育休中に退職したら給付金どうなる?【結論:4パターンで変わる】
「育休中だけど退職しようかな…でも給付金はどうなるの?返金しなきゃいけないの?」
そんな不安を抱えてこのページを開いているあなたへ、まず一番伝えたいことがあります。
ただし、「いつ退職を決めたか」と「退職日をいつに設定するか」の2点で、受け取れる金額が大きく変わります。退職日が1日ずれるだけで、約15〜20万円を取り損ねることもあります。
この記事では、退職のタイミング別の給付金の扱いと、1円でも多く受け取るための退職日の設定方法を、図と具体例を使って分かりやすく解説します。最後まで読めば「自分はどうすればいいか」が具体的に分かります。
なお、マイナビ転職の調査(2024年)によると、育児を理由に退職した・または検討した女性は約4割にのぼります。あなたは決して特別な状況にいるわけではありません。
退職タイミング別|給付金の扱い早見表
| 退職のタイミング | 給付金もらえる? | 返金は必要? |
|---|---|---|
| ①育休開始「前」に退職 | ❌ もらえない | - |
| ②育休開始時点で退職予定 | ❌ 対象外 | ⚠️ 不正受給リスク |
| ③育休中に退職を決めた(最多) | ⭕ 退職日まで支給 | ❌ 不要 |
| ④育休終了後に退職 | ⭕ 満額受給済み | ❌ 不要 |
それでは、各パターンを詳しく見ていきましょう。
①育休開始「前」に退職した場合
育休に入る前に退職してしまった場合、残念ながら育児休業給付金は受け取れません。育児休業給付金の受給条件として「育休開始時点で雇用保険の被保険者であること」が定められているためです。退職した時点で雇用保険の被保険者でなくなるので、受給資格そのものが消えてしまいます。
「産休中に退職を考えている」という方は、この点を必ず確認してから動いてください。退職は育休が始まってからにする選択肢も残っています。
②育休開始時点で「すでに退職が決まっている」場合
これが最も注意が必要なケースです。育休を取得した時点で退職することが決まっていた場合、育児休業給付金は支給対象外になります。仮に受け取っていたとしても、それは「不正受給」とみなされる可能性があります。
不正受給が発覚した場合、受給額の全額返還+2倍の納付命令(合計3倍)が科されます。50万円の不正受給なら、150万円の返還・納付が求められることになります。会社にも連帯責任が及ぶ可能性があるため、絶対にやめましょう。
③育休中に退職を決めた場合【最も多いケース】
「育休に入ったときは復職するつもりだったけど、状況が変わって退職を決めた」——これが最も多いパターンであり、かつ最も心配される方が多いケースです。
結論:問題ありません。育休開始時点で復職の意思があったのであれば、途中で退職を決めても、すでに受け取った給付金を返金する必要はありません。2025年4月の制度改正以降は、退職日まで給付金が支給されます。
人生何があるかわかりません。育児をしてみて初めてわかる大変さ、夫や妻の転勤、保育園落選、体調の変化…こういった理由で退職を選ぶことは、制度の趣旨に反しません。後ろめたく思う必要はゼロです。
④育休終了後に退職した場合
育休期間(原則1歳まで、延長した場合は最大2歳まで)を全期間取得してから退職する場合、育児休業給付金は満額受給できます。育休終了後に退職することは法律上まったく問題ないため、給付金の返還を求められることもありません。経済的に最大限のメリットを受けられるパターンです。
2025年4月改正で何が変わった?旧ルールとの比較
2025年4月に育児休業給付金の支給ルールが改正されました。育休中に退職を考えている方にとって、直接お金に関わる重要な変更です。
旧ルール(2025年3月まで):退職日を含む支給単位期間の「ひとつ前の期間」まで支給
→ 退職月の給付金は一切もらえなかった
新ルール(2025年4月以降):退職日が支給単位期間の末日であれば、その期間まで支給
→ 退職月の給付金も受け取れるようになった
つまり、2025年4月以降に退職する方は、退職日を「支給単位期間の末日」に合わせるだけで、旧ルールより1か月分多く給付金を受け取れます。この改正を知っているかどうかで、受取額が大きく変わります。
なお、一部のウェブサイトには「退職日の前の期間まで支給される」という旧ルールの情報が今も掲載されていますが、2025年4月以降はそのルールは適用されません。古い情報に惑わされないよう注意してください。
【最重要】退職日が1日違うだけで数十万円が変わる仕組み
ここが一番お金に直結する話です。少し仕組みを理解する必要がありますが、具体例を見れば必ずわかります。5分だけ集中して読んでみてください。
支給単位期間とは何か
育児休業給付金は、「支給単位期間」という1か月ごとの区切りで計算されます。育休開始日から1か月ずつ区切っていくイメージです。
例:育休開始日が6月10日の場合
- 第1支給単位期間:6月10日〜7月9日
- 第2支給単位期間:7月10日〜8月9日
- 第3支給単位期間:8月10日〜9月9日
- ……(以降同様)
給付金は、この期間ごとに1か月分ずつ支給されます。
退職日を末日に合わせると何が変わるのか
2025年4月以降のルールでは:
- 退職日が支給単位期間の末日:その期間まで支給される
- 退職日が支給単位期間の途中:その期間は支給されない(前の期間まで)
ケース①:8月8日退職の場合
→ 退職日(8月8日)は第2支給単位期間(7/10〜8/9)の途中
→ 第1支給単位期間(6/10〜7/9)のみ支給
→ 受取額:約1か月分
ケース②:8月9日退職の場合
→ 退職日(8月9日)は第2支給単位期間の末日
→ 第1・第2支給単位期間の両方が支給対象
→ 受取額:約2か月分
わずか1日の差で、給付金約1か月分(月給30万円の方なら約20万円相当)が変わります。
この仕組みを知らずに「退職日は会社の都合でいいです」と安易に決めてしまうと、大きな損をする可能性があります。
自分の支給単位期間の末日を計算する方法
支給単位期間の末日=「育休開始日の前日 + n か月目の同日」です。
- 育休開始日が5月15日 → 末日は毎月14日
- 育休開始日が1月1日 → 末日は毎月31日(月によっては月末)
- 育休開始日が7月31日 → 末日は毎月30日(2月は末日)
計算が複雑な場合や産休・育休の期間全体を確認したい場合は、当サイトの産休育休自動計算ツールを使うと便利です。育休開始日を入力するだけで、支給単位期間の区切り日などを確認しやすくなっています。
退職日の交渉術:会社への伝え方
「支給単位期間の末日に退職したい」と会社に伝える際、難しく考える必要はありません。「育児休業給付金の支給ルール上、○月○日退職にしたいのですが、ご調整いただけますか」と正直に話して問題ありません。
多くの会社では退職日の融通が利きます。会社側は「月末退職のほうが社会保険の手続きが楽」という都合もあるので、お互いの希望をすり合わせながら決めましょう。不安な場合は最初にハローワークに自分の支給単位期間を確認してから会社と話し合うと確実です。
返金が必要なケースと不正受給のリスク
不正受給の定義をあらためて確認する
不正受給とは、「職場復帰する意思がないのに、意図的に意思があるように偽って給付金を受け取る行為」です。端的に言えば、「最初から辞めるつもりなのに黙って申請すること」が該当します。
一方、以下のような状況は不正受給には当たりません:
- 育休開始時は本当に復職するつもりだった
- 育休開始後に事情が変わって退職を決めた
- 育休中に転職活動を始めて、その後転職を決意した
「いつから退職を考えていたか」は外部から客観的に証明するのが非常に難しいため、育休開始後に退職が決まったケースでは基本的に問題なしとされています。
グレーゾーン:疑われやすい状況とは
明確なルール違反ではないものの、疑いをもたれやすい行動パターンがあります。以下の状況が重なると「最初から退職予定だったのでは?」と判断されるリスクが高まります。
- 育休開始後、数日〜1週間以内に退職を申し出た
- 育休開始前から転職エージェントに登録・面接を受けていた記録がある
- 育休取得時に「絶対復職します」と明言していたのに翌月退職を申し出た
「心配だな」という方は、ハローワークに「こういう状況だが問題ないか」と事前相談することをおすすめします。窓口は親切に対応してくれます。
育休中に退職を決めた先輩3人のリアルな声
「自分と同じような状況の人はどうしたんだろう?」と気になりますよね。育休中に退職を決めた方々の経験談を紹介します。
「産後3か月で夫の地方転勤が決定。復職は現実的じゃないと判断し、育休4か月目に退職を決めました。最初は給付金を返さなきゃいけないんじゃないかと不安で、眠れない夜もありましたが、ハローワークに相談したら『育休開始後に状況が変わったケースは問題ない』とはっきり言ってもらえて安心しました。退職日も支給単位期間の末日に合わせることができ、経済的にも助かりました。」
「上の子の保育園と下の子の保育園が別の場所で、送迎だけで毎朝2時間かかる計算になってしまいました。育休中にシミュレーションしてみて、フルタイムでの復職は体力的に無理だと悟りました。退職を申し出たとき、上司は『残念だけど仕方ないね』と言ってくれて、拍子抜けするくらいスムーズでした。給付金は退職日まで受け取れたので、その後の生活設計にすごく助かりました。」
「育休中に子どもと向き合う時間ができて、将来のキャリアを真剣に考え直しました。『このまま今の会社で働き続けることが本当に自分と家族のためになるか?』という疑問が膨らんで、育休終了前にフリーランスへの転向を決意。退職日を支給単位期間の末日に設定して、給付金を最大限受け取ってから独立しました。育休はキャリアの棚卸しにもなりましたね。」
育休は、自分と家族の未来を見つめ直すための時間でもあります。その結果として退職を選んだとしても、それは立派な決断です。
退職を会社に伝えるときの3つのポイントとメール例文
いつ、どう伝えるか
タイミングは復職予定日の1〜2か月前がベターです。会社側が後任の手配や引き継ぎ準備をするために必要な期間です。早すぎると「最初から退職予定だったのでは?」と誤解されるリスクもゼロではないため、バランスが大切です。
まずは直属の上司に電話またはオンラインで「相談があります」と伝えてから口頭で話すのが理想ですが、赤ちゃんのお世話で電話が難しい場合はメールの第一報でもかまいません。その際は「直接お話ししたいのですが、育児中のためまずメールにて失礼します」と一言添えると丁寧です。
退職を伝える際の3つのポイント:
- 退職理由は簡潔に(「家庭の事情」で十分。詳細を話す必要はない)
- 感謝の言葉を入れる(育休を取らせてもらったことへのお礼は必ず)
- 希望退職日を明示する(支給単位期間の末日を計算した上で提示)
メール例文(コピペOK)
〇〇部長
お世話になっております。現在育児休業中の〇〇です。
育休中に家庭の状況を見直した結果、大変恐縮ながら復職を断念し、退職させていただきたくご連絡いたしました。
育休取得にあたり、多大なご配慮をいただきましたことを深く感謝しております。本来であれば復職してご恩返しすべきところ、このような結論となり誠に申し訳ございません。
退職日は〇月〇日(支給単位期間の区切りの都合で、この日が最適なのです)をご検討いただければ幸いです。引き継ぎや手続きについては、可能な範囲で誠実に対応いたします。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
〇〇(氏名)
「育休明けに辞めるなんて非常識では?」と思う必要はありません。育休は労働者の権利であり、その後の人生設計に合わせて退職を選ぶことは合法的で正当な行為です。
退職後のお金と手続きチェックリスト
給付金の話が整理できたら、次は退職後の生活設計です。見落としがちなポイントをまとめました。
失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取れる?
退職後に再就職を考えている方は、失業保険を受け取れる可能性があります。受給のポイントを整理します。
受給の基本条件(2点):
- 離職前2年間(育休期間を除く)に雇用保険の被保険者期間が12か月以上ある
- 積極的に求職活動をしており、すぐに働ける状態にある
「すぐに働ける状態」という条件が問題になることがあります。小さい子どもを抱えていてすぐには働けない場合は、受給期間の延長申請という制度があります。子どもが3歳になるまで最長4年間、受給開始を延長できます(ただし、その間は失業保険はもらえません)。急がず、準備ができたタイミングで申請することもできます。
自己都合退職の給付制限期間(2か月)の短縮条件:
以下の正当な理由がある場合、通常の「2か月の給付制限期間」が適用されない(または短縮される)ことがあります。
- 保育所に入所できず、職場復帰が困難になった
- 配偶者の転勤(単身赴任を強いられる状況)
- 家族の介護が必要になった
- 産後の体調不良が長引いている
これらに該当する場合は、退職理由を証明する書類(保育所の不承諾通知書、転勤辞令のコピー等)を持参してハローワークで確認しましょう。
社会保険の切り替え(国保 or 扶養)
育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されていましたが、退職すると免除は終了します。以下の3つから選択することになります。
| 選択肢 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 配偶者の扶養に入る | 保険料負担ゼロ | 配偶者が社会保険加入者であること・年収130万円未満の条件あり |
| 国民健康保険に加入 | 収入なければ保険料が低め | 前年収入が多いと高くなる。月1〜3万円が目安 |
| 任意継続被保険者制度 | 健康保険の給付内容が維持される | 退職後20日以内に手続き必要。保険料が全額自己負担になる |
育休中は収入がほぼゼロのため、翌年(退職翌年)の国民健康保険料は比較的低く抑えられることが多いです。一方で退職前年(育休前)の収入が多い場合は、退職直後の保険料が高くなることがあります。退職の翌日から14日以内に市区町村の窓口で手続きが必要です。
国民年金保険料は2025年度で月額16,980円(全国一律)ですが、収入が少ない場合は全額免除・一部免除・納付猶予の制度が利用できます。忘れずに申請しましょう。
保育園はどうなる?猶予期間を活用しよう
すでに保育園の内定をもらっていた場合、退職すると入園が取り消されるリスクがあります。保育園は「保育を必要とする事由(就労など)」がある家庭が対象のため、退職して求職活動もしていない状態では継続利用できないことがほとんどです。
ただし、多くの自治体では「求職活動中」の扱いで1〜3か月の猶予期間を設けています。その期間内に就職先が決まれば継続利用可能です。退職後はすぐに自治体の保育課に状況を正直に説明し、猶予期間の確認をすることをおすすめします。
また、認可保育園の利用が難しい場合でも、認定こども園・認可外保育施設・一時保育などの代替手段があります。焦らずに複数の選択肢を検討してみてください。
よくある質問Q&A
A. はい、基本的にOKです。ただし「育休開始から数日以内」に退職を申し出た場合は「最初から退職予定だったのでは?」と疑われやすくなります。1か月以上経ってからの申し出であれば、ほぼ問題ないでしょう。
A. 育休開始後に転職活動を始めて内定をもらった場合は問題ありません。退職日まで給付金を受け取れます。育休開始前から転職活動をしていた場合は、「最初から退職予定だった」とみなされるリスクがあります。
A. 通常の育休と同じ扱いです。育休開始後に退職を決めた場合、退職日まで給付金が支給されます。
A. 延長中でも同じルールが適用されます。退職日が支給単位期間の末日であれば、その期間まで支給されます。
A. 育休開始時点ですでに「契約更新しない」ことが決まっていた場合は、給付金の支給対象外です。育休開始後に更新しないことが決まった場合は、通常の退職と同じ扱いになります。
A. 再就職して雇用保険に再加入し、育休開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があれば、次の職場でも育児休業給付金を受け取れます。ただし受給資格を満たすには一定の勤務期間が必要なので、再就職後は早めに雇用保険に加入することが大切です。
A. はい。退職の意思を伝えた後も、退職日まで育児休業給付金の申請は会社を通じて通常通り行われます。退職日以降の分は当然支給されないので、最後の申請タイミングを会社担当者と確認しておくと安心です。
まとめ|退職は後ろめたくない。あとは手続きを正確に
育休中の退職について、一番伝えたいことは2つです。
ひとつ目は、「育休開始後に退職を決めたなら、後ろめたく思う必要はない」ということ。制度的にも法的にも問題はなく、受け取った給付金を返す必要もありません。
ふたつ目は、「退職日の1日の差が、あなたの受取額を数十万円変える」ということ。感情的なケアと同じくらい、退職日の設定という実務的な作業が大切です。支給単位期間の末日を計算して、できるだけその日に退職日を合わせましょう。
- 育休開始日から支給単位期間の末日を計算する(→ 産休育休自動計算ツールで確認)
- 末日に合わせた退職日を希望として会社に伝える
- 退職後は失業保険・社会保険の切り替え手続きをハローワーク・市区町村窓口で行う
不安なことがあれば、ひとりで抱え込まずにハローワークや社会保険労務士に相談してみてください。育休中でも電話相談が可能な窓口があります。
あなたとお子さん、そしてご家族の生活が、少しでも安心できる形で前に進むことを願っています。
【参考】
・厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
・ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
・厚生労働省「出生後休業支援給付について」(2025年4月施行)
・マイナビ転職「育休に対する男女の意識差と実態調査(2024年)」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001964.000002955.html



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