育児休業等取得者申出書について調べている方の多くは、次のどちらかではないでしょうか。「これから育休の手続きをするので、いつまでに出せばいいか知りたい」、あるいは「提出を忘れていた・期限を過ぎてしまった。今からどうすればいいの?」というケースです。
結論から言うと、提出期限は「育児休業期間中、または育休終了日から起算して1ヵ月以内」。そして、もし出し忘れて期限を過ぎても、あとから提出すれば社会保険料の免除はさかのぼって適用されます。慌てなくて大丈夫です。
この記事では、提出期限の考え方から、出し忘れ・遅延時の具体的な対処法(遅延理由書の文例つき)、提出先、書き方、社会保険料免除の仕組みまで、実務で必要な情報を2026年時点の最新ルールにあわせて解説します。人事・総務担当者はもちろん、「自分の会社はちゃんと手続きしてくれているかな?」と気になっている育休取得者の方にも役立つ内容です。
この記事でわかること
- 提出期限は「いつまで」なのか(原則ルールと実務のおすすめタイミング)
- 出し忘れ・提出が遅れたときの対処法と、遅延理由書の書き方・文例
- 提出先(協会けんぽ/組合健保)と提出方法の選び方
- 申出書の書き方・記入例(押印まわりの最新ルールも)
- 社会保険料が免除される仕組みと、免除される・されないケース
1. 育児休業等取得者申出書とは?基本を理解しよう
まずは、育児休業等取得者申出書がどのような書類なのか、基本から押さえていきましょう。
1-1. 育児休業等取得者申出書の定義と目的
育児休業等取得者申出書とは、正式名称を「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」といい、従業員が育児休業を取得する際に必要となる公的書類です。
この書類は日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)に提出するもので、主な目的は以下の2つです。
- 育児休業中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除を受けるため
- 育休期間中も被保険者資格を継続させるため
育児休業は、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に基づいた制度です。この法律に基づく育休期間について、申出書を提出することで社会保険料が免除される仕組みになっています。
ポイントは、自動的に免除されるわけではないということ。この申出書を提出して初めて、免除が適用されます。
1-2. 誰が提出する書類なのか
ここはとても重要なポイントです。
育児休業等取得者申出書を提出するのは「事業主(会社の人事・総務担当者)」です。従業員本人が年金事務所に直接提出するものではありません。
従業員から育休取得の申し出を受けた後、会社の担当者が書類を作成し、日本年金機構に提出する流れになります。名前がよく似た「育児休業申出書」(従業員が会社に出す書類)とは別物なので、混同しないよう注意しましょう(詳しくは第8章で解説します)。
1-3. 提出することで得られるメリット(社会保険料免除)
この書類を提出する最大のメリットは、育児休業期間中の社会保険料が免除されることです。免除されるのは以下の2つ。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
しかも、従業員負担分だけでなく、事業主負担分も免除されます。つまり会社にとっても経済的メリットがあります。
さらに重要なのは、保険料が免除されている期間中も被保険者資格は継続したままで、将来受け取る年金額にも影響しないということ。免除期間は、休業前の標準報酬月額に応じた保険料を納めたものとして扱われます。
金額の目安として、標準報酬月額30万円の従業員が1年間育休を取得した場合、従業員と会社を合わせて年間おおむね100万円前後の保険料が免除される計算になります。ただし健康保険料率・厚生年金保険料率や介護保険第2号被保険者かどうかで変動するため、正確な金額は自社の保険料率で確認してください(要確認)。
2. 【重要】育児休業等取得者申出書の提出期限はいつまで?
多くの方が気になっている「提出期限」について、詳しく見ていきましょう。
2-1. 原則的な提出期限:育休期間中または終了日から1ヵ月以内
育児休業等取得者申出書の提出期限は、「育児休業等の期間中、または育児休業等終了日から起算して1ヵ月以内」です。これは日本年金機構が定めている公式なルールで、2026年時点でも変わっていません。
つまり、提出できるのは次の期間です。
- 育休開始日から育休終了日まで(育休期間中)
- 育休終了日の翌日から1ヵ月間
たとえば、従業員が2026年4月1日から2027年3月31日まで育休を取得するとします。この場合、提出できる期間は次のとおりです。
- 育休期間中:2026年4月1日~2027年3月31日のいずれかの日
- 育休終了後:2027年4月1日~2027年4月30日まで
したがって、最終的な提出期限は2027年4月30日ということになります。
実務上のおすすめ提出タイミング
法律上は育休期間中または終了後1ヵ月以内でOKですが、実務的には育休開始後、できるだけ早めに提出するのがベストです。理由は次のとおりです。
- 保険料免除の恩恵を早く受けられる
- 提出忘れのリスクを減らせる
- 育休終了時期が変更になっても対応しやすい
- 年金事務所での処理に時間がかかるため、早めのほうが安心
育休開始から1~2週間以内を目安に提出できると、とてもスムーズです。
2-2. 提出期限を過ぎてしまった場合はどうなる?
「気づいたら期限を過ぎていた」という状況は、実はよく起こります。特に、育休終了後1ヵ月の期限は見落としやすいものです。
でも、安心してください。期限を過ぎても提出自体は可能で、保険料免除もさかのぼって適用されます。
ただし、期限内提出と違って、いくつか注意点があります。
- 追加の添付書類が必要になる
期限内なら添付書類は不要ですが、期限を過ぎると遅延理由書と、休業していた事実を証明する書類の提出を求められます(次の2-3で詳しく解説します)。 - 手続き・審査に時間がかかる
通常より確認に時間がかかり、免除の反映が遅れる可能性があります。
期限を過ぎたからといって免除が受けられなくなるわけではありませんが、余計な手間を避けるためにも期限内提出が一番です。「出し忘れた」「もう間に合わない」という方は、次の章を先に読んでください。
3. 【出し忘れ・提出が遅れた場合】対処法と遅延理由書の書き方・文例
ここは、この記事にたどり着いた方の多くが一番知りたいところだと思います。「育児休業等取得者申出書を出し忘れた」「気づいたら提出期限を過ぎていた」というとき、どう動けばいいのかを具体的にまとめます。
3-1. まず結論:遅れても提出できる。免除もさかのぼって適用される
くり返しになりますが、期限を過ぎても申出書は提出できます。そして提出が受理されれば、育休開始月にさかのぼって社会保険料が免除されます。すでに納付してしまった保険料も、免除が確定すれば還付(返金)されます。
「もう手遅れかも」と放置してしまうと、そのあいだ従業員・会社ともに本来払わなくてよい保険料を負担し続けることになります。気づいた時点で、できるだけ早く動くことが何より大切です。
3-2. 出し忘れに気づいたときの手順
期限を過ぎてしまった場合の進め方は以下のとおりです。
- 育児休業等取得者申出書を通常どおり記入する
- 遅延理由書(申立書)を作成する(書き方は3-3で解説)
- 育休を取得していた事実を証明できる書類を準備する(出勤簿・賃金台帳のコピーなど)
- すべての書類をまとめて、事務センターまたは管轄の年金事務所に提出する
- 提出が遅れたことを窓口で説明する(郵送の場合は送付状に一言記載)
提出方法は電子申請・郵送・窓口持参のいずれでもかまいません(各方法の特徴は第4章)。不安があれば、初回は窓口持参にして、その場で書類を確認してもらうと安心です。
3-3. 遅延理由書の書き方と文例
遅延理由書は、決まった様式があるわけではありません。なぜ期限内に提出できなかったのかを、正直かつ簡潔に書けば大丈夫です。凝った文章は不要で、事実をそのまま記載します。以下は自由形式で作成する場合の文例です。
令和●年●月●日
●●年金事務所 御中
事業所整理記号:●●-●●●●
事業所所在地:●●県●●市●●1-1-1
事業所名称:株式会社●●
事業主氏名:●● ●●
電話番号:●●-●●●●-●●●●
遅延理由書(育児休業等取得者申出書)
このたび、下記被保険者に係る「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」の提出が期限を過ぎましたので、その理由を申し添えます。
被保険者氏名:●● ●●
被保険者整理番号:●●●●
育児休業等期間:令和●年●月●日 ~ 令和●年●月●日
【遅延理由】
育児休業取得者の職場復帰後、社内の担当者変更が重なり、育児休業等取得者申出書の提出手続きを失念しておりました。今後は再発防止のため、育児休業取得時のチェックリストを整備し、期限内提出を徹底いたします。
遅延理由の書き方バリエーション(【遅延理由】欄の例)
- 担当者が異動・退職し、引き継ぎが不十分だったため手続きを失念していた
- 育休終了後1ヵ月以内という提出期限を認識しておらず、提出が遅れた
- 育児休業の期間(終了日)が確定するのに時間を要し、提出が遅れた
- 従業員からの育休取得の申し出から手続きまでに社内確認が長引いたため
いずれの場合も、事実に沿って書けば問題ありません。「うまく言い訳しよう」とする必要はなく、実際に起きたことを簡潔に説明するのがコツです。
3-4. 遅延時に必要な添付書類
期限を過ぎて提出する場合、遅延理由書に加えて育児休業を取得していたことを証明する書類を添付します。以下のいずれかを用意します。
- 出勤簿のコピー
- 賃金台帳のコピー
- 勤怠管理システムの記録
- タイムカードのコピー
これらの書類で、該当期間に実際に育休を取得していた(出勤していない)ことを証明します。求められる書類は状況により異なる場合があるため、迷ったら提出先の年金事務所に事前確認しておくと確実です(要確認)。
なお、同じミスを繰り返さないよう、育休取得者が出た際の社内チェックリストを整備しておくことをおすすめします(第9章にサンプルを用意しています)。
4. 提出先と提出方法を詳しく解説
育児休業等取得者申出書を「どこに」「どうやって」提出するのか、詳しく見ていきましょう。加入している健康保険の種類によって提出先が変わるので注意が必要です。
4-1. 協会けんぽ加入者の提出先
従業員が協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入している場合、提出先は日本年金機構です。具体的には、管轄の年金事務所または事務センターのいずれかに提出します。
重要なのは、日本年金機構に提出すれば、協会けんぽへの別途届出は不要ということ。一か所に提出するだけで、健康保険と厚生年金保険の両方の手続きが完了します。
管轄の年金事務所の調べ方
自社の事業所を管轄する年金事務所は、日本年金機構のウェブサイトで検索できます。会社の所在地を入力すればすぐに分かります。
4-2. 組合健保加入者の提出先
従業員が組合健保(健康保険組合)に加入している場合は、少し注意が必要です。提出先が2か所になる可能性があります。
- 日本年金機構(年金事務所または事務センター)
厚生年金保険の手続きのため - 加入している健康保険組合
健康保険の手続きのため
健康保険組合によっては独自の様式を用意している場合や、提出先の扱いが異なる場合があります。必ず加入している健康保険組合に確認してください。提出先を間違えると手続きが完了せず、保険料免除が受けられないリスクがあります。
健康保険組合の確認方法
- 従業員の健康保険証(または資格確認書等)に記載されている
- 健康保険組合のウェブサイトで確認できる
- 直接、健康保険組合に電話で問い合わせる
4-3. 提出方法(電子申請・郵送・窓口)の選び方
提出方法は3つあります。それぞれの特徴を理解して、自社に合った方法を選びましょう。
(1)電子申請(e-Gov / GビズID)
メリット:24時間いつでも提出可能/郵送費がかからない/書類の紛失リスクがない/処理がスピーディ/申請履歴が確認できる
デメリット:初回の設定に手間がかかる/GビズIDや電子証明書などの準備が必要/慣れるまで操作が難しい
おすすめな人:定期的に社会保険手続きをする企業、従業員数が多い企業
(2)郵送
メリット:操作が不要で簡単/特別なシステムが不要/複数の書類をまとめて送れる
デメリット:郵送費がかかる/到着まで数日かかる/配達状況が確認しにくい(簡易書留推奨)/不備があると再送の手間がかかる
おすすめな人:電子申請の環境が整っていない小規模企業、年に数回しか申請しない企業
(3)窓口持参
メリット:その場で書類を確認してもらえる/不備があればすぐ修正できる/疑問点をその場で質問できる/受付印をもらえて安心
デメリット:年金事務所の営業時間内(平日)に行く必要がある/混雑時は待ち時間が長い/交通費・移動時間がかかる
おすすめな人:初めて申請する人、書類に不安がある人、年金事務所が近い企業
実務担当者へのアドバイス
初めて手続きをする場合や、出し忘れで遅延書類がある場合は、窓口持参してその場で確認してもらうと後々のトラブルを防げます。慣れている方は郵送、社会保険手続きを日常的に行う会社は電子申請が効率的です。郵送する場合は、到着確認ができる簡易書留で送ることをおすすめします。
5. 育児休業等取得者申出書の書き方・記入例
ここからは実践編です。申出書の具体的な書き方を項目ごとに解説していきます。様式は日本年金機構の公式サイトから無料でダウンロードでき、新規・延長・終了届が1つのPDF(またはエクセル)にまとまっています。今回は「新規」の場合を中心に解説します。
5-1. 記入前に押さえておきたい最新ポイント(押印について)
ポイント:事業主の押印は原則不要になっています。日本年金機構への各種届出は行政手続きの押印見直しにより、事業主印の押印は原則廃止されています。記入内容を訂正する場合も、二重線で抹消のうえ署名(サイン)で対応でき、押印は任意です。古いマニュアルや記入例には押印欄の記載が残っていることがありますが、現在の様式にあわせて対応してください(様式の版によって異なる場合があるため、手元の用紙で要確認)。
5-2. 各項目の書き方(記入例つき)
申出書の主な記入項目を、上から順に見ていきましょう。
提出日
年金事務所に実際に提出する日付を記入します。郵送なら投函日、電子申請なら送信日が目安です。
記入例:令和8年4月15日
事業所整理記号
年金事務所から付与されている事業所整理記号を記入します。
記入例:ア12-3456
確認方法:納入告知書、または健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬月額決定通知書などに記載。不明なときは年金事務所に問い合わせれば教えてもらえます。正確に記入しないと受理されない場合があるので注意しましょう。
事業所所在地・名称
会社の正式な住所と名称を記入します。略称ではなく「株式会社」「有限会社」なども正確に。
記入例:東京都千代田区丸の内1-1-1 / 株式会社○○商事
事業主氏名・電話番号
事業主(代表者)の氏名と、確実に連絡が取れる電話番号を記入します。人事部長などに権限委譲している場合はその旨を明記します。前述のとおり押印は原則不要です。
記入例:山田 太郎 / 03-1234-5678
被保険者整理番号
従業員の被保険者整理番号を記入します。健康保険証、厚生年金資格取得届の控え、社内の人事システムなどで確認できます。
記入例:123456
個人番号(マイナンバー)
従業員のマイナンバー(12桁)を記入します。取り扱いには十分注意し、書類の管理・郵送時も厳重に扱ってください。
記入例:123456789012
被保険者氏名・生年月日
育休を取得する従業員の氏名(戸籍上の氏名)と生年月日を記入します。旧姓使用の場合でも戸籍名で記入します。
記入例:佐藤 花子 / 平成5年3月15日
育児休業開始年月日
育休を開始する日を記入します。産後休業から引き続き育休を取得する場合、産後休業終了の翌日が育休開始日です。
記入例:令和8年4月1日
育児休業終了予定年月日
育休を終了する予定の日を記入します。子どもが1歳になる前日が一般的です(誕生日が4月1日なら終了予定日は3月31日)。
記入例:令和9年3月31日
子の氏名・生年月日・続柄
養育する子どもの氏名、生年月日、続柄(子、養子など)を記入します。出生前に準備する場合は、出産後に記入して提出します。
記入例:佐藤 太郎 / 令和8年4月1日 / 子
備考欄
該当する場合のみ記入します。主なケースは次のとおりです。
- パパ・ママ育休プラスを利用する場合:その旨と配偶者の育休期間などを記載
- 保育所に入所できず1歳6か月(または2歳)まで延長する場合:「保育所等入所保留のため延長」などと記入
- 産後パパ育休(出生時育児休業)を取得する場合:その旨を記入
※電子申請では備考欄の文字数に制限がある場合があります。
5-3. 複数回(分割)育休取得時の記入方法
2022年10月から、育児休業を分割して取得できるようになりました。男性の育休取得を後押しする「産後パパ育休(出生時育児休業)」も定着しています。同月内に複数回の育休を取得する場合は、記入に注意が必要です。
記入のポイント
- 育児休業開始年月日欄:最初の育休開始日を記入
- 育児休業終了予定年月日欄:最後の育休終了予定日を記入
- 育児休業等取得日数欄:実際に育休を取得する日数を記入
- 就業予定日数欄:育休期間中に就業する予定の日数を記入
- 育休等取得内訳欄:いつからいつまで育休・就業するのかを詳細に記入
記入例
例:4月1日~4月14日と4月21日~4月30日の2回に分けて育休を取得し、4月15日~4月20日は就業する場合
- 育児休業開始年月日:令和8年4月1日
- 育児休業終了予定年月日:令和8年4月30日
- 育児休業等取得日数:24日
- 就業予定日数:6日
- 育休等取得内訳:4/1~4/14(育休14日)、4/15~4/20(就業6日)、4/21~4/30(育休10日)
5-4. パパママ育休プラス・産後パパ育休の記載方法
パパ・ママ育休プラスの場合
父母がともに育休を取得する場合、子が1歳2か月になる日の前日まで育休を延長できる制度です。
主な適用条件:
- 子が1歳に到達するまでに配偶者が育休を取得している
- 本人の育休開始予定日が、子の1歳の誕生日より前である
- 本人の育休開始予定日が、配偶者の育休の初日以降である
記入方法:備考欄に適用を受ける旨を記入し、配偶者の育休期間を記載します。育休終了予定年月日は子が1歳2か月になる日の前日まで記入できます。
産後パパ育休(出生時育児休業)の場合
子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日間)取得できる制度です。通常の育休とは別に取得でき、2回に分割することも可能です。備考欄にその旨を記入し、開始・終了予定年月日を正確に記入します。分割取得する場合は複数回育休の記入方法に従います。
これらの特例制度は、備考欄への記入漏れがあると適用されないことがあります。忘れずに記入しましょう。
6. 添付書類は必要?不要?ケース別に解説
「他に書類を付けないといけないのかな?」と不安になる方も多いので、添付書類の要・不要をケース別に整理します。
6-1. 通常は添付書類不要
まず安心してください。期限内に適切に提出する限り、基本的に添付書類は不要です。申出書1枚で手続きは完了します。マイナンバーの活用により、以前より手続きが簡素化されています。
6-2. 期限を過ぎた場合に必要な書類
前章のとおり、提出期限を過ぎた場合は添付書類が必要になります。
- 遅延理由書(申立書):提出が遅れた理由を説明する書類(書き方・文例は第3章を参照)
- 育休を取得していたことを証明する書類:出勤簿・賃金台帳・勤怠記録・タイムカードのコピーなど
これは不正な申請を防ぐための措置です。遅延理由書は正直に書けば問題ありません。
6-3. 証明書類が求められるケース
通常は不要でも、以下のような場合には証明書類の提出を求められることがあります。
- 養子縁組の場合:養子縁組を証明する書類(戸籍謄本など)
- 育休期間が特に長い場合:2歳までの延長など。保育所の入所保留通知書などが必要になることがある
- 年金事務所から個別に要請があった場合:内容に確認が必要なとき
追加書類を求められたら速やかに対応しましょう。提出しないと手続きが完了せず、保険料免除が受けられない可能性があります。ただし、こうしたケースはまれで、ほとんどは申出書1枚で完了します。
7. 延長・終了時の手続きも忘れずに
育休は当初の予定どおり終了するとは限りません。延長したり、逆に予定より早く復帰したりする場合の手続きを見ていきましょう。
7-1. 育休を延長する場合の再提出
延長が可能なケース
- 子が1歳になった時点で保育所等に入所できない場合 → 1歳6か月まで延長可能
- 子が1歳6か月になった時点で保育所等に入所できない場合 → 2歳まで延長可能
- 配偶者の死亡・病気・離婚などの特別な事情がある場合
延長時の手続き
育休を延長する場合、育児休業等取得者申出書(延長)を提出します。共通記載欄を記入したうえで、延長後の育児休業等終了(予定)年月日などを記入します(様式の「A.延長」欄)。開始年月日と終了予定年月日が同月内の場合は、変更後の取得日数も記入します。
提出期限:延長が決まったら速やかに提出してください。
添付書類:保育所の入所保留(不承諾)通知書などが必要になる場合があります。自治体・年金事務所により扱いが異なるため確認しましょう(要確認)。
実務上の注意点
延長の手続きは、育児休業給付金の延長申請とは別です。両方の手続きが必要なので忘れないようにしてください。
- 年金事務所へ:育児休業等取得者申出書(延長)を提出
- ハローワークへ:育児休業給付金の延長申請を提出
7-2. 予定より早く復帰する場合の終了届
育児休業等取得者終了届の提出が必要なのは、申出書に記載した終了予定日よりも早く育休を終了する場合です。予定どおりに終了する場合や、終了予定日と実際の終了日が同じ場合は、終了届の提出は不要です(産前産後休業取得申出書に引き続く場合も不要)。
終了届では、共通記載欄を記入したうえで、実際に育休を終了した日(様式の「B.終了」欄)を記入します。育休終了後、速やかに提出してください。
早期復帰時の注意事項
- 保険料免除の終了時期:免除は「育休開始日の属する月」から「育休終了日の翌日が属する月の前月」まで。ただし育休終了日が月末の場合は、その月まで免除されます(計算方法は第8章で詳述)。
- 育児休業給付金の支給停止:育休を終了すると給付金の支給も停止されます。ハローワークへの連絡も必要です。
- 従業員への説明:早期復帰により想定していた給付金が受け取れなくなる可能性があるため、事前に説明しましょう。
7-3. 延長・終了時の提出期限
延長時・終了時ともに「○日以内」という明確な期限は定められていませんが、変更が分かり次第すみやかに提出するのが原則です。目安は延長時・終了時ともに、事由が確定してから1~2週間以内。遅れると保険料の徴収・免除の切り替えが適切に行われず、後々の修正が煩雑になります。
8. 保険料免除の仕組みを理解しよう
申出書を提出する最大の目的である、社会保険料免除の仕組みを詳しく見ていきましょう。
8-1. 免除される保険料の種類
育休期間中に免除されるのは健康保険料と厚生年金保険料の2つです。
- 従業員負担分と事業主負担分の両方が免除される
- 免除期間中も被保険者資格は継続する
- 将来の年金額には影響しない(免除前の標準報酬月額で納付したものとして扱われる)
なお、雇用保険料・労災保険料は免除の対象ではありません(雇用保険料は、育休中に給与が支払われなければ実質的に発生しません。労災保険料は全額事業主負担です)。
8-2. 免除期間の計算方法
保険料免除期間は、原則として「育児休業等の開始日が属する月から、育児休業等の終了日の翌日が属する月の前月まで」です。具体例で見てみましょう。
【例1】月末まで育休を取得した場合
- 育休開始日:2026年4月1日 / 育休終了日:2027年3月31日(月末)
- 免除期間:2026年4月分~2027年3月分(12か月分)
育休終了日が月末の場合、その月の保険料も免除されます。
【例2】月の途中で育休を終了した場合
- 育休開始日:2026年4月1日 / 育休終了日:2027年3月15日(月の途中)
- 免除期間:2026年4月分~2027年2月分(11か月分)
終了日の翌日(3月16日)が属する月(3月)の前月(2月)までが免除。3月分は免除されません(ただし後述の14日ルールに該当する場合を除く)。
【例3】月の途中で育休を開始した場合
- 育休開始日:2026年4月15日 / 育休終了日:2027年3月31日
- 免除期間:2026年4月分~2027年3月分(12か月分)
開始日が月の途中でも、その月の保険料は免除されます。
ポイントは、「開始月は免除される」「終了月は、月末まで育休なら免除、途中終了なら原則免除されない(14日以上取得の特例を除く)」の2点です。
8-3. 14日以上取得時の特例
2022年(令和4年)10月1日以降に開始した育休には、「同一月内に14日以上育休を取得した場合、その月の保険料が免除される」というルールが適用されます。これにより、月末には復帰していても、その月に14日以上育休を取得していれば免除を受けられます。
具体例
2026年4月5日~4月25日まで育休を取得した場合(21日間)。4月末には復帰していますが、4月中に14日以上取得しているため、4月分の保険料は免除されます。
注意点
- 14日には土日祝日も含む(暦日で計算)
- 1か月に満たない育休でも、14日以上ならOK
- 複数回に分けて取得する場合、同月内の合計で14日以上あれば適用
8-4. 賞与の保険料免除条件
賞与(ボーナス)にかかる社会保険料の免除は、月々の給与とは条件が異なります。2022年(令和4年)10月1日以降に開始した育休については、「賞与支給月の末日を含む、連続した1か月を超える育休を取得している場合」に限り、その賞与にかかる保険料が免除されます。
【例1】免除される場合
育休期間:6月1日~7月31日(2か月間)、賞与支給日:6月30日 → 免除される(6月末を含み、1か月を超える育休のため)
【例2】免除されない場合
育休期間:6月1日~6月30日(1か月ちょうど)、賞与支給日:6月30日 → 免除されない(月末は含むが、1か月を「超えて」いないため)
【例3】免除される場合
育休期間:6月1日~7月15日、賞与支給日:6月30日 → 免除される(6月末を含み、1か月を超えるため)
ポイントは「1か月を超える」かどうかです。産後パパ育休や分割取得など、短期間の育休では賞与の保険料が免除されないケースがある点に注意しましょう。
8-5. 【比較表】免除される・されないケース一覧
| ケース | 育休期間 | 保険料免除の可否 |
|---|---|---|
| 月末まで育休 | 4月1日~4月30日 | 可 4月分免除 |
| 月の途中で終了(14日以上) | 4月1日~4月20日 | 可 14日以上のため4月分免除 |
| 14日未満で終了 | 4月1日~4月10日 | 不可 4月分は免除されない |
| 月をまたぐ育休 | 4月15日~5月31日 | 可 4月分・5月分免除 |
| 複数回取得(同月内合計14日以上) | 4月5日~4月10日、4月20日~4月28日 | 可 合計14日以上のため4月分免除 |
| 賞与月に1か月超の育休 | 6月1日~7月15日(賞与6月30日) | 可 賞与の保険料も免除 |
| 賞与月にちょうど1か月の育休 | 6月1日~6月30日(賞与6月30日) | 不可 1か月を超えないため賞与は免除されない |
9. 混同しやすい!類似書類・関連手続きとの違い
育休関連の書類は名前が似ていて混同しやすいです。よく間違えられる書類との違いを整理しましょう。
9-1. 育児休業申出書(社内用)との違い
最も混同されやすいのが「育児休業申出書」と「育児休業等取得者申出書」です。まったく別の書類です。
育児休業申出書(社内用)
- 提出する人:従業員本人
- 提出先:勤務先の会社(人事部門など)
- 目的:会社に対して育休取得を申し出るため
- 様式:会社が独自に定める(法定様式はない。厚生労働省の様式例を参考にできる)
- 提出時期:原則、育休開始予定日の1か月前まで(産後パパ育休は2週間前まで)
育児休業等取得者申出書
- 提出する人:会社の担当者(事業主)
- 提出先:日本年金機構(年金事務所・事務センター)
- 目的:社会保険料免除を受けるため
- 様式:日本年金機構が定める統一様式
- 提出時期:育休期間中または終了後1か月以内
手続きの流れ
- 従業員が「育児休業申出書」を会社に提出
- 会社が申出を受理
- 会社が「育児休業取扱通知書」を従業員に交付
- 会社が「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出 ← 本記事のテーマ
9-2. 育児休業給付金支給申請書との関係
もう一つ混同されやすいのが「育児休業給付金支給申請書」です。こちらはハローワークに提出し、給付金を受け取るための手続きです。
| 比較項目 | 育児休業等取得者申出書 | 育児休業給付金支給申請書 |
|---|---|---|
| 提出先 | 年金事務所(日本年金機構) | ハローワーク |
| 目的 | 社会保険料の免除 | 給付金の受給 |
| 提出回数 | 原則1回(延長時は追加) | 原則2か月ごとに定期的 |
| 対象者 | 健康保険・厚生年金の被保険者 | 雇用保険の被保険者 |
| 効果 | 保険料が免除される(お金は受け取らない) | 給付金が支給される(お金を受け取る) |
重要:どちらか一方ではなく、両方の手続きが必要です。片方だけ手続きして、もう片方を忘れるケースが意外と多いので、チェックリストで両方確実に進めましょう。
9-3. 【2025年から】出生後休業支援給付金にも注目
2025年(令和7年)4月から、雇用保険の給付として出生後休業支援給付金が新設されました。これは、子の出生後一定期間内に、両親がそろって一定期間の育児休業を取得するなどの要件を満たした場合に、最大28日分支給されるものです。既存の育児休業給付と合わせることで、休業前賃金の手取り相当が実質10割程度になるよう設計されています。
この給付はハローワークへの申請で、育児休業等取得者申出書(年金事務所)とは別の手続きです。短期間の育休を取得する男性が増えるなかで問い合わせが増えているため、担当者は「保険料免除(年金事務所)」「育児休業給付(ハローワーク)」「出生後休業支援給付(ハローワーク)」の3つを分けて把握しておくと安心です。要件の詳細は制度改正で変わることがあるため、最新情報はハローワーク・厚生労働省で確認してください(要確認)。
9-4. 【比較表】育休関連書類の提出先・期限一覧
| 書類名 | 提出者 | 提出先 | 提出時期・期限 |
|---|---|---|---|
| 育児休業申出書 | 従業員本人 | 勤務先(会社) | 原則、育休開始予定日の1か月前まで(産後パパ育休は2週間前まで) |
| 育児休業等取得者申出書 | 会社(事業主) | 年金事務所 | 育休期間中または終了後1か月以内 |
| 育児休業給付金支給申請書 | 会社(事業主)または本人 | ハローワーク | 初回は育休開始から一定期間内、以降は原則2か月ごと |
| 育児休業等取得者終了届 | 会社(事業主) | 年金事務所 | 予定より早く復帰した場合、速やかに |
| 育児休業等終了時報酬月額変更届 | 会社(事業主) | 年金事務所 | 育休終了後、給与変更があった場合 |
10. 提出忘れを防ぐ!人事担当者向けチェックリスト
知識があっても、実務では「うっかり忘れ」が起こりがちです。提出忘れを防ぐための実践的なチェックリストを用意しました。
10-1. 育休取得前に確認すべきこと
従業員情報:被保険者整理番号/マイナンバー/正式な氏名(戸籍名)/生年月日
育休期間:育休開始予定日/終了予定日/子の出産予定日または出生日/子の氏名
特例制度:パパ・ママ育休プラスの利用有無/産後パパ育休の取得有無/分割取得の有無
加入保険:協会けんぽか組合健保か/提出先の確認(組合健保は特に注意)
社内手続き:育児休業申出書(社内用)の受理/育児休業取扱通知書の交付
10-2. 提出時の確認ポイント
記入内容:必須項目の記入漏れがないか/事業所整理記号・被保険者整理番号は正確か/日付は正しいか
提出方法:提出先は合っているか(協会けんぽ/組合健保)/提出方法(電子/郵送/窓口)は決めたか/郵送は簡易書留か
添付書類:期限内なら不要/期限超過なら遅延理由書と証明書類を添付
控えの保管:提出書類のコピーを取ったか/提出日・提出方法を記録したか
10-3. よくあるミスと防止策
ミス1:提出期限を過ぎてしまう(=出し忘れ)
防止策:育休開始日の1~2週間後をリマインダーに設定/月次の社会保険手続きチェックリストに組み込む/育休取得者一覧表で提出状況を管理
ミス2:提出先を間違える
防止策:従業員の健康保険証で加入先を確認/組合健保は健保組合に提出先を確認/書類ごとに提出先を明記したチェックリストを作成
ミス3:記入漏れ・記入ミス
防止策:記入前に必要書類を揃える/2人でダブルチェックする/初回は窓口持参で確認してもらう
ミス4:延長・終了時の手続き忘れ
防止策:育休取得者と定期的にコミュニケーションを取る/終了予定日の1か月前に従業員に確認する/保育所の入所可否が判明する時期を把握しておく
ミス5:育児休業給付金の手続きとの混同
防止策:「育休時の手続き一覧表」を作成し、年金事務所とハローワークの両方をセットで管理する
これらのミスを防ぐには、「育休手続きマニュアル」を社内で作成するのが効果的です。手続きの全体フロー、提出先・期限一覧、記入例、チェックリスト、社内問い合わせ先などを盛り込んでおけば、担当者が変わっても手続きの質が安定します。
11. よくある質問(FAQ)
11-1. 出し忘れた・提出期限を過ぎた場合、保険料はどうなる?
A. あとから提出すれば、育休開始月にさかのぼって免除されます。提出しないあいだは通常どおり保険料が請求されますが、遅れて提出しても遅延理由書と証明書類を添えれば免除が適用され、すでに納付した分は還付されます。ただし還付手続きには時間がかかるため、気づいた時点ですぐに提出しましょう(手続きの詳細と遅延理由書の文例は第3章を参照)。
11-2. 男性の育休でも提出は必要?
A. はい、必要です。性別に関係なく提出が必要です。産後パパ育休(出生時育児休業)のように短期間の取得でも、同一月内に14日以上取得すればその月の保険料は免除されます。男性の育休取得率は上昇傾向にあり、短期間でも取得する人が増えているため、担当者はしっかり対応しましょう。
11-3. 派遣社員やパートでも対象になる?
A. 健康保険・厚生年金保険の被保険者であれば対象です。雇用形態(正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイト)に関係なく、社会保険の被保険者で、育児・介護休業法に基づく育児休業を取得していれば対象になります。社会保険に加入していない短時間のパート・アルバイトは対象外です(そもそも保険料がかかっていないため)。派遣社員の場合は、派遣元企業(派遣会社)が手続きを行います。
11-4. 育休中に会社を退職した場合は?
A. 退職日までの期間について申出書を提出します。育休中に退職する場合でも、退職日までの育休期間について保険料免除を受けられます。申出書(未提出なら提出)、終了届(退職日を終了日として記入)、資格喪失届などの手続きが必要です。退職後は被保険者資格を失うため、それ以降の保険料はかかりません。給付金についても退職で支給が停止されるため、ハローワークへの手続きも忘れずに行いましょう。
11-5. 第二子の育休でも再度提出が必要?
A. はい、必要です。第一子で提出済みでも、第二子の育休では改めて新規の申出書を提出します。子どもが違えば別の申請になります。第一子の育休終了後すぐ第二子の育休に入る場合でも、それぞれ別々に提出してください。「前回出したから不要」と勘違いして出し忘れるケースがあるので注意しましょう。
12. まとめ:育児休業等取得者申出書は「期限内提出」と「出し忘れ時の早期対応」がカギ
ここまで、育児休業等取得者申出書の提出期限から出し忘れ時の対処法、書き方、保険料免除の仕組みまで解説してきました。最後に重要なポイントをおさらいします。
- 提出期限は「育休期間中または終了日から1か月以内」。できるだけ育休開始後すぐに提出を。
- 出し忘れ・遅延でも提出は可能。遅延理由書と証明書類を添えれば、免除はさかのぼって適用され、納付済みの保険料も還付される。気づいたらすぐ動くこと。
- 提出先は加入保険で異なる。協会けんぽなら年金事務所のみ、組合健保なら年金事務所+健保組合の場合もある。
- 提出すると社会保険料が免除される。従業員・会社の両方にメリットがあり、将来の年金額にも影響しない。
- 延長・終了時、そして他の育休関連書類も忘れずに。育児休業給付金(ハローワーク)や、2025年に始まった出生後休業支援給付金も別手続きとして把握しておく。
提出期限を守り、正確に記入し、適切に提出することで、従業員は安心して育児に専念できます。万が一出し忘れても、落ち着いて第3章の手順どおりに対応すれば大丈夫です。分からないことがあれば、年金事務所に問い合わせれば丁寧に教えてもらえますし、窓口持参ならその場で確認もしてもらえます。
※本記事は2026年時点の情報をもとに作成しています。制度・様式・金額は法改正等で変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、日本年金機構・厚生労働省・管轄の年金事務所・加入している健康保険組合の最新情報を必ずご確認ください。



コメント