育児休業給付金は、雇用保険制度に基づく給付金です。つまり、雇用保険に加入していることが受給の大前提となります。さらに、ただ加入しているだけでなく、一定期間以上の被保険者期間を満たす必要があるんです。
この記事では、育児休業給付金と雇用保険の関係について、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。雇用保険の加入要件、被保険者期間の計算方法、転職した場合の扱い、パート・アルバイトの受給資格など、気になるポイントを網羅的にカバー。2026年最新の制度情報に基づいて、あなたの疑問をすべて解消します。
育児休業給付金と雇用保険の基本的な関係
育児休業給付金は雇用保険制度の一部
育児休業給付金は、正式には「雇用保険法」に基づく給付制度です。失業保険(正式には「基本手当」)と同じく、雇用保険の保険給付の一つとして位置づけられています。
雇用保険には、大きく分けて次のような給付があります:
- 求職者給付:失業した際の基本手当など
- 就職促進給付:再就職手当など
- 教育訓練給付:スキルアップのための給付
- 雇用継続給付:育児休業給付金、介護休業給付金など
育児休業給付金は、この「雇用継続給付」に分類されます。つまり、雇用を継続しながら育児のために休業する労働者を支援するための制度なんですね。
雇用保険の財源は、労働者と事業主が支払う保険料です。毎月のお給料から天引きされている「雇用保険料」が、育児休業給付金の原資となっています。
なぜ雇用保険加入が必須条件なのか
育児休業給付金を受け取るためには、雇用保険の被保険者である必要があります。これは、次の理由によるものです:
1. 保険制度の原則
雇用保険は「保険」ですから、保険料を納めている人(被保険者)だけが給付を受けられるという原則があります。医療保険や年金保険と同じ仕組みですね。
2. 雇用継続の支援が目的
育児休業給付金は、育児のために一時的に休業する労働者が、休業後に職場復帰することを前提とした制度です。雇用保険に加入している=雇用関係が継続している、ということを証明する必要があるのです。
3. 公平性の確保
保険料を納めていない人にも給付を行うと、保険制度として成り立ちません。公平性を保つため、被保険者であることが条件となっています。
つまり、雇用保険に加入していない場合、残念ながら育児休業給付金を受け取ることはできません。ただし、後述しますが、雇用保険に加入していない・期間が足りない場合でも、他の支援制度を活用できる可能性があります。
育児休業給付金を受け取るための雇用保険加入要件
被保険者期間12ヶ月以上の条件
雇用保険に加入しているだけでは、育児休業給付金を受け取れません。育児休業開始日前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが必要です。
この「被保険者期間」の計算方法が、少しわかりにくいんです。順を追って説明しますね。
被保険者期間の定義
被保険者期間は、「賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月」または「賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月」を1ヶ月として計算します。
具体的には:
- 月給制の場合:その月に11日以上出勤していれば、1ヶ月とカウント
- 時給制・日給制の場合:働いた日数が11日以上、または働いた時間が80時間以上あれば1ヶ月とカウント
計算例1:フルタイム正社員の場合
2024年4月に入社し、2026年4月に出産予定のAさん。
- 入社日:2024年4月1日
- 育児休業開始日:2026年4月15日
- 育休開始前2年間:2024年4月15日〜2026年4月14日
この2年間、毎月しっかり出勤していれば、24ヶ月の被保険者期間があることになります。12ヶ月以上の条件を十分満たしているので、受給資格があります。
計算例2:パート勤務の場合
週3日勤務のパートタイムで働くBさん。
- 勤務:毎週月・水・金の3日(月12日程度)
- 1日6時間勤務
- 月の労働時間:約72時間
この場合、「11日以上」の条件は満たしていますが、「80時間以上」の条件は満たしていません。ただし、11日以上出勤している月は被保険者期間1ヶ月としてカウントされます。
注意が必要なのは、病気やケガで長期休職した場合です。休職中で出勤日数が11日未満の月は、被保険者期間としてカウントされません。
雇用保険の加入期間の正しい計算方法
「育児休業開始日前2年間」の計算方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。
起算日の確認
計算の起点となるのは、「育児休業開始日」です。出産予定日ではないので注意してください。
例えば:
- 出産予定日:2026年5月10日
- 実際の出産日:2026年5月8日
- 育児休業開始日:2026年5月9日(産後休業明けの翌日)
この場合、2024年5月9日〜2026年5月8日の2年間が対象期間となります。
産前・産後休業の扱い
重要なポイントがあります。産前・産後休業(産休)の期間は、被保険者期間の計算から除外されます。
通常、産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得できます。産後休業は出産日の翌日から8週間です。この期間は、上記の「2年間」に含まれません。
つまり、産休期間がある場合、実質的には「2年+産休期間」さかのぼった期間が対象となります。
計算例:産休を取得した場合
Cさんの場合:
- 出産日:2026年4月1日
- 産前休業開始:2026年2月19日(出産予定日の6週間前)
- 産後休業終了:2026年5月27日(出産日翌日から8週間後)
- 育児休業開始日:2026年5月28日
- 産休期間:約14週間(約3.5ヶ月)
この場合、育休開始日の2026年5月28日から2年さかのぼるのではなく、産休期間3.5ヶ月を加算して、約2年3.5ヶ月前の2024年2月頃からが対象期間となります。
この計算、ちょっと複雑ですよね。不安な場合は、会社の人事担当者やハローワークで確認してもらうことをおすすめします。
転職した場合の通算ルール
「転職したばかりで、今の会社での勤務期間が1年未満なんだけど…」という方、諦めるのはまだ早いです!
雇用保険の被保険者期間は、条件を満たせば前職の期間と通算できるんです。
通算できる条件
前職と現職の雇用保険被保険者期間を通算するには、次の条件を満たす必要があります:
- 離職日の翌日から1年以内に再就職していること
- 前職でも雇用保険に加入していたこと
- 前職を退職する際に、失業保険(基本手当)を受給していないこと
特に重要なのが、3つ目の条件です。失業保険を受給すると、それまでの被保険者期間がリセットされてしまいます。
通算計算の具体例
Dさんの場合:
- 前職:2022年4月〜2025年9月(3年6ヶ月勤務)
- 離職日:2025年9月30日
- 転職・再就職日:2025年10月15日(離職日の翌日から15日後)
- 現職での勤務:2025年10月〜2026年4月(7ヶ月)
- 育児休業開始日:2026年5月1日
この場合、前職の被保険者期間(3年6ヶ月)と現職の被保険者期間(7ヶ月)を合算して、通算4年1ヶ月の被保険者期間があるとみなされます。12ヶ月以上の条件を十分満たしているので、受給資格があります。
ただし、失業保険を受給した場合は、次のようになります:
Eさんの場合:
- 前職:2022年4月〜2025年9月(3年6ヶ月勤務)
- 離職日:2025年9月30日
- 失業保険を3ヶ月間受給
- 転職・再就職日:2025年12月1日
- 現職での勤務:2025年12月〜2026年4月(5ヶ月)
- 育児休業開始日:2026年5月1日
この場合、失業保険を受給したことで前職の被保険者期間はリセットされ、現職の5ヶ月しかカウントされません。12ヶ月以上の条件を満たさないため、残念ながら育児休業給付金は受給できません。
転職を考えている方、妊娠・出産の予定がある方は、この点をしっかり理解しておくことが大切です。詳しくは転職1年未満でも育児休業給付金はもらえる!条件と手続きを完全解説の記事もご参照ください。
雇用形態別:雇用保険加入と受給資格の判定
「自分の雇用形態でも雇用保険に加入できるの?」「パートやアルバイトでも育児休業給付金はもらえるの?」こんな疑問を持つ方も多いでしょう。雇用形態別に、雇用保険の加入条件と受給資格について解説します。
正社員の場合
正社員(フルタイム勤務の無期雇用契約)の場合、基本的に全員が雇用保険の加入対象です。
加入条件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがあること
正社員であれば、これらの条件は自動的に満たしているはずです。入社時に雇用保険への加入手続きが会社によって行われます。
受給資格
前述の通り、育児休業開始日前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あれば、受給資格があります。正社員で継続勤務していれば、ほとんどの場合この条件を満たします。
パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトでも、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できます。そして、雇用保険に加入していれば、育児休業給付金を受け取る権利があります。
雇用保険の加入条件
パート・アルバイトが雇用保険に加入するには、次の2つの条件を満たす必要があります:
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがあること
「週20時間以上」というのがポイントです。週5日勤務なら1日4時間以上、週4日勤務なら1日5時間以上働いていれば、この条件を満たします。
受給資格の判定
雇用保険に加入していれば、パート・アルバイトでも育児休業給付金を受け取れます。ただし、被保険者期間12ヶ月以上の条件を満たす必要があります。
パート・アルバイトの場合、注意すべきポイントは:
- 出勤日数・労働時間の確保:月11日以上の出勤、または月80時間以上の労働が必要
- シフトの変動:繁閑期でシフトが大きく変動する場合、被保険者期間としてカウントされない月が出る可能性がある
よくある誤解
「パートだから育児休業給付金はもらえない」と思い込んでいる方がいますが、これは誤解です。雇用保険に加入していて、条件を満たせば、正社員と同じように受給できます。
ただし、会社によっては「パートには育休を認めない」という就業規則がある場合もあります。これは労働基準法上問題ありませんが、育児・介護休業法では、一定の条件を満たすパート労働者には育休取得の権利が認められています。詳しくは会社の就業規則を確認するか、人事担当者に相談してみましょう。
契約社員・派遣社員の場合
契約社員や派遣社員(有期雇用契約)の場合も、一定の条件を満たせば雇用保険に加入でき、育児休業給付金を受け取れます。
雇用保険の加入条件
基本的には、パート・アルバイトと同じです:
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがあること
契約社員の場合、契約期間が1ヶ月以上あれば「31日以上の雇用見込み」の条件を満たします。
育児休業の取得要件(重要!)
有期雇用契約の場合、育児休業を取得するには追加の要件があります:
- 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
- 子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
つまり、「契約が更新されて、子が1歳6ヶ月になるまで雇用が継続する見込みがある」ことが必要です。
具体例
契約社員Fさんの場合:
- 雇用開始:2024年4月1日
- 契約期間:1年(毎年4月1日に更新)
- 出産予定日:2026年5月10日
- 子が1歳6ヶ月になる日:2027年11月10日
この場合、2026年4月1日に契約が更新され、次回更新予定は2027年4月1日です。子が1歳6ヶ月になる2027年11月10日までに契約期間が満了することが明らかではない(更新される可能性がある)ため、育休取得の要件を満たします。
派遣社員の特殊事情
派遣社員の場合、雇用主は「派遣元(派遣会社)」です。派遣先ではありません。
育児休業給付金の申請も、派遣元を通じて行います。派遣元の雇用保険に加入している必要があります。
派遣契約が終了しても、派遣元との雇用関係が継続していれば(別の派遣先での就業が見込まれる場合など)、育休を取得できる可能性があります。派遣元の担当者によく相談しましょう。
公務員の場合(共済組合)
公務員の場合、少し事情が異なります。
雇用保険ではなく共済組合
公務員は、雇用保険には加入しません。代わりに「共済組合」に加入します。
育児休業中の給付も、雇用保険からではなく、共済組合から「育児休業手当金」として支給されます。
給付内容の違い
| 項目 | 民間企業(雇用保険) | 公務員(共済組合) |
|---|---|---|
| 制度名 | 育児休業給付金 | 育児休業手当金 |
| 支給率 | 休業開始〜180日:67% 181日以降:50% |
最初の6ヶ月:67% 7ヶ月目以降:50% |
| 支給期間 | 原則子が1歳まで(延長可) | 原則子が1歳まで(延長可) |
| 申請先 | ハローワーク(会社経由) | 共済組合(所属機関経由) |
給付内容はほぼ同じですが、手続きや申請先が異なります。公務員の方は、所属機関の人事担当部署に確認してください。
なお、公務員の育児休業制度については、〖2025年最新〗公務員の育児休業給付金を延長する方法の記事で詳しく解説しています。
よくある疑問:雇用保険と育児休業給付金
ここでは、雇用保険と育児休業給付金に関する、よくある疑問にお答えします。
転職1年未満でももらえる?
答え:前職の被保険者期間と通算できる場合は、もらえます。
前述の通り、次の条件を満たせば、前職と現職の被保険者期間を通算できます:
- 離職日の翌日から1年以内に再就職している
- 前職でも雇用保険に加入していた
- 前職退職時に失業保険を受給していない
通算して12ヶ月以上あれば、転職1年未満でも受給資格があります。
注意点
ただし、前職での勤務期間が極端に短い場合(例:3ヶ月)や、転職を繰り返している場合は、通算しても12ヶ月に満たない可能性があります。
また、失業保険を受給すると被保険者期間がリセットされるので、転職活動中に失業保険を受けるか、受けずに早めに転職するかは、慎重に判断する必要があります。
詳しくは転職1年未満でも育児休業給付金はもらえる!条件と手続きを完全解説をご覧ください。
雇用保険料を払っていないけど大丈夫?
答え:「雇用保険料を払っていない」と思っているだけで、実は払っている可能性があります。
雇用保険料は、毎月の給与から自動的に天引きされています。給与明細を見ると、「雇用保険料」という項目があるはずです。
2026年度の雇用保険料率
| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 0.6% | 0.95% | 1.55% |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 0.7% | 1.05% | 1.75% |
| 建設の事業 | 0.7% | 1.15% | 1.85% |
例えば、月給25万円の場合、一般の事業であれば雇用保険料は1,500円(25万円×0.6%)です。決して大きな金額ではありませんが、確実に天引きされています。
給与明細に記載がない場合
もし給与明細に「雇用保険料」の記載がない場合、次の可能性があります:
- そもそも雇用保険に加入していない:週20時間未満の勤務など、加入条件を満たしていない
- 会社が加入手続きを怠っている:違法です。すぐに会社に確認し、必要なら労働基準監督署に相談してください
雇用保険に加入しているかどうかは、「雇用保険被保険者証」で確認できます。入社時に会社から渡されているはずです。紛失した場合は、ハローワークで再発行してもらえます。
2人目出産時の雇用保険期間はリセットされる?
答え:リセットされません。継続してカウントされます。
1人目の育児休業中も、雇用保険の被保険者資格は継続しています。育休中は保険料の支払いは免除されますが、被保険者期間は継続してカウントされます。
2人目でも受給できる条件
2人目の出産で育児休業給付金を受け取るには、次の条件を満たす必要があります:
- 2人目の育児休業開始日前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上ある
ただし、ここで注意が必要です。
「職場復帰」の重要性
1人目の育休から復帰せず、そのまま2人目を妊娠・出産した場合、被保険者期間の計算が複雑になります。
基本的には、1人目の育休終了日(子が1歳になる日)から2人目の育休開始日までに、一定期間の就労実績が必要とされています。
厚生労働省のガイドラインでは、この「一定期間」について明確な基準は示されていませんが、実務上は「1ヶ月以上の就労」が目安とされることが多いようです。
2歳差での2人目出産
例えば、1人目が1歳になる前に2人目を妊娠した場合(いわゆる「年子」や「2歳差」)、職場復帰の期間が短い、またはまったくない可能性があります。
この場合でも、被保険者期間の計算上は問題ありませんが、育児休業の取得要件(雇用継続の見込みなど)を満たすかどうかは、個別のケースによって判断が分かれます。
詳しくは〖2025年最新版〗育児休業給付金は2人目2歳差でももらえる?計算方法と減額を防ぐ3つのポイントをご参照ください。
2人目で復帰半年未満の場合
1人目の育休から復帰して6ヶ月未満で2人目を妊娠した場合も、基本的には受給できます。ただし、給付額の計算で注意が必要です。
給付額は「育休開始前6ヶ月の平均賃金」を基準に計算されますが、復帰期間が6ヶ月未満の場合、産休・育休で賃金が低かった時期が計算に含まれ、給付額が減ってしまう可能性があります。
育児休業給付金は2人目で復帰半年未満でももらえる?条件・手続き・注意点を完全解説で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
育休中に退職したら雇用保険はどうなる?
答え:退職すると、その時点で被保険者資格を喪失します。
育児休業給付金は、「育休後に職場復帰すること」を前提とした制度です。そのため、育休中に退職した場合、原則として給付金の支給は打ち切られます。
すでに受け取った給付金の扱い
退職時期によって、扱いが異なります:
- 育休開始後すぐに退職が決まっていた場合:不正受給とみなされ、すでに受け取った給付金の返還を求められる可能性があります
- やむを得ない事情で退職した場合:すでに受け取った分は返還不要ですが、退職以降の給付は停止されます
「やむを得ない事情」とは、たとえば:
- 配偶者の転勤に伴う引っ越し
- 会社の倒産や解雇
- 本人または家族の病気・介護など
このような場合は、退職が正当な理由と認められ、給付金の返還を求められることは通常ありません。
退職後の失業保険
育休中に退職した場合、雇用保険の被保険者資格を喪失するため、その後は失業保険(基本手当)の受給対象となります。
ただし、育児中の場合、すぐに求職活動ができない(「就労可能な状態にない」)ため、失業保険は受給できません。この場合、受給期間の延長手続きを行うことで、育児が落ち着いてから失業保険を受け取ることができます。
詳細は育児休業給付金と失業手当どっちが得?損しない選択と手続きの完全ガイドをご覧ください。
雇用保険に加入していない・期間が足りない場合の対処法
「雇用保険に加入していない」「被保険者期間が12ヶ月に満たない」という場合、残念ながら育児休業給付金は受給できません。でも、諦めるのはまだ早いです。対処法と代わりに使える制度を見ていきましょう。
会社に雇用保険加入状況を確認する方法
まずは、本当に雇用保険に加入していないのか、確認しましょう。
1. 給与明細を確認
給与明細に「雇用保険料」の控除項目があれば、加入しています。
2. 雇用保険被保険者証を確認
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入すると発行される証明書です。入社時に会社から渡されているはずです。
紛失している場合は、会社の人事担当者に相談するか、ハローワークで「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」を使って確認できます。
3. ハローワークで照会
最も確実なのは、ハローワークで直接照会することです。本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)を持参すれば、その場で加入状況を確認してもらえます。
会社が加入手続きをしていなかった場合
もし、加入条件を満たしているのに会社が雇用保険の加入手続きをしていなかった場合、それは違法です。
以下の手順で対処しましょう:
- 会社に加入を要求:まず、会社の人事担当者に雇用保険への加入を求めます
- ハローワークに相談:会社が対応しない場合、ハローワークに相談します。ハローワークから会社に加入指導が入ります
- 労働基準監督署に通報:それでも会社が対応しない場合、労働基準監督署に通報できます
雇用保険は労働者の権利です。遠慮せず、しっかり主張しましょう。
遡って雇用保険に加入できるケース
実は、条件を満たしていたのに会社が加入手続きを怠っていた場合、遡って雇用保険に加入できることがあります。
遡り加入の条件
- 雇用保険の加入条件(週20時間以上、31日以上の雇用見込み)を満たしていた
- 会社が加入手続きを怠っていた(労働者の責任ではない)
- 2年以内であること(雇用保険料の徴収権は2年で時効)
手続き方法
- 会社に「遡り加入」を要求
- 会社がハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出(遡って提出)
- 遡り分の保険料を納付(労働者負担分+事業主負担分)
遡り加入が認められれば、被保険者期間も遡ってカウントされるため、育児休業給付金の受給資格を得られる可能性があります。
注意点
ただし、遡り加入には限界があります:
- 2年以上前にさかのぼることはできない
- 会社の協力が必要(会社が拒否した場合、手続きが困難)
- 遡り分の保険料負担が発生する
会社が非協力的な場合は、ハローワークや労働基準監督署、労働組合、弁護士などに相談することをおすすめします。
雇用保険未加入でも使える他の支援制度
雇用保険に加入していない、または被保険者期間が足りない場合、育児休業給付金は受給できません。しかし、他にも使える支援制度があります。
1. 出産育児一時金(健康保険)
出産時に一律50万円(2024年4月以降)が支給される制度です。雇用保険とは無関係で、健康保険に加入していれば受給できます。
2. 児童手当
0歳から中学卒業まで、子どもの年齢に応じて月額1万円〜1万5千円が支給されます。所得制限がありますが、多くの家庭が受給できます。
3. 出産手当金(健康保険)
産前・産後休業中の生活保障として、健康保険から支給されます。雇用保険ではなく健康保険の制度なので、育児休業給付金が受給できない場合でも、こちらは受給できる可能性があります。
支給額は、標準報酬日額の3分の2です。
4. 自治体の支援制度
お住まいの自治体によっては、独自の育児支援制度があります。例えば:
- 出産・子育て応援交付金
- 乳児養育手当
- 保育料の減免
- 医療費助成
詳しくは、市区町村の窓口や公式ウェブサイトで確認してください。
5. 生活福祉資金貸付制度
低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯を対象に、社会福祉協議会が無利子または低利で貸付を行う制度です。出産・育児で経済的に困窮している場合、相談してみる価値があります。
詳しくは育児休業給付金がもらえない!代わりに使える6つの支援制度と生活費対策をご覧ください。
申請に必要な雇用保険関連書類
育児休業給付金を申請する際には、雇用保険関連の書類が必要です。事前に準備しておくと、スムーズに手続きできます。
雇用保険被保険者証の取得方法
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。
いつ発行される?
入社時に会社がハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出すると、ハローワークから被保険者証が発行されます。通常は入社後1〜2週間程度で会社に届き、会社から本人に渡されます。
どこに保管されている?
多くの会社では、被保険者証を本人に渡さず、会社で保管しています。退職時にまとめて返却されるケースが多いです。
育児休業給付金の申請時には、被保険者証(またはそのコピー)が必要になることがあるので、会社に保管場所を確認しておきましょう。
紛失した場合の再発行
被保険者証を紛失した場合は、ハローワークで再発行してもらえます。
再発行の手続き:
- 最寄りのハローワークに行く
- 「雇用保険被保険者証再交付申請書」に記入
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)を提示
- その場で再発行(即日交付)
手数料は無料です。
雇用保険被保険者番号の確認方法
雇用保険被保険者番号は、雇用保険に加入している一人ひとりに割り当てられる11桁の番号です。
どこに記載されている?
被保険者番号は、次の書類に記載されています:
- 雇用保険被保険者証:一番確実です
- 給与明細:会社によっては記載されていることがあります
- 離職票:前職を退職した際に受け取った離職票に記載されています
番号がわからない場合
被保険者番号がわからない場合は、次の方法で確認できます:
- 会社の人事担当者に聞く:最も簡単な方法です
- ハローワークで照会:本人確認書類を持参してハローワークで照会できます
番号の形式
雇用保険被保険者番号は、次の形式です:
○○○○-○○○○○○-○
(例:1234-567890-1)
4桁-6桁-1桁の合計11桁です。
ハローワークでの手続き
育児休業給付金の申請は、原則として会社がハローワークに代行して行います。個人が直接ハローワークに行って申請することは、通常ありません。
会社が行う手続き
- 初回申請(育休開始時):
- 育児休業給付金支給申請書(初回)
- 雇用保険被保険者証のコピー
- 母子健康手帳など出産を証明する書類
- 賃金台帳、出勤簿など
- 2回目以降の申請(2ヶ月ごと):
- 育児休業給付金支給申請書(継続)
- 賃金台帳、出勤簿など
詳しくは育児休業給付金支給申請書の記入例を完全解説!初回申請で失敗しない書き方ガイドと育児休業給付金支給申請書(2回目以降)の書き方完全ガイドをご参照ください。
本人が確認すべきこと
会社が手続きを代行してくれるとはいえ、本人も次の点を確認しておくことが大切です:
- 申請書の記入内容(会社が記入したものを確認)
- 申請期限(育休開始日から4ヶ月以内に初回申請が必要)
- 振込先口座情報
申請後、ハローワークから「育児休業給付金支給決定通知書」が送られてきます。これが届いたら、支給額や支給日を確認しましょう。育児休業給付金支給決定通知書はいつ届く?申請から受給までの完全ガイドで詳しく解説しています。
会社が手続きをしてくれない場合
まれに、会社が申請手続きをしてくれない、または遅れているケースがあります。この場合は:
- 会社に催促する
- 会社が対応しない場合、ハローワークに相談
- 本人が直接ハローワークで申請することも可能(会社の協力が得られない場合の措置)
育児休業給付金の申請書が会社から来ない時の対処法完全ガイドも参考にしてください。
2026年最新:雇用保険と育児休業給付金の制度変更点
2025年4月から、育児休業給付金の制度に大きな変更がありました。2026年も引き続き、この新制度が適用されています。
給付率引き上げと雇用保険料の関係
給付率が実質10割相当に引き上げ
2025年4月から、育児休業給付金の給付率が大幅に引き上げられました。
| 期間 | 従来(〜2025年3月) | 新制度(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 休業開始〜180日 | 賃金の67% | 賃金の67%+社会保険料相当額 |
| 181日以降 | 賃金の50% | 賃金の50%+社会保険料相当額 |
育児休業中は、健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。この免除される社会保険料分(賃金の約15%)を給付金に上乗せすることで、実質的に手取りの約10割相当を受け取れるようになりました。
これにより、育休中の経済的負担が大幅に軽減されます。
詳しくは育児休業給付金の上限が引き上げ!2025年4月から手取り10割相当にと育児休業給付金80%引き上げはどうなった?2025年4月実施の全詳細をご覧ください。
雇用保険料への影響は?
給付金が増額されたことで、「雇用保険料も上がるのでは?」と心配される方もいるかもしれません。
2026年現在、雇用保険料率は次のとおりです(一般の事業の場合):
- 労働者負担:0.6%
- 事業主負担:0.95%
- 合計:1.55%
これは2024年度から据え置きです。給付金の増額分は、雇用保険の積立金や国庫負担で賄われており、当面は保険料率を引き上げる予定はないとされています。
ただし、将来的に雇用保険の財政状況によっては、保険料率が見直される可能性もあります。最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認してください。
出生時育児休業給付金との違い
2022年10月から「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が導入され、それに伴い「出生時育児休業給付金」が新設されました。
これは通常の育児休業給付金とは別の制度です。雇用保険との関係でも、違いがあります。
| 項目 | 育児休業給付金 | 出生時育児休業給付金 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 原則子が1歳まで(最長2歳まで延長可) | 子の出生後8週間以内に4週間まで |
| 取得回数 | 原則1回(特別な事情がある場合は分割可) | 2回まで分割可能 |
| 主な対象 | 男女問わず | 主に父親(母親も取得可) |
| 休業中の就労 | 原則不可(月10日以下かつ80時間以下なら可) | 一定範囲で可能 |
| 給付率 | 67%(または50%)+社会保険料相当額 | 67%+社会保険料相当額 |
| 雇用保険の被保険者期間 | 育休開始前2年間に12ヶ月以上 | 育休開始前2年間に12ヶ月以上 |
雇用保険の加入要件や被保険者期間の条件は、両者とも同じです。どちらも雇用保険制度に基づく給付金なので、雇用保険に加入していることが大前提です。
詳しくは出生時育児休業給付金と育児休業給付金の違いを徹底解説!申請方法から支給額まで完全ガイドをご参照ください。
まとめ:育児休業給付金と雇用保険の重要ポイント
ここまで、育児休業給付金と雇用保険の関係について、詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
育児休業給付金を受け取るための雇用保険の条件
- 雇用保険に加入していること(週20時間以上、31日以上の雇用見込み)
- 被保険者期間が12ヶ月以上(育休開始日前2年間で計算)
- 育休後に職場復帰する見込みがあること
忘れてはいけないポイント
- パート・アルバイトでも、条件を満たせば受給できる
- 転職した場合、前職の被保険者期間を通算できる(失業保険を受給していない場合)
- 産休期間は被保険者期間の計算から除外される
- 2人目でも、条件を満たせば受給できる
- 2025年4月から給付率が大幅アップ(実質手取り10割相当)
不安なときは、すぐに確認を
雇用保険の加入状況や被保険者期間について、少しでも不安があれば、早めに確認しましょう。
- 会社の人事担当者に相談
- ハローワークで照会
- 給与明細や雇用保険被保険者証で確認
出産・育児は、人生の大きなライフイベントです。経済的な不安を少しでも減らして、安心して赤ちゃんを迎えられるよう、しっかりと準備してくださいね。
育児休業給付金は、あなたが働いてきた証であり、当然の権利です。雇用保険に加入し、保険料を納めてきたからこそ受け取れる給付金なんです。「もらって申し訳ない」なんて思う必要は全くありません。堂々と申請して、育児に専念してください。
この記事が、あなたの不安を解消し、安心して出産・育児に臨むための助けになれば幸いです。
何か疑問や不安があれば、一人で抱え込まず、会社やハローワーク、自治体の窓口に相談してみてください。きっと、力になってくれるはずです。
あなたとご家族の幸せな育児生活を、心から応援しています!
【参考資料・出典】
- 厚生労働省「雇用保険制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index.html
- 厚生労働省「育児休業給付について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険手続きのご案内」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/


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