「出産手当金っていくらもらえるの?」「出産育児一時金と何が違うの?」「退職したらもらえなくなる?」――産休中の生活を支える出産手当金は、対象者・金額・申請方法をしっかり把握しておく必要があります。
このページでは、出産手当金の対象者・支給額の計算方法・申請方法・退職した場合の扱い・出産育児一時金との違いまで詳しく解説します。
出産手当金とは
出産手当金は、産休(産前産後休業)中に給与が受け取れない期間について、健康保険(社会保険)から支給される給付金です。産休中の生活費の主な収入源となります。
産休は法律上の権利ですが、多くの会社では産休中に給与が支払われません。その代わりに、健康保険から出産手当金として給与のおよそ3分の2が支給されます。
💡 結論:出産手当金は、健康保険の被保険者本人(会社員・公務員など)が産休中にもらえる給付金です。給与の約2/3が最大98日分支給されます。非課税のため受け取った金額がそのまま手取りになります。
📌 注意:制度の内容・支給条件・申請期限は、加入している健康保険・勤務先・法改正によって変わる場合があります。実際に申請する際は、勤務先・健康保険組合の最新情報も確認してください。
対象者
出産手当金をもらえるのは、健康保険の被保険者本人です。夫の扶養に入っている方・自営業・フリーランス・国民健康保険の方は対象外です。
対象者・対象外の整理
| 状況 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 会社員・公務員(社保加入) | ◎ 対象 | 被保険者本人として加入していること |
| パート・アルバイト(社保加入) | ◎ 対象 | 社会保険の適用要件を満たしていること |
| 夫(配偶者)の扶養に入っている | ✕ 対象外 | 被扶養者は対象外 |
| 自営業・フリーランス | ✕ 対象外 | 国民健康保険には出産手当金の制度がない |
| 産休前に退職した場合 | △ 条件次第で対象 | 一定の条件を満たせば退職後も受給できる |
💡 補足:パートタイム労働者でも、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上などの社会保険の加入要件を満たしていれば、健康保険の被保険者として出産手当金の対象になります。
支給される期間
出産手当金は産前と産後に分かれて支給されます。
| 区分 | 支給日数 | 起算日 |
|---|---|---|
| 産前休業 | 42日(多胎は98日) | 出産予定日の42日前(予定日を含む) |
| 産後休業 | 56日(強制休業) | 出産日の翌日から56日 |
| 合計(単胎) | 最大98日 | — |
出産が予定日より遅れた場合・早まった場合
- 予定日より遅れて出産した場合:遅れた日数分、産前休業が延長される(産後休業56日は変わらない)
- 予定日より早く出産した場合:産前休業が短くなるが、産後休業56日は変わらない。合計は98日より短くなる
💡 補足:産後休業の56日は法律で義務付けられており(産後6週間は就業禁止)、本人が望んでも短縮できません。産後8週を過ぎると医師の許可があれば就業できますが、育休に移行するケースが一般的です。
支給額の計算方法
出産手当金の計算式は以下のとおりです。
計算式
支給額 = 支給開始日以前の継続した12か月間の
標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3 × 支給日数
計算のポイント
- 標準報酬月額:毎年4〜6月の給与をもとに決まる社会保険の等級。実際の月収と完全に一致するわけではない
- 12か月の平均:直近12か月の標準報酬月額の平均値を使う。勤続年数が12か月未満の場合は全期間の平均
- 支給日数:産休中に給与が支払われなかった日数分だけ支給(給与が支払われた日は対象外)
- 課税・非課税:出産手当金は非課税のため、受け取った金額がそのまま手取りになる
【計算例】月収30万円(標準報酬月額30万円)・産休98日の場合
- 標準報酬日額:300,000円 ÷ 30 = 10,000円
- 1日あたりの支給額:10,000円 × 2/3 ≒ 6,667円
- 98日分の合計:6,667円 × 98日 ≒ 65万3,366円
正確な金額は計算ツールで試算できます → 出産手当金計算ツール
月収別の支給額目安
産休98日間を取得した場合の支給総額の目安です。
| 月収の目安 | 日額(2/3) | 98日間の合計 | 月換算 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約4,444円 | 約43.5万円 | 約13.3万円/月 |
| 25万円 | 約5,556円 | 約54.4万円 | 約16.7万円/月 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約65.3万円 | 約20万円/月 |
| 35万円 | 約7,778円 | 約76.2万円 | 約23.3万円/月 |
| 40万円 | 約8,889円 | 約87.1万円 | 約26.7万円/月 |
※標準報酬月額が実際の月収と異なる場合があります。正確な金額は計算ツールでご確認ください。
申請方法
出産手当金の申請は、会社経由で健康保険組合・協会けんぽに行うのが一般的です。本人が直接申請するのではなく、勤務先の人事・総務担当者が手続きを進めます。
申請の流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①産休前に会社へ連絡 | 産休取得の申し出と合わせて、出産手当金の申請も依頼しておく |
| ②申請書の準備 | 「出産手当金支給申請書」を健保組合・協会けんぽから取得(会社が準備するケースが多い) |
| ③産後に提出 | 産後休業終了後(育休開始後)に申請書を会社に提出。会社が健保組合・協会けんぽへ申請する |
| ④振込 | 審査後、指定口座に振り込まれる(申請から1〜2か月程度) |
申請期限
- 申請期限は産休終了日の翌日から2年以内
- 産前・産後をまとめて1回で申請する方法と、産前・産後を分けて2回に分けて申請する方法がある
- 分けて申請する場合、産前分は産前休業終了後、産後分は産後休業終了後にそれぞれ申請できる
📌 注意:申請を忘れてしまっても2年以内であれば申請できます。ただし育休に入ってしまうと申請を忘れがちになるため、産後休業終了のタイミングで申請することをおすすめします。
退職した場合
妊娠・産休を機に退職した場合でも、一定の条件を満たせば出産手当金を受け取れます。
退職後も出産手当金を受け取れる条件
- 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
- 退職日が産前休業中であること(退職日に出勤していないこと)
- 退職後も引き続き産後休業の期間が続いている
退職のタイミングによる違い
| 退職のタイミング | 出産手当金の扱い |
|---|---|
| 産前休業中に退職 | 継続受給できる(条件を満たす場合) |
| 産休前(出勤して退職) | 受給できない |
| 退職後すぐに国保や扶養に入った場合 | 継続受給の可能性あり(継続1年以上の被保険者期間が条件) |
💡 補足:退職後に夫の扶養に入る場合、出産手当金を受給中は扶養に入れないケースがあります(扶養認定の収入基準を超えると判断されるため)。退職後の健康保険の手続きについては、夫の勤務先や健保組合に確認してください。
出産育児一時金との違い
名前が似ているため混同されやすいですが、出産手当金と出産育児一時金はまったく異なる制度です。
| 比較項目 | 出産手当金 | 出産育児一時金 |
|---|---|---|
| 目的 | 産休中の収入補填 | 出産費用の補助 |
| 支給額 | 給与の約2/3×最大98日分(人によって異なる) | 原則一律50万円 |
| 財源 | 健康保険 | 健康保険 |
| 対象者 | 健康保険の被保険者本人のみ | 被保険者・被扶養者どちらも対象 |
| 支給時期 | 産休期間中(産前〜産後56日) | 出産時(一括) |
| 同時受給 | 可能(両方受け取れる) | |
よくある質問
Q. 産休中に会社から給与が出る場合、出産手当金はもらえますか?
A. 産休中に給与が支払われる場合、給与額が出産手当金の額を下回るときはその差額が支給されます。給与が出産手当金の額以上の場合は、出産手当金は支給されません。会社の制度によって対応が異なるため、人事・総務担当者に確認してください。
Q. 出産手当金はいつ振り込まれますか?
A. 申請後、審査を経て通常1〜2か月程度で振り込まれます。産後休業終了後に申請する場合は、育休に入ってから2〜3か月後に振り込まれることが多いです。産前分と産後分を分けて申請することも可能なため、早く受け取りたい場合は産前分から申請する方法もあります。
Q. 出産手当金を受け取った場合、確定申告は必要ですか?
A. 出産手当金は非課税のため、確定申告は不要です。ただし出産した年に給与収入があった場合は、年末調整または確定申告が必要になる場合があります。産休開始年は会社の年末調整を通じて対応するケースが多いです。
Q. パパも出産手当金をもらえますか?
A. パパは出産手当金の対象外です。出産手当金は、出産した本人(ママ)が産休を取得した場合に支給される給付金です。パパが育休を取った場合は、育児休業給付金(雇用保険から)を受け取ることになります。
まとめ:産休前に会社に依頼しておけばスムーズに受け取れる
- 対象者は健康保険の被保険者本人(会社員・社保加入のパート)
- 支給額は標準報酬日額の2/3 × 支給日数(最大98日)
- 非課税のため受け取った額がそのまま手取りになる
- 申請は会社経由で健保組合・協会けんぽへ。産休前に会社に依頼しておく
- 申請期限は産休終了翌日から2年以内
- 退職後も1年以上の被保険者期間があれば継続受給できる条件がある
- 出産育児一時金(50万円)とは別制度で両方受け取れる
📌 あわせて読みたい
※本ページの情報は2026年5月時点のものです。制度の内容・支給条件・申請期限は、加入している健康保険・勤務先・法改正によって変わる場合があります。実際に申請する際は、勤務先・健康保険組合の最新情報も確認してください。
