【備え①】生活費の6ヶ月分を貯蓄する
出産後は最低でも3〜6ヶ月間、以前と同じペースで仕事をするのは難しくなります。この期間を乗り越えるための生活費を、事前に貯蓄しておきましょう。
目安は「生活費×6ヶ月分」です。住宅ローンや家賃、光熱費、食費、保険料など、毎月の固定費を洗い出し、必要な金額を計算してみてください。
【備え②】確定申告で使える経費を見直す
自営業者の強みは、事業に関連する支出を経費として計上できること。出産後に必要になるものを、事業経費として計上できないか検討しましょう。
例えば、在宅ワーク中心の方なら、以下のようなものが経費になる可能性があります(実際に事業に使用していることが前提です)。
- 自宅の家賃・光熱費の一部(家事按分)
- パソコンやソフトウェア
- 通信費(インターネット、電話)
- 書籍や資料代
経費を適切に計上することで、所得税や住民税、国民健康保険料を抑えられます。
【備え③】青色申告の活用
青色申告をしている方は、以下のメリットを最大限活用しましょう。
- 青色申告特別控除:最大65万円の所得控除
- 純損失の繰越控除:赤字が出た年の損失を、翌年以降3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費計上:専従者給与として経費にできる
育休で収入が減った年に赤字になっても、翌年以降の黒字と相殺できるため、長期的な節税効果があります。
育休中でも続けられる働き方の工夫
自営業者の場合、会社員のように「育休中は完全に仕事を休む」必要はありません。体調と相談しながら、無理のない範囲で仕事を続けることも選択肢の一つです。
【工夫①】ストック型の収入源を育てる
「働いた時間=収入」というフロー型ではなく、一度作ったものが継続的に収益を生む「ストック型」の収入源を持っておくと、育休中も安心です。
- ブログやYouTubeからの広告収入
- 電子書籍やオンライン教材の販売
- ストックフォト(写真・イラストの販売)
- 月額課金型のサービス
【工夫②】外注化・仕組み化を進める
自分がいなくても事業が回るよう、出産前に業務の外注化や仕組み化を進めておきましょう。
- 定型業務はマニュアル化して外注
- 経理・事務作業をクラウドサービスで自動化
- 顧客対応の一部をアシスタントに委託
【工夫③】産後の働き方をクライアントに事前共有
出産後は対応が遅くなったり、急な予定変更が発生したりすることがあります。信頼関係のあるクライアントには、事前に状況を伝えておくと安心です。
「出産後は〇月まで稼働を減らします」「レスポンスが遅くなる可能性があります」と伝えておくことで、お互いにストレスなく仕事を続けられます。
配偶者が会社員の場合の「世帯最適化」戦略
自分が自営業でも、配偶者(パートナー)が会社員なら、世帯全体で育児休業給付金を受け取る方法があります。
「自分がもらえないから諦める」のではなく、「パートナーに育休を取ってもらう」という発想の転換です。
パートナーに育休を取ってもらう選択肢
配偶者が会社員で雇用保険に加入していれば、育児休業を取得して育児休業給付金を受け取れます。
「男性が育休を取るのは難しいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、2022年4月の法改正により、企業は従業員に対して育休取得の意向確認が義務化されました。男性の育休取得率も年々上昇しています。
【世帯最適化のメリット】
- 自営業者の自分は仕事を継続しながら、世帯として育休給付を受け取れる
- パートナーの育休中は、家事・育児を分担できる
- パートナーが育児に参加することで、産後の負担が軽減される
- 2025年4月以降は給付金が手取り10割相当になり、収入減少の影響が小さい
出生時育児休業(産後パパ育休)の活用
2022年10月に創設された「出生時育児休業(産後パパ育休)」は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間の休業を取得できる制度です。
通常の育児休業とは別に取得できるため、「産後パパ育休+通常の育休」を組み合わせて、柔軟な休業計画を立てられます。
【出生時育児休業(産後パパ育休)の特徴】
- 期間:子の出生後8週間以内に最大4週間(28日間)
- 分割取得:2回まで分割可能
- 就業:労使協定があれば、休業中に一定の就業も可能
- 給付金:出生時育児休業給付金として、休業開始時賃金の67%が支給(2025年4月以降は条件を満たせば80%)
例えば、こんな活用方法があります。
- 出産直後の2週間:産後パパ育休を取得してサポート
- 産後1ヶ月目:自営業の自分が仕事を調整しながら育児
- 産後2〜3ヶ月目:パートナーが通常の育休を取得
このように、夫婦で育休を「リレー方式」で取得することで、長期間にわたって育児サポートを受けながら、どちらかが収入を得続けることができます。
あわせて読みたい:出生時育児休業給付金と育児休業給付金の違いを徹底解説!申請方法から支給額まで完全ガイド
よくある質問(FAQ)
Q1. 自営業でも雇用保険に任意加入できませんか?
残念ながら、自営業者が雇用保険に任意加入することはできません。雇用保険は「雇用されている労働者」を対象とした制度であり、自営業者は制度の対象外です。
ただし、法人化して自分を「役員」ではなく「従業員」として雇用する形態を取れば、理論上は雇用保険に加入できる可能性があります。しかし、これは実態として「労働者」と認められるかどうかの問題があり、簡単ではありません。
Q2. フリーランスの育休支援制度は今後できる予定はありますか?
2024年時点で、政府はフリーランス・自営業者向けの育休支援制度について検討を進めています。しかし、2026年2月現在、具体的な制度化には至っていません。
今後の動向に注目しつつも、現時点では既存の代替制度を最大限活用することをおすすめします。
Q3. 自営業の妻が出産する場合、会社員の夫が育休を取って給付金をもらうことはできますか?
はい、可能です。夫が雇用保険に加入していれば、妻の就業形態に関係なく、夫は育児休業を取得して育児休業給付金を受け取れます。
むしろ、妻が自営業で育休給付を受けられない場合、夫が積極的に育休を取得して世帯全体の収入減少を抑える戦略は非常に有効です。
Q4. 自営業で収入がある状態で、配偶者の扶養に入れますか?
配偶者が会社員の場合、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であれば、健康保険の被扶養者になれる可能性があります。
ただし、自営業の場合は「収入」から「必要経費」を引いた「所得」で判断されることが多いです。詳しい条件は配偶者の健康保険組合に確認してください。
扶養に入れれば、国民健康保険料や国民年金保険料(第3号被保険者になれば)を節約できます。
Q5. 育児休業給付金がもらえない場合、失業手当はもらえますか?
自営業者は雇用保険に加入していないため、失業手当(基本手当)も受け取ることができません。
ただし、過去に会社員として働いていて、退職後に自営業を始めた方は、一定の条件を満たせば失業手当を受け取れる場合があります。詳しくはハローワークに相談してください。
あわせて読みたい:育児休業給付金がもらえない場合の失業手当はどうなる?条件と手続きを徹底解説
まとめ:自営業でも育児と収入は両立できる
この記事では、「育児休業給付金は自営業でももらえるのか?」という疑問にお答えしてきました。
結論として、自営業者・フリーランス・個人事業主は、雇用保険に加入していないため、育児休業給付金を受け取ることはできません。
しかし、諦める必要はありません。以下の方法で、育休中の経済的な不安を軽減できます。
【この記事のポイント】
- 「自営業」と思っていても受給できるケースがある:業務委託の実態確認、副業での雇用保険加入をチェック
- 自営業者が使える5つの代替支援制度:国民年金の産前産後免除、出産育児一時金など
- 事前の備えが重要:生活費の貯蓄、経費の見直し、ストック型収入の構築
- 配偶者が会社員なら世帯最適化:パートナーに育休を取ってもらう選択肢
自営業だからといって、育児と仕事の両立を諦める必要はありません。使える制度は最大限活用し、事前の準備をしっかり行うことで、安心して出産・育児に臨めます。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげる参考になれば幸いです。
制度の詳細や最新情報については、ハローワークやお住まいの市区町村窓口に直接確認することをおすすめします。状況によっては、思わぬ支援制度が見つかるかもしれません。
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